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『人間』

作者: 小雨川蛙

 


 あぁ、私は確かに悪を成した。

 ――けれど、私は何故こんな目を受けなければならない。


 あぁ、私は確かに人を殺した。

 ――しかし、私はこんなにも反省している。


 あぁ、私は確かに罰を受けて当然の人間だ。

 ――そうは言っても人権くらいあっても良いのではないか。


 あぁ、何故。

 ――何故、こんなにも理不尽な目に遭わなければならないのだ。


 こんなにも。

 こんなにも罪を悔い、後悔し、反省しているのに――!


 』



 ***



 見物人達がため息をつく。

 呆れて言葉も出ない。

 檻の中で全裸で縛られている男の考えている事が全てディスプレイに表示されているが……見るに堪えない内容ばかりだ。


「やっぱり、罪人ってのは救いようのねえ奴ばかりなんだな」

「あぁ。結局のところ『自分はこんな目に遭うのはおかしい!』って考えているんだもんな」


 見物人達の声が聞こえたのだろう。

 ディスプレイの文字が変わった。


『違う! せめて人間らしく扱ってほしいと言っているのだ!』


 見物人達は笑う。

 失笑だ。


「何人も人間を殺した残酷な奴を何で『人間』として扱わなきゃいけねえんだよ」

「反省したら死人が蘇るとでも思っているのか? こいつは」


『違う! そんなことは思っていない!! だが、この扱いはあまりにも酷すぎると言っているのだ!!!』


 罪人が見物人達を睨みつける。

 ――しかし、見物人達も罪人を睨み返しながら告げた。


「あんたに殺された人間達は殺されるほど悪いことをしたのかね」


 見物人と罪人。

 二つを分ける檻の前に設置された看板には『人間』とだけ書かれていた。

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