14話 身から出た錆
王の兵士に連行される、オネットの上司。
「貴様が横領をしていると、告発があった」
「な、何かの間違いですよ…」
「記録を調べれば、分かることだ。連れていけ!」
証拠は出る。
記録を改ざんしていた事は、あの時、確認した。
騎士上がりの役人を、王が捕まえる。
これで、役者は揃った。
後は、王が毒を飲むだけ…
「オスラ叔父さん!」
後ろから走って来た子供に、服を引っ張られる、オネット。
「や、やめてください。突然、何なんですか!」
「オスラ叔父さんを…あれ?」
「叔父?ああ、父をお捜しですか。僕は、息子です」
人違い?
僕と父を見間違うほど、父と親しい人物で、王宮を自由に動ける…
この子供は…末の王子か?
膝を曲げ目線を合わせたオネットと、無言で見つめ合うヘル。
この空気、どこかで…
「ねぇ。兵舎で、僕と会ったよね?」
…ドキ!
驚いたオネットは、咄嗟に顔を伏せる。
思い出した。
こいつは、毒草を取っている時に、声を掛けてきた子供だ。
毒草を取る姿を、王子に見られていた!
落ち着け、
王子とは言え、子供の発言に、信憑性は無い。
だが、
もしも、あの時の事を、父に報告されているとしたら…
父は、僕を疑う⁉
「…いいえ。それは、兄です」
顔を上げたオネットが、嘘をつく。
「兄?へー、お兄様がいるんだ。僕と同じだね」
「はい。同じですね」
所詮、子供の記憶。
矛盾が一つでもあれば、信憑性は無くなる。
あの時見た人物が、僕では無いと信じ込ませれば、問題無い。
「兄ではなく、僕と一緒に、父を捜しませんか」
「うん、いいよ。付いて来て!」
ヘルは、兵舎やキッチンを通った後、ランベイルと合流した。
「ヘル様!どこへ行って居られたのですか」
ティーセットをテーブルに運ぶ、ランベイル。
「消えた叔父さんを、捜してた~」
怒るランベイルを無視して、椅子に座る。
「父上、お怒りにならないで下さい」
「初めて会った私に、城を案内してあげようと、気遣ってくれたのです」
「そうか…お前も座りなさい」
「これから、テーブルマナーを教えるから、客人になってくれ」
「はい」
席に着いたオネットに、お茶を淹れるランベイル。
「今日は、特別な茶葉を貰ってきた」
「どの様な茶葉です?」
「王様が毎日お飲みになる、王専用の茶葉を、特別に使わせて貰った」
「え・・・」
思いがけない回答に、オネットの背筋が凍る。
ランベイルは、オネットの目の前に、お茶の注がれたカップを置く。
「叔父さん、僕は?」
机に身を乗り出し、ティーポットを覗き込む。
「待ちなさい。客人が、先に頂くのがマナーだ!」
手を震わせたオネットに、詰め寄るヘル。
「早く、飲んでよ。だって、客人から飲む”決まり”なんだから」
恐る恐る、お茶が注がれたカップを持ち上げる、オネット。
「お客様、どうぞお召し上がりください」




