04話 チートですか?
パチッ。
差し込む朝日に、目を覚ます。
「・・・おかしい。二度寝、出来ない」
体に疲れを覚えながら立ち上がり、着換えを始める。
「ヘル様!ヘル様!朝ですよって、もう起きていらっしゃる」
「おはよう。ティーア」
「は、はい。おはようございます」
「今日の予定は?」
「午前は、トール様と剣の稽古を・・・ヘル様…」
「どうした?」
「熱ですね!お熱があるんですね!」
持っていた瓶の水を溢しながら、ヘルのおでこを、手で押さえる。
「風邪か~」
確かに、疲れが取れてないし、熱があるのかもしれない。
「そうですよね。朝と勉強が嫌いなヘル様が、積極的に動くわけ無いですよ」
「ティーア。それではまるで、僕が駄目なやつみたいな…」
「はい。そうですけど?」
グサッ。
「今日から、人に誇れる人間を目指すよ」
「駄目です。お熱がある病人は、寝ていて下さい」
着換えを済ませたヘルを、再びベットに寝かせた。
「は~い」
素直に返事をして、ベットに潜り込む。
夢を見た。
魔法を自由自在に使う夢。
夢の記憶を辿り、再現してみる。
「ファイヤー」
ボーーー。
手のひらから吹き出した炎は、火柱を成し、天井に丸い焦げ跡を付けた。
「・・・使えた。やったー!魔法、使えた」
火を出した手を、期待の眼差しで見つめる。
「トール兄様で、実験して来よう~」
ティーアが見張る扉は使わず、バルコニーの柱を伝って、静かに部屋を抜け出した。
城の兵士が集まる、訓練場を訪れる。
「トール兄様!」
「おお、ヘルか。ティーアが、『今日は休み』と言っていたが?」
「はい。今日は稽古ではなく、相談が…」
「おう。この兄が、何でも答えてやる」
「何でも…だね!」
木刀を持たせ、ヘルの前に立たせる。
「僕が、魔法を放つので、相殺して消して下さい」
「そんな事でいいのか?分かった、何時でも始めてくれ」
まずは、夢に出てきた水と風の魔法を…
両手を前に突き出し、夢の記憶を再現する。
「ウォーター」
「ウィンドエアー」
ヘルの放った魔法が、トールに襲い掛かる。
「強化魔法・レベルアップ」
サッーー。
ヘルの放った魔法は、トールを通過すると、消え去ってしまった。
「こんなものか。もっと、骨のある魔法を撃って来い!」
部屋で使った火の魔法よりも、威力が弱かった。
何が違ったんだろう…もう一度、使えば分かるかな?
「ファイヤー」
手のひらから、炎を放つ。
「あ、あれ?」
しかし、部屋の時よりも威力が高く、コントロールが出来ず、炎はあらぬ方向へ飛んで行く。
「わあわあ、危ない!」
炎は、離れて訓練をしていた兵士に向けて、飛んで行く。
「エンチャント」
飛んで行く炎を、追いかける。
「ふん!」
ドン!
トールが放った、地面が抉れるほどの斬撃によって、ヘルの放った炎は消え去った。
「なかなか、良い魔法だったぞ!」
「制御が出来るようにならないと、実践では使えないがな」
「ごめんなさい。トール兄様」
危なかった~剣王の称号を持つトール兄様を、実験相手に選んでおいて良かった…
「良し!日も昇ったし、食事にしよう」
考えて事をしながら、廊下を歩き、トール兄様の部屋へ向かう。
突然、魔法が使えるようになったのは、【???】スキルが関係していると思う。
昨日の出来事で、変わったことと言えば…書庫で本を読んだこと。
でも、中身は、理解していない。
僕のスキルは、見ただけで何でも魔法が使える能力…とか?
「ふふふ。そんなスキル、この世界ではチートじゃないか」
笑みを浮かべた悪い顔で、廊下を歩く。
「あっこれは、これは、王女様。本日も、大変お綺麗で…」
「きもい!黙れ」
廊下の端から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「あれは、リタ姉様と・・・誰だっけ?」
「ちっ。覚えてろ…」
悪巧みの笑みを浮かべる、アルバート。
「思い出した!あの男だ!」
「ヘル?」




