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操り人形の王  作者: 真知コまち


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15/20

15話 真実は、最後まで分からない


 「ぼ、僕には、王と同じ茶葉など、畏れ多くて頂けません…」


 顔を見合わせる、ヘルとランベイル。


「叔父さん。もう、僕から飲んでも、構わないよね?」

 

  「ああ。客人が、出されたお茶を飲まないなら、仕方が無い」

 「え!」

  「ただ今、お注ぎします」

   ヘルのカップに、お茶が注がれる。

 

  どうする?

  このまま飲ませたら、毒で間違いなく死ぬ。

  そうなれば、お茶を用意した父が…

 「父上!私がお注ぎしますよ」


  「何を言い出す?客人に注がせるわけ無いだろ」


  その通りだ!

  今、僕は客人。

  僕が、このおちゃを飲む以外、この場を切り抜ける術は無い。

 「お、お待ちください。私が、先に頂きます」

 

  「飲めないと言ったのは、お前だろ?無理をするな」


 「いえ。頂きます」

  カップを持ち上げるオネットの手は、恐怖で震えている。


「もういいよ。頂戴!」

 テーブルに身を乗り出したヘルは、オネットが手に持つカップを握り、口を付けた。


 「やめろ!」

  ヘルの手を払い除け、カップを手放す。


 パリンッ。


 落ちたカップが割れ、お茶が飛び散る。


 「あ、あ~驚いて、落としてしまいました」

 「王と同じお茶が飲める、貴重な機会だったのに…」

  白々しい演技で、難を逃れた喜びを隠す、オネット。


「もう十分でしょ。可哀想だよ…」

  「そうですね…」


 「え?」


   テーブルに置いてある、茶葉の箱を手に取る。

  「これに毒を入れたのは、お前だな!」


 「・・・」

  黙り込む、オネット。


  「答えないか!この馬鹿息子!」


 「僕が…入れました」

  絶望の表情で、下を向く、オネット。


  「毒を入れたと、認めるんだな?」


 「はい。僕が、毒を入れました」

  終わった。

  このまま、捕まっても、処刑されるだけだな~

  せめて、父上の名誉は…

  

 唐突に席を立ったオネットは、ルイのカップを手に取り、注がれたお茶を飲み干した。

 目を閉じ、毒が体に回る痛みを、待つ。


「死ねないよ」

 新たなカップに、お茶を注ぐ、ヘル。

  

 「…僕を、騙したんですか」


  「茶葉も箱も、すり替えてはいない。おまえが、毒を入れた茶箱だ」


 「だったら、どうして…」


「あの花には、毒が無いよ。”花”と”葉”にはね」

 注いだお茶を飲み、味を楽しむ。


 「じゃあ、僕は、何をして・・・」


「毒は、無かったから、毒殺未遂には、ならない。良かったね、叔父さん」


 崩れ落ち、泣きながら、地面に頭を付けるランベイル。


 「父上…ごめんなさい」

  父の姿を見て泣き出したオネットは、父に向かい頭を下げた。


 窓際で、外を見ながらお茶を飲む、ヘル。

 「ヘル様!」


 ヘルの護衛騎士が、ノックもせず、部屋に入って来る。

「・・・な~に~?」


 「至急、王の元へ」


  「王の身に何かあったのか⁉」


 「ランベイル様も、お願いします」


 訳も分からず、王の待つ部屋へ急ぐ、三人。


「お待ちください」

 王宮を警備する兵士が、三人を止める。


 「どけ!急いでいるんだ」


「お二人は、結構です。ですが…」

「ランベイル・オスラ!貴様を拘束する」

 兵士が、ランベイルを抑えつける。


  「何をする!やめろ」


 「・・・ヘル様。行きましょう」

「でも…」

 ヘルは、ランベイルを置いて、王の元へ急いだ。

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