表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

おはよう、嫌な朝ですね

 月が綺麗だった。

 それなのに闇が深く、風が一つもないうすら寒くなる空だった。

 こんな夜だから()のものは来た。それは彼女にとって幸運なことで、なによりも不幸だった。

 

 闇を闇足らしめる漆黒のマントを羽織った悪魔は、少女に聞いた。


『それでいいのだな』


 マントから除く骸骨の空洞から鳴る、重々しく、耳に入って来ただけで震えあがってしまいそうなほどの低い声。地獄の唸りのように響き渡った。

 だが、悪魔の前に立った少女は手を祈りの形に組んだまま、毅然とした表情で頷いた。


「お願い、します」


 すべてを賭けた少女の言葉。

 喉の奥から絞り出され、血を吐くような思いが込められていた。

 しかし悪魔は――その骸骨の顔に変化はなく、一つ頷いただけ。


『契約は完了した』


 無慈悲に無感動にむき出しの骨の腕が、少女の胸を貫いた。

 血は出なかった――しかし、少女の目は見開かれ、びくん、と一度だけ幼い体が震えた。

 動かなくなった身体から、ずるりずるりと腕が引き抜かれる。

 細く長い骨の五指に掴みとられたのは、小さな光。

 地面に倒れ行く少女を一瞥さえすることなく、骸骨の瞳の虚空はその光のみを見ていた。


 そして――


 音もなく咀嚼し、飲み込む。

 それだけで光は消える、骸骨の虚空へと消え行く。


 沈黙が辺りを支配した。

 すべてを終えた悪魔は月を見上げてただずみ、すべてが終わってしまった少女は何の光も写さない瞳を虚ろに空へ向けていた。

 このまま少女は死ぬだろう。

 口から涎をこぼし、微動だにしない彼女はこのままゆるゆる死へ向かうだろう。

 願いを叶えてもらう代償。

 まさか命まで落とすことになるとは、少女は知らなかっただろう。

 差し出したのは大切なものだったが、果たしてそれ(・・)の《大切さ》をどこまで理解していたのだろうか。

 その結果が、これだった。

 このまま少女は死ぬだろう。

 結末は、明らかだった。


 ――だが、


「……えっ、あれっ? しっ、死ぬの?」


 気弱げな声が、不意に場をかき乱した。


「ちょっ、ちょっと待ってよ。いや、そうなるとは、知ってたけど……えっ、これ、何?」


 月を見上げていたはずの悪魔が、少女を見て震えていた。

 確かに声は悪魔の骸から聞こえてくるが、先ほどまでの重々しい気配は霞も残っていなかった。

 突然、少女を抱き上げ――吠えた。


「死なないでください!! 死なないでください!! あぁっ、もう何で? 怖いよー、怖いよー!! 死んじゃだめだよ~。えっ、あれ……水まで…………えぇ~ん、えぇ~ん、しっ、死なないで~」

 

