どっきどきの青春シチュエ~ション
学校生活という、ドッキドキな青春シチュエーション。
少年漫画では友情が叫ばれ、なぜかバトル展開多。
少女漫画では恋愛が貴ばれ、なぜかいつもいつも三角四角関係。
優紗がもってる漫画を読んでの感想なんだけどね~
それでは、みなさまは学校生活といえば、どんなことにわっくわくしますか。
エアリンはねー、ベタな展開が好きなの~
もうこれ以上ないってくらいの、ベッタベタの水あめ以上のベタベタさを求めているの~
古き、良き、青春の一コマ。
胸の高鳴りを抑えきれない。
あ、幽霊だけど、ちゃんとドキンドキンって口で言ってるから、ご心配なく!!
さぁさ、楽しみ楽しみ。
ヒキニートの称号は捨てきれないから、今日のエアリンも透明モードでひっそり眺めるしかないが、それでもこの興奮を人に気取られないから心配である。(何人かは、悪寒を感じてるかも)
いざいざ、古き良き青春劇を始めよう。
×××
教室のざわめき、朝の喧騒の中、登校してきた優紗は一つのノートを手に取っていた。
ぼろぼろに、ページが引きちぎられたノート。
丁寧に教科名が書かれていた欄には卑猥な言葉、名前の上には「死ね」「汚い」「ブス」などの人を蔑む言葉が書きなぐられている。
ひそひそと、後ろで声がした。
くすくすと、笑い声も混じっていたかもしれない。
しかし、優紗は眉一つ動かさない。
仮面のごとく凍りついた表情のまま、そのノートのページを一枚一枚めくっていく。そして確認し終えると、すたすたとゴミ箱へ近づき――捨てた。
その動作には、動揺の一欠けら、虚勢を張っている様子もまるで受け取れない。
ただ、もったいないけど、もう使えないからという――当然の行動だった。
一部の生徒がざわめく。
優紗は振り向かない。ただ、机に目をやる。
彫刻刀で、もう直せない傷を何度も幾度もつけられた机を――見て、
「よいしょっと」と、持ち上げる。そしてやっと振り返り、クラス全員を見て言った。
「こんな机じゃ勉強できないから、誰か交換してくれるか、新品の机を今すぐ持ってきてくれない?」
クラスの雰囲気が一斉に変わる。
ざわめきは波のように広がり、空気を澱んだものへと変えていく。
少女はそれを感じた。でも――――彼女の心には、波風一つ立たなかった。
×××
「大丈夫かい……?」
「はっ、はひっ!!」
舌を噛んでしまい、あたふたしてる転校生を見て、教師は苦笑した。
「そんなに緊張しなくても、うちのクラスは仲がいいから、君もすぐに打ち解けられるさ」
「へっ、へと……、わかり、ました」
滑舌が悪く、内気そうな少年の顔は、それでも不安そうだった。
しかし、教師はにこりと微笑んで、ドアに手をかける。
「じゃあ、行くよ――――」
少年は必死な顔で、こくりと頷いた。
「てっ、転校してきましたっ! ち、茅渟、テディです!! よろしくっ、お願い……しま……」
少年の、決死の想いの自己紹介は打ち切られた。
彼は呆然と目の前にそびえる、塔を、見上げ……
「よろしく」
彼女は、淡々と言った。
その言葉に感情はない。
だが、彼女が座る椅子。彼女の足元の土台。
「「「「ようこそ! 二年四組へ」」」」
人で作られた塔が、一斉に声を上げた。
運動会の組体操もびっくりな、綺麗なピラミッドーーーー!
