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操り人形の王  作者: 真知コまち


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16/20

16話 影


私の名前は、シャーデン・クラスト

 表向きは、末の王子の護衛。

 実際は、王を影で支える、王宮の騎士だ。

 5年前の反乱で、一族は、皆、殺された。

唯一の生き残った私は、二度とあの悲劇が繰り返されないよう、王宮で働く者を監視している。

 しかし、私が守る王宮で、貴族が事件を起してしまった…


 「クラストよ。我が子が、命を狙われたとは、どういう事だ!」


「申し訳ございません。別の件で…」

 「言い訳など必要ない。今日で、貴様の任は、解かれた」


「お待ちください!私には、王を守る使命が…」


 「余の代わりに、王族わがこを守る。それが、貴様の使命となる」


「…承りました」


翌日~

 扉の前に立つクラストは、王子(ヘル)護衛の任に就いていた。


 王子の護衛?冗談じゃない。

 騎士派の連中に、怪しい動きあったことは、調べがついていた。

 後は、誰が何をしようとしていたかを、暴くだけだったのに!


 私より先に、王子が気づいたと言うのか?

 王子(ヘル)様とは、いったい何者…


 「ねえねえ。お菓子が食べたいな~」

  扉に立つクラストを、じっと見つめるヘルが呟く。


 お菓子…何かの隠語(メッセージ)か?

「申し訳ございませんが、ヘル様を離れる行動は、許されていません」


 不機嫌そうな顔で、目線を逸らす、ヘル。


「・・・」

 分からない。

 本当に、お菓子が欲しかっただけ…いや、常識に捉われるな!

 あれは、唯の子供じゃない。

 侍女には頼らず、着替えから食事まで、一人で出来ている。

 5歳児とは思えない生活力…天才おとなだ!

 

 「ねぇねぇ。オスラ叔父さんの所に、行きたいんだけど…」


 ランベイル・オスラ…5年前、身内を切り殺し、王に忠誠を示した貴族か。

 今では、王の忠臣として名高く、悪い噂も出てこない。

 今から会っても、問題も無い人物だろう。

「分かりました。お供します」


 ランベイル・オスラの元へ向かう二人。


 「私は、扉の前で待機していますので、何かあれば、お声がけください」

  今は、少しでもヘル様の情報が欲しい。

  私が部屋に居ないほうが、素の会話を盗み聞ける。


「うん。ありがとう」

 ヘルは、嬉しそうな顔で、部屋に入って行った。


 壁に耳を当てる、クラスト。


「サイレントボイス」

 壁越しの小さな声を、聞き取る魔法。

 この魔法は、私の一族しか使えない。

 魔法の存在自体、もう私と王以外、知る者はいないが…


 「王宮騎士が王子を殺そうとしたり、既婚者なのに女性と密会してたり、苦労が尽きないよね~」


  「そう。そう。妻子持ちは周知の事実、『それでも、貴方が好きなんです』と、言われてもな…って、お前!」


 どうやら、ヘル様は、叔父ランベイルと仲が良いようだ。

 ランベイル・オスラが、不倫をしていたとは…

 ヘル様は、どこからそんな情報を?


 「僕に張り付いている騎士を、叔父さんの権限で、剝がしてくれない?」


 私に、情報の出処を明かしたく無い。

 だから、ランベイルの力で、私を引き離そうと…


  「そう言えば、王がそんな命令を下していたな…待て!」


 声が聞こえない?

 会話が終わったか、魔法を無効化した…いや、こちらに来ている!


 クラストは、扉から離れ、元の位置へ戻る。


  「・・・聞いていたか」

   扉を開けたランベイルから問い詰められる。


「い、いえ。私は、何も…」


  「・・・そうか」

   クラストを睨みながら扉を閉める、ランベイル。


「今は、あまり深追いしないほうが、良い…か」

 ランベイルなら、私を切り殺し、護衛を交代させることも可能だ。

 ヘル様の護衛をしながらでも、王は、お守り出来る。

 上手くいけば、元に…

 

「ヘル様には、私の情報源ちからになってもらう」

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