24話 最後まで聞いて・・・
「はい?父は、囚われの身のはずですが…」
ヘルの宣言に、首を傾げる、オネット。
「あ、いや~その・・・」
あ!
王を毒殺しようとした、叔父さんの…
どうしよう…叔父さんの逃亡を、息子に伝えていいのかな?
息子を巻き込んだら、あとで、叔父さんに怒られるかも
でも、独り言だったと、勘違いされたくないし…
「たぶん…影の声だよ」
自分の影から顔を背け、中に居るであろうクラストを指差す。
「なぜ⁉」
「影⁇」
近づいて来たオネットが、ヘルの影を見つめ、場に沈黙が流れる。
「・・・私は、王直属の騎士、シャーデン・クラストだ」
痺れを切らしたクラストが、影からゆっくりと姿を現す。
ヘルの言葉に、半信半疑だったオネットは、驚き、影から後退る。
「陰の中から、人が…」
鋭い目つきで、小刀を構える、クラスト。
「本来、私の存在を知った者は、抹殺する決まりなのだが…」
「ま、待って!この人は…」
「状況が、状況だ。ヘル様のお顔に免じて、抹殺は無しとする」
「あ、ありがとうございます?」
「良かった。これで…」
「しかし!」
「国家の秘密を知った者を、野放しにする事は出来ない」
「よって、貴様には、私の部下になってもらう」
小刀をしまい、睨み顔をやめた。
「それって、護衛が増え…」
「それは…王族様に仕える仕事ができると?」
「そうだ。正直、今、死んだ方が楽だと思うが…」
「やります!是非とも、やらしてください!」
仕事の文句を言い始めたクラストに、喜びの眼差しで詰め寄る、オネット
「そ、そうか…やる気があって何よりだ⁇」
「では、事の詳細を…ヘル様?」
視線を先には、下を向き、明らかに落胆した顔のヘルが…
「うん。続けて…」
勝手に顔を使われて、勝手に部下を増やされた
言葉を遮られ、会話にも入れてもらえず…
最終的には、二人だけで話を進めていた
英雄なのに…悲しいな~
「音も無く、忽然と姿を消したと、見張りの兵士が証言していますが…」
「牢内には、真新しい斬撃の傷跡がありました」
「見張りの兵士が、嘘をついていると?」
「買収…あるいは、計画に関わった兵士かと」
「面会記録を盗み見たところ、オーウェン・ランスが、最後の面会者でした」
「私は、この人物が連れ去ったと、考えています」
「そ、そうなんだ…」
言えない。
修練をさぼって、牢屋に忍び込んだなんて!
あれ?
あの人が出て行った後、ランベイルと会話をしたような…していないような
「犯行に使われた絵画は、差出不明の献上品でした…が」
「絵画を運び込んだ商人を見つけ出し、依頼者の名を吐かせたところ…」
「こちらにも、オーウェン・ランスの名前がありました!」
「ヘル様…真犯人は、オーウェン・ランスですかね?」
「う、うん。そうだと思う…」
執事とオーウェンの会話を、盗み聞きしたから、知ってたなんて…言えない
二人の調査を、無駄にすることになる
でも、二人はまだ、半信半疑みたいだし…伝えたほうが良いよね
「えっと、あの~」
恐る恐る、口を開く。
「でも、証拠がありません!」
ぼそぼそと喋り出したヘルの声を、オネットの悔し声が、かき消す。
「…私は、オーウェンの身辺の情報を、もう一度、探ります」
「ヘル様は、部屋にお戻りください」
「私も、搬入に関わった兵士を探して来ますね!」
それぞれの方向へと去って行く、二人。
「あ、ちょっと…」
また、無視された・・・