女子たちは、祭りの団扇で頑張って優雅な雰囲気を作り出そうとし、
男子たちが顔をプルプルひきつらせ、それでも笑顔で根性を振り絞り支えているのは、
「初めまして、と言いたいところだけど……あなたがどうしてここにいるの?」
ぶるぶる震える茅渟テディ――少年の姿をしたテディチヌの眼に映るのは、
クラスを制圧して、ふんぞり返る優紗だった。
「ななななななな、何のことーでしょうか?」
動揺しすぎだ……。
エアリンにはめられて、この世界には転校生という概念があることを教えてもらったテディチヌはあーだこーだして、今日、念願の転校を果たしたのに……、
「ななっ、ななな、何で……?」
「名前からしてバレバレよ」
「エアリンは、これで完璧だと言ってくれたよ!!」
そんなわけなーいじゃん。
優紗のことだからばれないと思ったけど、それは甘かったね。
だって優紗は天然だし、いけるとおもったんだもん(テヘペロ
エアリンに頼る悪魔が悪い!!
「それに……何、その姿。金髪、碧眼ってハーフでも気取っているの?」
「こ、これは、僕の骨の」
「興味ないから、答えなくていいわ」
「……」
だったら聞くなよ!
テディチヌ、重い話始めそうな様子だったのに、へこんじゃったよ。
「優紗さま! この者は何者ですか?」
団扇で仰いでいた女子の一人が、優紗を見上げて尋ねる。
さま…………?
「気にしなくていいわ。以前、この男は私の下僕になることを『前世で』誓った、という事を思い出しただけ」
……?
「ゆっ、優紗……!?」
テディチヌが呆然とするが、それを聞いた少女Aが発狂したように叫ぶ。
「そうですか! つまりこの者は、前世からの我々の仲間。優紗さまのしもべというわけですね!!」
目の輝きが怖い目の輝きが怖い目の輝きが怖い。
この娘何なの!?
ギンギラギンに隠すことなく、嫌な光を放つ眼が恐ろしい!
「そうよ。まぁ、それは置いといて……」
人間椅子に座っていた優紗は立ち上がると、軽く跳躍してその娘の前に降り立つ。耐えきれずぐへっと誰かが鳴いた気がするが、誰もBGMとして認識さえしない。
ただ驚いた顔をするその女子に顔を寄せ、さらりと言った。
「昔はともかく、今の私たちは対等よ。『さま』だなんて、寂しいわ」
「あ……あ、あ……」
顔を真っ赤にして、その娘は土下座する。
「ごっ、ごめんね、優紗ちゃん!!」
「だから、それがいらないって言ってるのよ」
感情がこもっていない、空虚なシンプルな言葉。
なのに、なぜだろう……こんなにとてつもなくクールでかっこよく聞こえるのか。
「あなたたちも、ありがとう。新たな私たちの仲間に、とてもいい歓迎ができたわ」
「「「「「感謝感激感無量です!! 姐御~~~~~~!!」」」」
男子……まじ、泣いてるやついるんですけど。
テディチヌは空いた口がふさがらないまま、こっちに近づいてくる優紗に後ずさりをする。
「ゆ、優紗?」
「あら、私よりも背が低いんだ」
「いっ、いつもは浮いてたから……」
本当だ。
こうして並んでみると五センチくらい違うや~。
って! こんなことは今、問題じゃなくて!!
「ほら、このクラスは仲がいいだろ」
先生どうしてーーーー!
明らかにおかしいでしょ!? 何なのこのクラス?
「まぁ、いいわ。茅渟テディ」
無表情のまま、優紗は手を差し伸べてくる。
「これからよろしく」
「…………」
よ、よかったね~、テディチヌ。
優紗はいじめられてなんかなかったよw
むしろクラスを制圧してたよw
何なんだよ! この中二病クラス!!
あ……そうだね、この子たち、中学二年生だったね。
茅渟……魚。
さすがにテディチヌの「テディ」の当て字は思い浮かばなかったので、ハーフにしてみました。
久しぶりの投稿で、さっそく骸骨ではなくなってしまいました。
行き会ったりばったり感がいなめません。
次回もいつになるかわかりませんが、ちょびちょび頑張りますw