21話 嘘の流れに身を任せ
「ヘル様…恍けたフリまでして、まだ、何か隠していることが?」
ヘルの両肩を鷲掴みにして、期待の眼差しを向ける、クラスト。
「い、いや~」
隠している?何を⁈
絵画なんて触って…あ!
物置部屋にあった、置物だったとしたら、心当たりが…
あの部屋に置いてあった、不気味な絵画のことかな?
過去の記憶を呼び覚ますヘルの体を、応えを急かすクラストが揺さぶる。
「無礼だぞ、クラストよ!」
二人に間に割って入った王が、鷲掴みするクラストの手を、払いのける。
「仕方ない。代わりに、私が、話す…」
「ヘルは、”フレーゼル様の生まれ変わり”なのだ」
「は⁉」
「はい?」
フレーゼル・リッシュは、この国を創設した、初代の王で、僕のご先祖様。
話で聞いた程度で、会ったこと無いし、興味も無かった。
”生まれ変わり”は、転生者だし、間違ってはいないけど…
流石に、実在した人間を演じることは、出来ないよ。
「ち、父上。僕は…」
「そうか!ヘル様は、初代王の、生まれ変わりだったのか」
これまでのヘルの行動を思い出し、納得した表情を見せる、クラスト。
話しを遮れたヘルは、苦笑いで返すことしか出来なかった。
「あはは…」
どうしよう、引くに引けなくなった。
誰も会ったことが無い人物だし、それっぽく演じれば、誤魔化せるか~
神様だったり、ご先祖様だったり、忙しいけど…大丈夫かな?
~その場の空気に身を任せたヘルは、”転生者フレーゼル”の肩書きを得た~
「ヘル…いや、ヘル様。
どうか、ランベイルを助ける策を、我々にお与え下さい」
ヘルの手を握り、頭を下げ懇願する、王。
「策と、言われても…」
勘違いを続ける王の態度に、困る、ヘル。
「力が必要でしたら、クラストに教えます」
「ヘル様、何なりとお申し付けください。
私に出来ることでしたら、何でもご協力致します」
王の話を、完全に信じ込んだクラストが、王とヘルに跪き、忠誠を示す。
「クラスト、あの魔法を、教えてはどうだ?」
「はい。私の一族に伝わる、秘伝の技をお教えします」
「え!」
自信が無く、遠慮する姿を見せていたヘルが、”秘伝の魔法”という言葉にを食いつく。
秘伝の魔法!
一族の秘伝を、そんなあっさりと…
でも、使ってみたい!
フレーゼルと勘違いされて、戸惑ったけど、嘘ついて良いこともあるんだ。
ご先祖様って、本当に凄い人だったんだ~
「教えて…くれる?」
「きっと、ヘル様の役に立つはず!」




