登場人物のご紹介
「ハイツ一期一会」の住人
■一桑真人
大学合格を目指す浪人生で、ごく一般的な容姿をしたアパートの管理人。年齢は二十歳。
筋金入りのお人よしで心優しい性格だが、いざという時に見せる度胸を持ち合わせており、住人たちからの信頼も厚い。
管理人の仕事を長らく続けているせいか、掃除清掃はお手の物。しかし、庭先にある盆栽の手入れだけは、祖父である居太郎に禁止されている。
女性たちに囲まれた私生活にも関わらず、女性との付き合いは不器用で、色恋話にもとかく鈍感である。それでも、住人の麗那には憧れというより、ほのかな恋心を抱いている。
大学合格を目指す傍ら、料理や食事というジャンルに興味を示し、いつしか、食品衛生をターゲットにした将来に関心を持ち始める。
■二ヶ咲麗那
目を見張るような壮麗なる美女で、日本屈指の人気ファッションモデル。年齢は二十三歳。
物怖じしない積極的な面から、住人たちのリーダー的存在であり、心身ともに忍耐力もあるが、心の奥には女性らしい脆い面を持ち合わせている。
モデルという肩書きだけに、スタイルは抜群で衣装もおしゃれ、若い女性の支持層はもちろんだが、若い男性のファンも多い。
尊敬していた亡き先輩モデルとの約束を果たすため、日夜、輝くスターを目標に精進していく中、頼りにしている管理人の真人との交流を深めていく。
親友である紗依子の結婚を機に、女性としての幸せを少しずつ意識していくが、世界クラスで活躍するモデルへの道との岐路に立たされて迷走することになる。
■三樹田ジュリー
金髪にコバルトブルーの瞳を持つ、フリーター兼アマチュアバンドのボーカリスト。年齢は二十三歳。
細かいことをあまり気にしない、大雑把でおおらかな性格の持ち主。フランクなところから、誰とでもすぐに打ち解けることが得意。
お酒をこよなく嗜み、お休みの日ともなると、お昼でも缶チューハイを口にしている。ビール党の麗那との夜の晩酌はアパートの恒例行事だ。
居酒屋での飲み代を稼ごうと、幾多のアルバイトをこなしていたが、より実力を磨くために、次第にジャズバンドのボーカリストの仕事に専念していく。
プロのボーカリストという憧れが現実となるチャンスが舞い込むが、慣れ親しんだ、恩義のあるバンドからの離別に思い悩むことになる。
■四永潤
巻き髪パーマに小麦色の肌をしたギャルで、美容学校に通うキャバクラ嬢。年齢は二十一歳。
純粋なまでに飛びっきり明るくて、ちょっと気まぐれでわがまま。しかし友達思いで、人懐っこく優しい性格でもある。
ファッションモデルの麗那のことを崇拝しており、とにかく女を磨こうと、キャバクラ勤めや美容学校に通い、日夜、美の追求に余念がない。
二杯以上飲むと酔い潰れてしまうほどお酒に弱く、調子に乗って飲み過ぎてしまい、管理人の真人からおんぶしてもらう顛末は、今となってはお馴染みの光景だ。
美容学校で知り合ったカリスマ講師に諭されていくうちに、舞台に立つことではなく、モデルを美しく飾る裏方の素晴らしさに気付かされることになる。
■五浦あかり
長い黒髪に化粧っ気のない色白な顔をした、空手道場師範代の漫画家。年齢は二十五歳。
とにかく冷静沈着で大胆不敵。割と無口で無駄口を叩くことも少ないが、心の置けない相手には気兼ねなく接するタイプ。
華奢な体つきに見えるが、実家の空手道場の師範代ということもあり、精神も肉体も人一倍強靭である。その強さこそが、他の住人たちの暴走を抑制する役目を果たしている。
漫画家という立場柄、アニメや漫画のあらゆるジャンルに精通しており、周囲が引くぐらいのマニアックな一面も持っている。
連載二本を抱える絶頂期の中、実家の空手道場の宿命に身を投じることで、自分自身の運命やあるべき姿に戸惑いを覚えることになる。
■六平奈都美
さわやかな笑顔が似合う、シュートカットでボーイッシュなプロサッカー選手。年齢は二十歳。
元気だけが取り柄で、明朗闊達な上にすがすがしい性格だが、負けず嫌いなところもあり、少しばかり怒りっぽい一面もある。
お酒はからっきしダメで、一口でも飲もうものなら、あっという間に気分を害してしまう。その代わり、カレードーナツのようなスパイシーなものが好物。
プロのサッカー選手のため、どんなスポーツでもそつなくこなし、運動不足の真人に声を掛けては、過酷なトレーニングプログラムに付き合わせている。
ストライカーとしてレギュラー入りを目指すも、練習中のケガをきっかけに出会った少年を励ますことで、夢を追う人を手助けする喜びを知ることになる。
■七瀬川由依
ワンレングスの黒髪に幼さが残る顔立ちをした、演劇作家志望の女子高校生。年齢は十八歳。
性格はおとなしく慎ましやかで、その礼儀正しさはいかにもお嬢様といった感じ。相手を敬うような言葉づかいも丁寧だ。
まだ現役の高校生だが、受験勉強に集中するためアパートへ引っ越してきた。真人の祖父である居太郎とは、歳の離れたお友達同士だという。
