09話 親の心子知らず
近くで女性と密会していた、オスラ叔父さんに報告をしたことで、アルバートは、本棚から救出された。
アルバート家は、あの手この手で息子の無実を訴えたが、父親の横領が発覚し、全員に処刑が下された。
蛙の子が蛙だったのか~この世界に、蛙はいないけどね…
アルバートから命を狙われた僕には、護衛を就ける事になった。
「ねえねえ。お菓子が食べたいな~」
「すみません。ヘル様を離れる行動は、許されていません」
僕は、与えられた使命を、忠実に守る騎士に見張られている。
このままでは、いつまで経っても、魔法や自分のスキルを知ることが出来ない。(目的が変わっているような…)
何か方法は・・・あ!
ある人物のことを思い出したヘルは、護衛騎士を連れて、その人物の仕事場へと向かった。
「はぁー。次から次へと問題が起こる。なぜ、こんな時代に生まれてしまったのか」
「王宮騎士が王子を殺そうとしたり、既婚者なのに女性と密会してたり、苦労が尽きないよね~」
「そう。そう。妻子持ちは周知の事実、『それでも、貴方が好きなんです』と、言われてもな…って、お前!」
「へぇー。あれは、そういう事だったんだ~」
ニタリ顔で、来客用の椅子に腰掛ける。
「また、こっそりと、部屋に入って来おったか…」
「はい!でも僕、聞いてないよ。不実な叔父さんの秘密なんて」
笑顔で、目配せを贈る。
「”不実”とはなんだ!不実とは。私は、何もしていないぞ!」
ランベイル・オスラは、僕の叔父にあたる。
母親の義兄妹なので、王族と血の繋がりは無いが、最も王に信頼されている人物だ。
僕が転生者であることは、誰にも明かしていないが、叔父は、僕がこの世界に存在する神の一人だと、信じ込んでいる。
「子供の皮を被った化け物だな。今度の要求は、なんだ?」
「僕に張り付いている騎士を、叔父さんの権限で、剝がしてくれない?」
「そう言えば、王がそんな命令を下していたな…待て!」
ランベイルは、急に立ち上がると、部屋の扉を開き、外を確認する。
「・・・聞いていたか」
扉の横で待機する護衛騎士を、問い詰める。
「い、いえ。私は、何も…」
「・・・そうか」
護衛騎士を睨みながら扉を閉め、席に戻る。
「残念ながら、命令を取り消すことは出来ない。王女暗殺未遂の件は、王が相当お怒りだったからな」
無駄足だったか~もう、王の決定を覆す方法は…
「わかった。全部、話すよ」
「待て。何を誰に話すつもりだ!」
「まだ、護衛の騎士を引き剝がす方法が、無いことはない」
「?」
「護衛の騎士は、ヘルの自室以外、部屋の中までは付いて来ない。その状況を利用すれば…」
そうか!その手があったか…
「叔父さん。良い方法を思いついたよ」
嬉しそうに、オスラを見つめる。
ヘルの視線から嫌な予感を察知し、慌てて立ち上がる。
「断る!用が済んだのなら、出て行ってくれ」
椅子に座るヘルを、無理矢理、扉まで押し出す。
「今日は、帰るよ。今日は…ね?」
後日~
ランベイルは、ヘルの教育を全て担当するよう、王から命じられた。




