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操り人形の王  作者: 真知コまち


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8/20

8話 闇落ち


後日~

 勢いよく扉を開き、部屋へ入る、オネット。

「父上!」


 「何だ?騒々しいぞ!貴族なら、もっと余裕を持った行動を…」


「説教は、後にしてください!それよりも、こちらを…」

 一枚の書簡を、机に叩きつける。


 「何なんだ。これは?」


「陛下への抗議文です」


 「はー。真面目ところは、おまえの取り柄だが、そんなこと許されるわけ無いだろ…」

  書簡を手に取り、破り捨てる。

 

 唇を嚙みしめ、一息ついてから、言葉を発する。

「最近、騎士の行動は、目に余るものがあります。ここは、陛下に灸を据えて頂くしか…」


 「いい加減にしろ!我々貴族が、今どのような立場に置かれているか、判っているだろ!」

 「この後、私には用がある。もう、下がれ」

  机に置かれた本を搔き集め、支度をして、部屋を出て行こうとする。


「…父上は、僕の様に、暇を持て余している訳では無いですもんね」


 「何?聞こえなかったが、何か言ったか」


「いいえ。何でもありません」


 「そうか。今日は、夕暮れには帰れると思うから、妻に伝えておいてくれ」

  父親は、両手いっぱいに本を持ち、部屋の出ると、扉を勢いよく閉めた。


「・・・くそ」



 雨の中、淡々と仕事をこなし、束の間の休憩を取る、オネット。


 「おい、聞いたか」

  「何をだよ?」

 「王女暗殺を謀った、アルバート家の話だよ」

  「息子の不祥事で、一族皆殺しだってな」

 「勿体ないよな。せっかく、騎士の時代が、巡って来たのに」


 騎士の時代だと…ふざけるな!

 剣を振ることしか能が無い奴らに、国を動かすことなんて、出来るわけがない。

 人には、適材適所!それぞれの役割があるんだ。

 この僕にも…僕にも…

 僕には…能力を振るう機会すら、巡って来ない時代なのか・・・


「いや…違う…そうだよ!」

 時代を、代えればいいんだ。

 今、騎士に対する陛下の信頼は、揺れている。

 そんな時に、また、事件が起きれば…


「ははは、あははは」

 僕ほどの頭脳のうりょくがあれば、騎士共に罪を着せることなど、簡単だ。


 雨雲の晴れた青空が、高らかに笑うオネットを照らした。


「あー、天が僕を祝福している。この期待に、応えなくては」



 騎士の装備を身に着け、兵舎の近くに咲く、花を摘む、オネット。

「まさか、こんな場所に、毒草を植えてくれているとは…偽装工作をする手間が省ける」


 「ねぇねぇ。あっちで、皆、訓練してるよ。行かないの?」


「僕は、人より体力が無いから、別の訓練なんだ」

 子供!王族の人間か?

 驚きはしたが、言い訳は考えてある。表情にも、出していない。

 何も、問題は無いはず…


 しばらくの間、無言で見つめ合う、二人・・・


「そ、そろそろ戻らないと。僕は、失礼するよ」


 「ばいばい。また会おうね~」


 手を振り、その場を去る、オネット。

「気づかれて…無いよな?とにかく、これで準備は整った」


 この毒を王に飲ませれば、騎士の時代は、終わりだ。

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