とある勇者の話っていうと、ファンタジー要素が出る気がする
前回のあらすじだよっ!
テディチヌ=茅渟テディが優紗と同じクラスに転校してきたよ。
エアリンが見せた昼ドラ、『愛と憎悪の転校生』がいいきっかけになったみたいw
っていうか、昼間に小学生が愛と憎悪に塗れる青春に見せかけたどろどろ恋愛劇、に見せかけたコメディーをしてるってことのほうが、エアリン的にはうっわ~だね。
テディ君は、クラスのボスに出会ったよ!!
なんとボスは、同じ部屋に住む幼馴染じゃないけど、それくらいのポジションにいる優紗だったよ。
前世の因縁が渦巻いている(笑)このクラスに、テディ君はどう立ち向かっていくのか……
ドラマだったら、ここでCMだね!
×××
テディチヌは、混乱していた。
なぜ、自分はこんな話を聞かされているのだろうと。
「あなたは、優紗さまのことをどれだけ覚えてるの?」
最初はそれだった。
テディチヌが「え……えと?」と、反応に困っていると、さっきからやたら優紗の周りで狂喜乱舞していたメガネ女子が突然語り始めたのだ。
「あぁ、今でも眼前に浮かんでくるようですわ。あの日の優紗さま、あの目が宿す英知のキラメキ。私たちが住んでいた異世界、ガガ―エルは魔物の進行に脅かされ、明日が来るのかもわからない日々を恐怖しながら過ごしていた。その時、神が与えてくれたのは優紗さま! 当時は、ユ・サーリエさまでしたが、彼の方は、波のように襲い掛かってくる魔物たちをその眩き剣でたった一撃、その一撃で、全てのものを薙ぎ払い……。あぁ、私たちはただそれを呆然と眺めながら、彼の方の素晴らしさ、可憐さ、強さに惹かれ……」
「あの……、僕の校舎案内をしてくれてたんじゃ」
廊下で声高々に話すもんだから、テディチヌは周りの目をちらちら気にしている。
くすくすと、明らかに嘲笑が聞こえてくるが、少女は構わずに語り続けている。
「え……えと、その」
「特に素晴らしい思い出となったのは、あの日。マ・ヨラーズが白い光線を我らにはなった時、ユ・サーリエさまはそれらを全てのみ込み、自らの糧にして、黒き稲妻シ・ヨウズ―を召喚して……」
「あの!!」
テディチヌの声に、やっと少女は反応する。
「……何か?」
「あ……と」
あぁ、バカ!
そこで、いじいじするな。
話を中断されたことで、少女が明らかに不機嫌な顔になっていても! そこは立ち向かえ! 立ち向かうんだ~。
「あは、あはは~……懐かしいですね」
「……そうでしょう!!」
……話合わせたーーーー!
あ、少女Aめちゃくちゃうれしそうな笑顔です。
眼鏡っこで、まじめちゃんぽいのに中二で、ちょっとあれかなと思ってたけど、笑顔は最高だね。
「それで、あっ、あなたはどうして優紗……さんに、今も……あんなに……というか従っているんですか?」
おっ、話の持っていき方は悪くない。
まぁ、一応悪魔だもんね。
言葉巧みに人を惑わせる存在だもんね。
……もうとっくにそのキャラ崩壊してるけど。
「この世界で、私が優紗さまに仕える理由……?」
突然、少女の声のトーンが下がった。
「え……どうしたの?」
さっきまでのマシンガントークが急に止まり、テディチヌはわけもわからず戸惑っている。
少女はわずかに躊躇いの表情を見せたが、ぽつりと言った。
「救っていただいたの……」
「え……」
少女は手を胸の前で組んだ。
神に祈るように。
「私は今でこそみんな思い出してくれたから仲間の一員に戻れたけど、それまでは、優紗様が帰ってくるまでは虐げられていた。疎まれていた。毎日、泣いて――死にたかった」
テディチヌは言葉を失くす。
突然重い過去を語られたら、そりゃ反応なんてできない。
