26話 只者は、徒者だ
兵士に連れられ、薄暗い廊下を歩く、二人。
重い手枷を付けられたランベイルは、顔を隠すように、下を向いている。
「王子に、この様な仕打ちを強要するとは、許せん!」
やり場のない怒りで、手枷を引き千切ろうとする、ランベイル。
手枷を付けられているのは、ランベイル叔父さん”だけ”なんだけど・・・
「ね、ねぇ、メルウィスって、何者なの?」
首を傾げたランベイルが、難しい表情で、話し始める。
「彼は…王の命を受け、貴族や、騎士の、不正を調べる役職です」
「王に命…凄い人だ」
思っていたよりも、王に近い人物だった
偽太陽の件を、王に報告するなんて、嘘だと思っていたけど…
でも、そんな偉い人が、なんで僕たちと取引を?
「しかしながら彼は、貴族の称号も、騎士の称号も、持っていません」
「ですから、ルイ様や、他の王族方は、彼と面識が無いはずです」
「いいんですよ。称号が無くても、凄いんですから!メルウィスさんは」
先頭を歩く兵士が、話に割って入る。
やっぱり、牢屋に居た門番の兵士は、メルウィスの下僕だったんだな~
噓の証言をさせたのは、ランベイルを誘拐して、訓練場に誘い出すための罠
「ねぇねぇ、どこに向かっているの?」
「あ~ヘル様は、質問が多い子供ですね」
歩きながらくるりと回転し、膝下のヘルに、疑惑の目を向ける。
「あ、はははは。色々と、気になるお年頃で…」
陽気な性格なのに、勘が鋭い
意外だけど、メルウィスに重宝されている人物なのかも
「まぁ僕も、牢屋に連れて行けとしか、聞かされていないんっすよね~」
気のせいかも…
牢屋ってことは、ランベイルが居た所に、戻るのかな?
「何で?」
「あ、着いたんで、少し囚人らしくしてもらえますかね?」
反転すると、表情を変え、真面目な兵士に成り代わる。
「…交代だ」
「え!いや、今、就いたばかりで・・・」
眉をひそめ、見張りの兵士に、無言の圧をかける。
「・・・交代?」
「は、はい!分かりました!」
手に持っていた槍を差し出し、逃げる様に去って行く、兵士。
「・・・では、お二人、牢の中へ」
いつもの笑顔に戻り、ヘルとランベイルを、牢に入るよう促す。
やっぱり、徒者では無いな~
「…うん」
「ランベイル様は、入口に背を向けて座り、ルイ様は、魔法でランベイル様の影の中へと隠れて…」
「え⁈」
「何か、問題が?」
「う、ううん。何でもないよ」
先日覚えたばかりの影の魔法のことを、何で、知っていたんだろう…
牢の扉を閉め、門番の位置に就く、兵士。
「ランベイル叔父さん。ここって、前の牢屋とは、別の場所だよね?」
ランベイルの影から、こっそりと顔を出し、小さな声で訪ねる。
「ここは、重罪を犯した者や、王宮内で罪を犯した者が、司法官の裁きを待つ場所です」
「貴族を捕らえる事が多い為、王族意外の立ち入りは、禁止されているが…」
廊下駆ける足音が、牢内に響く。
「静かに!誰か来ましたよ」
廊下の方を覗こうとしたヘルを、無理矢理、影の中に押し込んだ。




