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価値のある働き方

作者: P4rn0s
掲載日:2026/01/13

朝の電車は、いつも同じ顔を乗せて走っている。

眠そうな顔、諦めた顔、何かを睨むような顔。

誰も楽しそうではないのに、誰かが楽しそうだと許せない空気だけは、やけに濃い。


「仕事は大変であるべきだ」

誰に教わったわけでもないのに、みんなそれを前提にしている。

苦労していない人を見ると、どこか不正を見つけたような目になる。


在宅勤務の人がニュースに出れば、

「楽して金もらってる」

定時で帰る人がいれば、

「やる気がない」

好きなことを仕事にしている人には、

「それは仕事じゃない」


苦しんでいるかどうかが、価値の物差しみたいになっている。

成果よりも、消耗している様子のほうが信用される。


昼休み、同僚がぼそっと言う。

「最近の若い子は、楽な働き方ばっか探してさ」

その声には怒りよりも、置いていかれる不安が混じっていた。


本当は、楽をしたくないわけじゃない。

自分が我慢してきた時間が、無駄だったと思いたくないだけだ。

だから、誰かが違う道を選ぶと、それ自体が否定に見えてしまう。


苦労が美徳になった国で、

苦労しない人は、どこかズルをしている存在になる。

努力よりも、疲労のほうが語られる。

「どれだけ頑張ったか」より、「どれだけ削れたか」


帰り道、コンビニの明かりがやけに眩しい。

レジの奥で、淡々と働く人の顔を見て、ふと思う。

この人が楽をしていたら、誰かは怒るのだろうか。

この人が笑っていたら、不真面目だと言われるのだろうか。


労働は、生きるための手段でしかないはずなのに、

いつの間にか、耐える競技みたいになっている。

誰が一番、苦しんだかを競う、終わりのない大会。


電車の窓に映る自分の顔は、どこか疲れている。

それでも、誰かが少し楽に生きているのを見て、

素直に「よかったね」と言える人間でいたいと思った。


苦行じゃなくても、価値はある。

楽しそうに働いても、誰も傷つかない。

そんな当たり前が、当たり前になる日を、

まだ誰も祝えていないだけなのかもしれない。

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