ⅩⅩⅩⅩⅩ


 眩しい朝だった。 

 耳元で鳥の鳴き声が聞こえて、あぁ、起きなければいけないのかと、少女は目を開く。


「コケッ、コケッ、コケコッコ~!!」


「朝だよ~、優紗」


「…………」


 すっと、少女はまた瞼を下した。すぐにすー、すー、と安らかな寝息が聞こえてくる。


「あっ、あれ? 朝だよ~!! 優紗(ゆさ)、朝ごはんお願い~!!」


「コケッ、コケッ、コッ、コッ、ココ~!!」


「……朝のメニューは、時間はかかるけど骸骨の肉詰めと鳥の丸焼きで……決まりね」


 少女の淡々とした声に、ベット上にいる一人(?)と一羽は息を呑む。


「……ぼっ、僕は良いけど、庭吾郎は食べないでー!!」


「コケーッ、ケッ、ケッ、コッ、コケケー!!」


 バタバタと暴れだす二人(?)、いや二生物(?)、いやいや……、とにかく悪魔とニワトリに少女は観念して体を起こす。

 少女の眼前にあるのは奇妙な光景だった。

 黒マントを羽織った骸骨が骨をがしゃがしゃさせている。その骨の両手にあるライト、どうやらこれで少女の顔を照らしていたようだ。

なんて胸糞悪くなる一日の始まりだろうか。耳には窓に打ち付ける激しい雨の音が聞こえていて、今日も洗濯物が乾かないことを明確に示してくれた。

仕方なく最近部屋の掃除に従事しているのだが、《庭吾郎》と羽にマジックで書かれているニワトリが羽毛を撒き散らしている。


「……絞めようか」


 ニワトリを見てぽつりと呟いた少女の平坦な言葉に、彼らはびくっと全身を震わせ、おたおたし始める。

 それらのすべてをぼんやりと少女――心恵優紗は見ていた。無感動に、うつろに。


近重(このえ)優紗(ゆさ)には心がない。

願いを叶える代償に一か月ほど前、全てこの骸骨悪魔に渡してしまった。

生きているのかどうかさえ曖昧に感じられる。過去を反芻してみても、なぜあの時自分は泣き、笑ったのか理解できない。正直、人間社会を生きていくのには致命的な欠損だ。

 だが、何事にも揺らされない自分が落ち着く様な気もする――そんな今を見事に壊すのが、この奇妙な同居物たちだった。

って、物って酷くない?


「食うだけで何もしない、置物の価値すらないあいつらにはむしろ持ったいないくらいだわ」


 厳しいね~。


「あなたも害がないから放置しているけど、あまり余計な事をしゃべるようだと処分させてもらうから」


 ほう、それは興味深い。

 どうやってエアリンを退治するのかな?


「えぇ、本当に興味深いわ。どういう物質で成り立っているのかしら。あなたに触れると冷たくて凍ってしまいそうになるし……だから、箱に閉じ込めるべきね」


 箱なんて、すり抜けられちゃうよん。


「テディチヌ」


「はいは~い」


 骸骨が元気よく手を挙げる。

 少女の心を手に入れたことにより、すっかり腑抜けになってしまった悪魔である。

 彼がマントをバッと広げ、その白き体が!!


「変態」


 クリティカルヒーット!!


 ベットから飛び降りた優紗選手による華麗なボディブロー!!


 テディチヌ選手はバラバラだ!!


「まったく。もったいぶらずにさっさと出せばいいのよ」


 優紗はマントをはぎ取る。

 きゃっとか言った頭蓋骨を踏みつけながら(男前)、マントの闇に手を入れ、ズズズ……と取り出していく。


 パラリラッタラ~♪


「効果音はいらない」


 はい……


 冷めた瞳をした優紗は大きな段ボールぐらいの箱を取り出す。金属製に見えるが、持っている感じを見ているとそんなに重たそうでもない。

 それは、


「魂を閉じ込める箱、死神から買ったのよ」


 もちろんその代金はテディチヌもちなんだろうね。

 待て、魂を閉じ込めるとは、つまり、


「閉じ込められた魂は二度と出ることはできなくなる。さぞかし、天然のいい冷蔵庫になるでしょうね」


 ……発言には、十分注意をさせてもらいます。

 視聴者の皆様、今後このドキュメンタリーにおいて、バキューン、ピー台詞がでることはありません。

 だけど、R-15指定です!!

 主人公が悪魔なので。

 もちろん優紗のことですよ。


「…………」


 すみませんんんん!!

 だから、無表情でゆっさゆっさ箱を揺らさないで、揺らすなら胸でお願いします!! ゆっさ、ゆっさと優紗(ゆさ)だけに!

 あっ……無理か~

 

「……――――、じゃあね」


          ――ブツッ――


 ――――くまくまアパート4号室の幽霊、自称エアリン。

 本日、引きこもりニートから解放され、新しい就職口を見つけました。

 





 

 

 この話は息抜きに思いつきで描いていきたいと思うので、『超』不定期になります。


 作者の暴走をどんどん盛り込んでいくので、文章も暴走させます。

 普段なかなかできないので楽しみですwww


 コメディーは初めてなので、とにかく私が面白いと思うことを書きます!!


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