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第14話





 世の中では『MIYU』と『美樹』の名前がバズり続けていた。

 美樹の曲にハズレ無しという話題が多いものの、美結の見た目の美しさや歌唱力も話題となっている。

 しかも国際救済団体CCCのおかげで世界的な宣伝となり、海外からの取材依頼まで来るようになっていた。

 それらに忙しく対応する美結と、その管理に必死な橋本マネージャー。


 事務所のスタジオでは高藤 瑠璃がボイストレーニングのベテラントレーナーにしごかれていた。

 彼女に関しては、もう少し基礎固めをしてからにしたい。

 一度デビューしてしまうと、その後に調整するとなると非常に手間がかかる可能性が高いからだ。


 こうして事務所が忙しくなっていた時だった。

 わざわざ事務所に来客があった。


 それは、電撃歌祭りの総合プロデューサーの和田氏だ。

 彼は、紙束を取り出すと美結と橋本マネージャー相手に話をする。

 どうも新しく新番組を作るらしく、電撃歌祭りに近い音楽番組をもう1つ作ることになったと説明してくれた。

 これは上層部から『人気があるんだから、もっとこういうタイプのを作って数字を稼げばいい』なんて楽観的な命令があったらしい。

 思わず誰もが苦笑してしまう。

 紙束には内容の詳細が書かれていた。


 最強歌バトル

 挑戦者1名が、番組の用意した数字の中から3つを選択。

 そしてその数字に対応した人物と歌バトルを開始。

 ネット投票によって勝敗を決める。

 これで勝利した数によって報酬が決まる。


 全敗の場合、番組内で1分間好きな宣伝が出来る。

 1勝すれば、番組公式ネット放送で1回限定の冠番組を放送出来る。

 2勝すれば、人気音楽番組へのゲスト出演権

 3勝すれば、自局メディアジャック権(指定した日の局で放送される全ての生放送にゲスト出演出来る)


 というものらしく、対戦相手として現在交渉しているメンバーは、全員かなりの実力派ばかりだそうな。

 つまり当たり前のように全敗する可能性があると和田プロデューサーは、自信満々に説明した。

 彼の予定では、全敗~1勝が多く、2勝はたまにで全勝である3勝は滅多に出ないものと考えているようだ。

 それだけの強敵を用意しているということだろう。


 これの第一回にぜひとも挑戦者として出て欲しいと言う話だった。

 美結達は、少しは悩んだものの二つ返事で了承した。



 ―――その日の夜。


 三大エンターテインメントの1つ『海浜エンターテインメント』の木原(きはら) 徹(とおる)が部下からの報告を受けていた。


「せっかく餌に食いついてくれたのだから、丁重にもてなす準備をしろ」


 そう指示をして電話を切る。


「ふふふ、いくら話題性があろうが、それなりに才能があろうが、真の実力というものには敵わないということを教えてやる」


 窓から外の景色を眺めながらコーヒーを飲む。

 ここ最近『水野エンターテインメント』の勢いが凄まじい。

 出す曲、出す曲が全て売上で堂々の1位を攫っていく。

 それだけではない。

 その後もランキングに長時間居座り続けて、他の曲を蹴り落し続けている。

 どれだけ宣伝費をかけても全て無駄になってしまい、正直大赤字だ。


 そこで方針変更をすることにした。

 視聴率が高い番組で叩き潰せばいいのだ。

 そうすれば叩き潰した側の方が話題となって人気が出る。

 だからこそ対戦形式にこだわり、局に圧をかけて舞台を用意してやったのだ。

 今回用意したのは、若者ではない。

 業界で長く生き残っただけでなく、人気がある者達を用意した。


 調子に乗っている連中を叩き潰すと同時にその話題性をこちらに引き継ぐ。

 そうすることで一石二鳥となるのだ。



 ―――同じ頃


 三大エンターテインメントの1つ『栄光エンターテインメント』の鈴木(すずき) 健太(けんた)は、海浜の動きを独自情報によって得ていた。


「……まったく堪え性の無い男だ」


 思わず失笑した。

 今、あれだけ勢いに乗っている『水野エンターテインメント』には名曲量産機と言える『美樹』が居る。

 少なくとも真っ向勝負がしたいなら、同じぐらいの名曲でなければ話にならない。

 しかし昨今の大御所と呼ばれる連中は、過去の栄光にしがみ付き、ロクな曲を寄越さない。

 まだ若手の奇抜な曲の方がマシだと思えることすらある。


「まあ、お手並み拝見と言ったところか」


 あそこがどれだけの手札を持ち、その威力がどの程度のものか。

 誰かが踏み込んで確かめなければならなかったのだ。

 それを率先してやってくれるというのだから、非常にありがたい話である。


 和樹達が順調に勢力を伸ばしているかのように思えたが、実は大手事務所たちが、虎視眈々とその隙を狙っていた。

 彼らにとってもこのまま放置すれば、いずれ確実な脅威になりかねないからだ。

 ならば大きくなる前に、その芽が芽吹いてしまわぬうちに、潰してしまわねばなるまい。

 こうして、静かに互いがぶつかる運命が動き出した。






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