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退屈で、くそつまらん日常よ

「はぁ…………」


 そのため息は、まるで恋の病を患う乙女のよう。

 カラカラ……と響く音が、物悲しさを助長している。

 風が吹き込み、カーテンがふわりと舞う。

 その細身の人物は、窓の向こうを眺めて…………

 

「はぁあああああああああああ」


 ああっ、せっかく人がいい雰囲気にしようとしてるのに、空気砲みたいな特大のため息つかないでよ!!

 肋骨が! また暴れちゃってるよ!


「あっ、いけない、いけない」


 テディチヌは飛び出した自分の肋骨を慌ててしまおうとする。うまくいかないようで、手元にあったボンドで再度くっつけようとしている。


 先日、優紗に取り外されてしまったためテディチヌはいそいそと自分で修理したのだが、不器用なのかちゃんとくっついていない。

 今日のようにため息を吐いていると、骨がふわりと浮いて周りの骨にぶつかりカラカラ鳴るのだ。

 

 というより、悪魔はどうやって息を吐くんだ。

 骸骨の中身が空っぽなのは、前回の合体で証明されてるんだよ?

 不思議不思議生物(?)である。


「あっ!! 庭吾郎、僕の第三肋骨を持っていかないでー!」


「コッコッ、コケー!!」


 平和な日常の昼時である。

 この部屋の主である少女は真面目に学校でお勉強中。

 残されたペットたち、骸骨は自分の身体の補修に忙しく、ニワトリはそれを邪魔する。

 そして浮かぶエアリン!!

 なんて、平和な日常!


 ないないないないないないないないないないない。


 まっ、エアリンはもともとこの部屋の主ですから? 日常でもいいのですが?

 骸骨とニワトリの骨奪い合戦は……なかなかないよね~


 肋骨は第一肋骨から第十二肋骨まであり、骨の中でも大変脆い骨である。中学生の女子が素手で折れるくらい脆い骨である。

 そして、ニワトリのつっつく攻撃にも……


「庭吾郎……なんてことを」


「コケーケケケケケケケケー!!」


 骨粉砕。ニワトリ、狂喜乱舞。羽が超舞い散る。

 絶望にうなだれるテディチヌは、それでも震える指でピースを拾い集める。

 パズルのように頑張って治すのだろう。頑張れ。


「ねぇ、見てないで手伝ってよ~」


 それは出来ん。

 エアリンはエアーですから(キメっ


「はぁ……これ大変なんだよ?」


 スルーですか。はい、そーですか。

 さすが優紗の心を持っているだけあるねっ。


 ところでテディチヌさん、暇なのですが。


「僕は忙しいよ」


 暇だよねッ。

 いやあ、エアリンと気が合うなぁ。


「……エアリンも、冷蔵庫に入ってなきゃいけないんじゃないの?」


 なぁに、言ってるんだよ! お馬鹿さん。

 エアリンみたいな引きこもりニートが、あんな退屈な仕事真面目にするわけないじゃないの。

 優紗がいなくなったら、コンセントに切り替え! これ、普通!!

 気づかない優紗、マジ天然!!


 テディチヌが空っぽの眼窩を向けてくるが無視無視。


 それよりぃ……何か、お困りなことがあるんだろう?


「えっ……」


 さっき、あんなに大きなため息を吐いてたじゃないか。


「うん…………」


 テディチヌは自分の骨をいじりながら、うじうじしている。

 うじうじのなよなよで女っぽい。いやぁ、性別なんか知らないけどさ、男だと思うエアリンの気持ちを裏切らないでほしいな。

 僕っ子も萌えるけど、ここは優紗とのシチュエーションを……


「ねぇ……ゆっ、優紗、何してるかな?」


 …………昼時だし、ご飯食べてるんじゃないの?


「あっ、そうだよね。あはは……」


 …………。

 乙女かい!

 お前は乙女かい!!

 いい加減腹立ってきたよ!?


「いやあ、優紗、学校でうまくやっているのかなって」


 テディチヌは顔を俯ける。

 当然だが表情はない。だが、その声音としぐさは雄弁に感情を表す。

 優紗が失ったもの。


「優紗、ちっとも教えてくれないから心配になっちゃって。あんなに無愛想だし、ちゃんと新しい友達できたのかなぁ」


 どうしてそこまで心配するの?

 優紗は何があっても感じないんだから、大丈夫じゃないの?


「それじゃあ、僕が嫌なんだよ。だって、僕のせいだし」


 マントの胸の辺りと思われるところを、ぎゅっとテディチヌは掴んだ。


 後悔してる?


「してないよ! だって、僕には《心》が必要だったし、おかげで力もパワーアップしたんだよ。それ~!!」


 …………何してるんだい。


「ほら、浮いたよ! 床から三十センチ。前は五センチだったのに……」

 

 しょぼっ!

 優紗が報われないよ、これ。

 というより、飛べないの? 悪魔って、蝙蝠のツバサ生やして、ばさばさ~って。


「飛ぶと浮かぶは全然違うよ。飛行機とヘリコプターみたいな違いだよ」


 エアリンにはわかりません。


「ま、とにかく! 僕は後悔なんかしてないよ。でも、優紗の心が嫌だーって言うんだもん。僕の身体を支配しちゃってるみたいな感じで、心配だなぁって、ため息とかつかせるの」


 それが、《心》なんじゃないの?


「そうなの?」


 さぁ、幽霊(エアリン)にはわかりません。


 テディチヌは首を傾げる。だがすぐに、肋骨パズルを再開する。

 静かになった部屋の中、庭吾郎だけうるさい。隣近所の人はとても寛容なようで、苦情が来ないのが不思議なくらいだ。


「コケーケケケケケ、コッコ―、コッコッコッコケーコ、ココココココココココッー!! ケコッ、コケッ、コケーケケケケコッコ―、コッコッコッコケーコ!!」


 鶏声(とりごえ)マシンガン。

 半日経ったら、すてきなBGMみたいに聞こえるようになるよ。たぶんね。


 テディチヌは黙々と作業する。

 エアリンは暇で、優紗が帰ってくるまでテディチヌを時々からかうしかない。


 さてとー暇でー仕事もーお金もーなくて~

 時間だけはた~~~~っぷりあるエアリンはどうしたらいいのでしょうか?


 ねぇ、テディチヌ?


「ん?」


 本日三十回目の溜息、五回目の肋骨補修工事をしているテディチヌさんに、エアリンはテレビを指し示す。


 つけてみてよ。


 疑うことを知らない純粋な悪魔(?)なテディチヌは、躊躇いもなくピッとつけた。


 そ~れ~が~、全ての始まりだったという事もし~ら~ず~に~


「こっ、これは……!!」


 そうそう、そうだよ(にやり


 さぁ、退屈な日々とはおさらばだ!!

 久しぶりです。

 はい、また次話がいつになるかわかりません。


 そして、今回は主人公すらいないという状況です。


 好き勝手やらせてもらってる感がありありですね。


 次の話のネタがポーンと浮かんだ時にやっとこの小説は進められるので、私のインスピレーションの開花に期待 (できない)します!!

 

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