17話 計りたい!
後日~
扉の前で、支度をするヘルを待つ、クラスト。
今日から、ランベイルが、ヘル様の教育係となった。
やはり、ランベイルの影響力は、計り知れない。
「行ってきま~す」
「はい。お供します」
ヘルに付き添い、ランベイルの部屋へと向かう。
扉の前には、腕いっぱいに本を抱えたランベイルが、立って居た。
「ああ、早かったな。悪いが、扉を開けるの手伝ってくれないか」
「…子供だから、背が届かないな~」
あの本の山は、見せかけだな。
私を部屋の前に待機させておき、窓から二人で抜け出すつもり…
「では、私が」
ランベイルに招かれ、部屋に入る、クラスト。
「その机に、本を置いてくれ」
「はい。失礼いたします」
まあ、外で何か起きようと、私の責任では無いし、ここは策に乗ってやろう。
ガチャ。
「は?」
机に本を置いたクラストが振り返ると、扉が閉まり、鍵を掛けられていた。
私を部屋に閉じ込めた?
しかし部屋には窓が…
まさか、窓が開かない様に細工を!
クラストは、机の奥にある窓を開く。
「開いた?」
もしや、これは…
私も働けという、ヘル様からのメッセージ!
「私の正体も、見破っておられたとは…天才様は、計り知れないな」
ヘルの望み通り?窓から外へ出て、魔法で会話を盗み聞く、クラスト。
「おい、聞いたか」
「何をだよ?」
「王女暗殺を謀った、アルバート家の話だよ」
「息子の不祥事で、一族皆殺しだってな」
「勿体ないよな。せっかく、騎士の時代が、巡って来たのに」
「やはり、騎士派に権力が集中しているせいで、勘違いを…」
「この国は、王のものだというのに!」
「ははは、あははは」
笑い声が聞こえ、警戒するクラストは、物陰に身を隠す。
「あれは…」
ピカッ。
突然、天を降らす曇り空が輝くる。
クラストが驚き見上げた空には、大きな光の球体が、王宮を照らしていた。
「何だ、あれは・・・いや、王が危ない!」
空を見上げる人々を避け、玉座へと走る、クラスト。
「王様!」
勢いよく扉を開け、部屋に入るが、王の姿は無い。
「執務室か…」
再び走り出し、書類が蔓延る王の自室へと向かう。
「王様、ご無事ですか!」
掃除をしていた執事と共に、窓を見ていた王が、クラストの声に振り返る。
「ああ…クラストか。あれは、何だ?」
「私にも分かりません。王の身の周りで、何か変わったことが?」
「いや、何も無いぞ」
一度、息を吐き、心を落ち着かせる、二人。
「ヘルの護衛は、どうした?」
「ラ、ランベイル様が、護衛を…」
不測の事態に、思わず急いで来たが、ミスだったな…
おそらく、ヘル様は、部屋に居ない。
今、王を、ランベイルの所へ行かせてはいけない!
「王。素敵なお部屋ですね…」
「あ、ああ。今丁度、模様替え中でな…」
散らかった部屋の片付けを、模様替えだと誤魔化す、王。
部屋を見渡したクラストは、手形が付いた絵画に、目をつけた。