アパートにいる時間も長く、かつ受験生仲間という関係から、何かと意気投合する真人に対し、知らず知らずのうちに心を寄せていくことになる。
演劇作家を志しており、大学の文学部へ進学して勉強に励もうとする中、複雑な家庭事情で虐げられた傷心を住人たちから癒されることで、満たされなかった心の温もりを感じていく。
■猫のニャンダフル
白黒の二色のぶち模様をした猫で、アパートのペット兼マスコット。性別はオスで年齢は不明。
リビングルームのソファの上が大のお気に入りで、一日の大半をそこで寝て過ごしている。散歩にふらふら出掛けることもあり、猫らしく、悠々自適で自由気ままに暮らしている。
アパートへ来る前は赤い首輪に鈴を付けていたが、親代わりの潤の希望により、鈴を外してピンク色の首輪を付けている。
住人たちみんなのアイドルだけに、無闇に抱きつかれたり、頬ずりされたり、悩みを打ち明けられたりして、ご機嫌取りに苦労の絶えない猫である。
「ハイツ一期一会」の住人たちの顔見知り
■八戸居太郎
アパートの元管理人であり、現在の管理人である真人の母方の祖父。御年七十二歳。
もう隠居の身ではあるものの、今でもアパートにやってきては、真人に何かに付けて諫言をこぼす日々を送っている。
盆栽いじりが趣味らしく、品評会で賞を取ったことがあるほどの腕前。他にも、手品にもそれなりに興味があるようだ。
年配者だけに小言や説教も多いが、住人たちのことを心から愛しており、人生とは何か?と諭したり、悩み相談に乗ったりする世話焼きでもある。
■九峰紗依子
アパートの住人たち御用達の居酒屋の店員で、自称看板娘。年齢は二十三歳。
住人たちとは年齢が近いということもあり、とても仲が良く、麗那とは同郷の親友同士でもある。
世界のあちこちにある珍品に関心があり、危険を顧みずに一人旅をすることもあるが、親愛なる彼氏と復縁してからは、心配掛けまいと極力自粛するようにしている。
麗那とは反対に、料理が得意で家庭的なところがあり、愛しいフィアンセの健康を考慮して、最近、料理レシピ本を買い漁っているようだ。
■榎竹幸市
アパートの住人たち御用達の居酒屋を切り盛りする店主。年齢は三十六歳。
甚平や鉢巻といった格好が似合ういなせな男性で、お客からはマスターという愛称で呼ばれている。
和食にかけては右に出る者がいなほど、料理の腕前はピカイチ。そのため、料理好きの真人に頼まれて、その華麗なテクニックを披露することもある。
愛想もきっぷも良くて、店員の紗依子や住人たちからの人望も厚い。ただし、真人と同様に人の良さがたまにキズだ。ちなみに既婚者で、自称愛妻家とのこと。
■沢美弥祐次
アパートの近くにある総合病院の小児科の医師で、紗依子の婚約者。年齢は三十一歳。
住人たちとのつながりは薄いものの、ある騒動をきっかけに知り合った真人とは、他愛もない世間話をする程度の仲。
夢見がちな紗依子に振り回される苦労人だが、幸せにすると誓い、見事にプロポーズを成功させる。自分の方が年上にも関わらず、すでに尻に敷かれているようだ。
■谷栄輔
ジュリーがボーカルを務めるジャズバンドのドラムス兼リーダー。年齢は五十八歳。
年相応に落ち着きがあり心も広く、バンドマンから尊敬の眼差しを向けられる人格者。お酒は飲まないが、喫煙者である。
ジャズの世界では有名な人物。それもそのはずで、かの昔、プロのジャズミュージシャンだった過去がある。しかし、ある事件を機にプロから一線を引いて、アマチュアのバンドを結成し現在に至る。
■大杉景衣子
麗那が所属するモデル事務所の、仕事一筋の専属マネージャー。年齢は二十三歳。
仕事のパートナーである麗那とは、友達同士のような付き合いをしている。もちろん、昔モデルであった紗依子とも顔見知りだ。
おとなしく控え目な性格で、麗那のちょっとしたわがままも素直に聞いてしまう。一流モデルの麗那のことを心から敬愛し、世界へ羽ばたくべく手助けをしたいと日頃から思っている。
■舞姫ひかる
あどけない笑顔を振りまくアイドルっぽいモデルで、麗那のライバル。年齢は十九歳。
麗那への対抗心により、一時期は敵意を剥き出しにしていたものの、現在はそれほど敵視したりはしていない。しかし、意地悪な性格だけは昔のままである。
アイドルフェイスと愛らしい振る舞いから、世の男性からの支持は高いが、女性層からの評判はよくなく、二番手のモデルという立場から抜け出せずに苦悩している。
■真倉夜未
あかりと生年月日がまったく同じ誕生日の、たった一人の姉妹。年齢は二十五歳。
空手の腕前は超一流だが、姉でもあり妹でもあるあかりに一度も勝利したことがないことに、道場の跡継ぎ候補として引け目を感じている。
父親の空手道場で鍛錬に精進していたところ、道場存続の危機に直面し、道場を救うために修羅の道へと突き進むことになる。