でも、すぐに少女の表情は恍惚としたものとなる。
「でも、優紗様が現れた。私の痛みの象徴であったノートと机を見て、平然と『こんなんじゃ、勉強できないでしょ?』と言い放ってくれたの。もちらん、記憶がまだ戻っていなかった彼らは優紗様に反発したわ。でも、優紗様はなにをされても眉一つ動かさず、平然と対処されていった。どんな悪意も敵意も跳ね返して……素晴らしいお姿だった」
そのままカリスマ性を開花させ、クラス一個を掌握しちゃったのか。
優紗は政治家に向いてるかもねぇ。
「感謝してるの。前世の優紗様も尊敬してるけど、今の優紗様を誰よりもお慕いしてるわ」
少女は頬染めて、笑う。
彼女がこんな表情をできるようになったのは、優紗のおかげということだ。
いい話だねぇ~。エアリン、涙がちょちょぎれちゃうよ。こういう話は弱いんだよ。
だが……
テディチヌは、浮かない顔をしていた。「どうしたの?」と少女に問われ、「なんでもない」と首を振った。
「ねぇ……、優紗をこれからもよろしくね」
こわごわと言ったテディチヌに、少女はきょとんとしたが、すぐに満面の笑みで答えた。
「もちろん! 不肖この槇原奈央、全力で優紗さまに尽くしますわ」
テディチヌはそれを聞いて――寂しそうに笑った。
×××
二人は一緒の帰り道を並んで歩いていた。
転校初日、いろいろ度肝を抜かされたが、とっても楽しかったよ。
テディチヌは知らないけど、見ていたエアリンはとーっても楽しかった!
あぁ、幽霊の眼に録画機能がついていたらいいのに。
そうしたら、男子更衣室も……女子更衣室も……げへげへげへ……
おっと、嘘だよ!
エアリンは、そんなことしないよ(裏声)
家へと向かう二人の間に会話はない。
普段だったら、テディチヌがうざいぐらい頑張っているのに、その様子もなかった。
沈黙が破れたのは、あと家へと向かう道にある最後の信号機が赤となり、その歩みが止まった時だった。
「ねぇ、優紗……。あの子を助けたのは、どうして?」
「私は、助けたの?」
優紗は無表情のまま、こてんと首を傾げた。
テディチヌは、はははと小さく笑った。
「話を聞いたよ。優紗、すごいね。あのクラスの女王様なんだ」
「あの子たちがそう望んでいたから。それにことだけだよ。槇原のことだって、彼女が私をやたら見てくるから、何かしてあげないといけないのかなと考えただけ」
優紗は、淡々という。
「《普通》に馴染むために私はみんなの期待に応えてるんだが、なにかおかしかった?」
彼女の言葉に、テディチヌは笑いながら――泣いた。
彼女の《心》は――。
それを見て、虚ろな《体》は首を傾げる。
優紗は政治家に向いてるだろう。
機械的に、全ての期待に応えるだろう。
自己を省みないからできる、心無い《善意》。
誰にも理解されない、その虚ろ。
決して、誰とも対等な関係は結べない。
「僕はね……それを、《寂しい》と感じたよ」
テディチヌは言った。
「君の心は、君を《すごい》と思いながらも、とてもとても《悲しい》んだ」
「……ふーん」
信号が青に変わる。
優紗は平然と歩き出した。
その後ろを悪魔が追う。
まだ、彼はポロポロ泣いていた。
君がいるから大丈夫だよ、テディチヌ。
優紗には、君がいる。
誰か一人でも傍にいてくれれば、人間は十分に幸せなんだよ。
だから、どうか優紗を見捨てないでね。
昔、昔、見捨てられてしまったエアリンは、そんな夢を悪魔に託す。
二か月ぶり……ですね(汗
ネタが出ない限り書けません。
っていうか、今回、後半はまったくコメディー要素が消失してました。
自分の作品を読み返すと、けっこう重たい話が好きみたいですね。
もっとこう、ふわっふわしたものも書けるようになりたいです!