06話 危険がいっぱい
「うわぁぁぁ!」
後ろから声を掛けられたことに驚き、後退りするアルバート。
なんだ、唯のガキか。
いや、待てよ。何でこんな所にガキが居るんだよ?
ま、まあ。こんな子供に見られたところで、俺の計画に支障は無いが…
「おい、お前!な、何者だ?ここは、ガキが来る様な所じゃないだろ」
怖がらせないよう、出来る限りの優しさで話し掛ける。
この声は…やっぱり、リタ姉様を睨んでいた奴だ。雑に扱われたことを、根に持って…
馬鹿なフリして、少し探りを入れてみよう!
「僕は、ヘル。この国の…”王子”だよ」
「げっ王子⁉」
まじかよ!王子ってことは、あいつの弟だ。
やべぇ!見つかったたら駄目な奴に、見つかっちまった。
だが、相手は”子供”
お菓子をチラつかせ、外へ誘い出せば、今日見たことは、明日には全部忘れるだろ。
と、でも思っていそうだな~
「まさか!本棚で人を殺すつもりだったの?」
「な、何を言い出すのかな~君は…」
ば、バレていやがる。
俺様の完璧な計画が、全部この王子に見抜かれただと!
あ、焦るな、俺。
まだ俺が、誰を狙っていたかまでは…
「リタ姉様は、今日、ここへは来ないよ」
「な、な、クソ王子が!何で知ってんだ!」
「へ~やっぱり。姉様が狙いだったんだ」
「は⁉」
このガキ!カマ掛けやがったのか?
全部バレたじゃねえかよ、俺!どうすんだよ…
いやいや。子供相手に、何を焦る必要がある。
力尽くで黙らせればいいだけの話じゃねぇか!
まずい。子供の体であることを、すっかり忘れてしまっていた。
今にも人を殺しそうな、凄い目で近づいて来てるな~
挑発しすぎたかも。どうしよう…
「ウ、ウィンドエアー!」
ヘルの放った風魔法は、突風を巻き起こし、辺りにある本棚を揺らした。
「・・・へ!ビビらせやがって。所詮は、王子の魔法。こんなもんか」
アルバートは、ヘルの首を掴み締め上げる。
「ま、待っでぐだざい」
「今更、命乞いか!だがな、細工しているところを目撃された時点で、消すことは決まっていたんだよ」
「恨むなら、俺様を無視した姉と、今日ここへ来た自分を恨むんだな!」
腕に力を込め、高らかとヘルを持ち上げた、その時!
ビリビリ、プツンッ。
ドン!
紐が切れ、倒れた本棚が、アルバートに圧し掛かる。
「は⁉痛!」
「ゲホゲホ。ふー危なかった~」
棚から零れ落ちた植物の本を手に取り、埃を払う。
「て、てめぇ!な、何しやがった!」
「あれ~紐を切っって、本棚で潰したのに…死ななかったね!」
ニコ。
くそガキが‼
「お、おい!早くこれを除けろ」
「除けろ?」
「ど、除けてください。助けてくれ!」
「いいよ。けど…」
よし!やっぱり、ガキだな。
ここから出たら、殴り殺してやる!
「何でもします。お菓子でも、遊び相手でも、何でもしますよ」
「”壊死”って知ってる?」
「え、壊死?」
「圧迫されて足は、壊死するんだって。壊死した状態の足を、圧迫から解放すると・・・」
アルバートの耳元に近づき、囁く。
「”死ぬ”んだって」
実際は、長時間圧迫しないと、壊死しないみたいだけど…
「ひーーーやめてくれ。殺さないで!」
「じゃあ、誰か呼んで来るね~」
「あ、あーーー待って・・・終わりだ」
その後、アルバート家の者を、王宮で見ることは、一度も無かった。




