↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/25

第4話






『あの日の空』


 そう名付けられた曲は、恐ろしいほどの再生数を叩き出す。

 美樹の新曲というだけでなく、美結の歌声も評価された。

 おかげで既に動画は300万回再生を突破し、彼女のアカウントも登録者数が200万人近くも増えた。

 このあまりの数字に彼女は3分ほど完全にフリーズしたほどだ。


 更にこの快挙に朝から妻のマネージャーもやってきて彼女を抱きしめて祝福した。

 彼女の名前は『橋本(はしもと) 恵(めぐみ)』

 美結の専属マネージャーであり、25歳という年齢もあって彼女とは姉妹のように仲が良い。

 肩にかかるぐらいのセミショートで仕事が出来るキャリアウーマンという見た目をしている。


 そして話の流れで彼女にも盛大に俺が美樹だということがバレた。

 だが、そこから彼女達は俺の目の前でコソコソと相談をし、1つの結論を出す。


「独立しようと思うの」


 まるでウサギのように俺の胸に飛び込んで収まった彼女が、俺を見上げながらウルウルとした瞳で『手伝ってくれるよね?』と無言のアピールをしてくる。

 マネージャーの恵も『まさか断るなんて言わないよね?』と無言の圧をかけてきた。

 俺は少し考えてから、盛大なため息を吐く。

 この可愛い妻のおねだりを断れる男が居るだろうか。


「仕方がないなぁ」


 そういうと2人は声をあげて喜んだ。



 それから数日後。

 彼女が所属する芸能事務所では、ようやく彼女に関しての会議が行われていた。

 本来なら彼女がバズったその日にやるべきなのに、彼女の担当の上司が仕事をサボっていたのだ。

 おかげで事務所は彼女が自分の所の所属であり、あの美樹に楽曲提供されて盛大にバズったことを正確に把握するのに時間を要してしまったのだ。


「このバカ者が!」


 アイドルや歌手部門をまとめる総責任者が机を思いっきり叩きながら怒鳴った。

 それに担当者がビクッとしながら震えて謝罪を繰り返す。

 こういった流行や話題性というのは、一瞬である。

 その一瞬を上手く利用し、乗ることで大きな効果を生み出すことが出来る。

 そうした機会を損失したのだ。


「数千万は下らない損失だぞ!」


 せっかくの無料の宣伝効果を数日間も逃したのだ。

 まったくもって話しにならない。


「今すぐ、彼女へのリソースを増やすぞ!少なくともトップアイドル並みだ!」


 そう宣言した直後、明らかに顔を青ざめた担当の顔を見て、思わず確認する。


「どうした?何か問題があるのか?」


 その言葉に何度も頭を悩ませた担当だが、今誤魔化してもスグにバレるだろう。

 だからこそ言うしかなかった。


「彼女は……その、あの……た、退職しました」


 その言葉に総責任者は『は?』と間抜けな声を出した。

 しかも退職した理由が『リソースを削られ続けて自由が無いから』だと知ると、手元にあったまだ湯気が立つお茶の入った湯飲みを、思わず担当者に投げつけてた。

 そう……全ては遅すぎたのだ。

 逃がした魚は、あまりにも大きかった。


 そんなことがあったと知らず、彼女達は事務所を立ち上げ、バズった歌に関しては宣伝費代わりとして無料公開を行った。

 それが更に話題を呼び、事務所は―――『水野エンターテインメント』は、最高のスタートを切ることが出来た。






*誤字脱字などは感想もしくは修正機能からお知らせ頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。