13話 偶然の出会い
昼食の後、王は毎日、決まったお菓子と決まった紅茶を、口にする。
この情報は、食材を運ぶ際、僕が見聞きした情報だから間違いない。
怪しまれないよう、食材を持ったオネットが、キッチンに入る。
保管庫に食材を置き、棚に並べられた茶葉の箱に、近づく。
多いな。名前は、分かっているから、問題ないが・・・
「…あった!これだ」
上段に置かれた箱を一つ取り、中を確認する、オネット。
「赤い茶葉…間違いない」
オネットは、懐から、乾燥した葉っぱを取り出す。
茶葉の中に、葉っぱを忍ばせ、箱を棚に戻した。
「オネット」
名前を呼ばれ、後ろを振り返る。
「父上・・・どうされましたか」
見られた?
それ以外、声を掛けた理由が…
「いや、ヘル様と会う予定で、ここを通っただけだが…」
「…そうですか。では、仕事が残っていますので」
父を押し退け、キッチンを出る。
偶然、通っただけ。見られてはいなかった。
僕が考えた計画に、支障は無い。
父が居たのは、事故…だよな?
雑念は、ミスに繋がる。
今は、きっかけを、発見させる事だけを考えろ。
オネットは、廊下を走り、自宅へと向かった。
「ヘル様。持って来ましたよ」
「遅いよ~叔父さん。早く!早く」
部屋に入って来たランベイルは、一冊の本を机に置く。
「『教会に置いてある植物の本を、持って来てほしい』と言われたが…」
「この本で、よかったのか」
ランベイルの話を、無視する、ヘル。
「大変だったんだぞ~教会には、何冊も植物の本が…」
「あった!」
開いたページには、兵舎で見た”毒草”が、載っていた。
「この花が、どうしたんだ?」
「一人の兵士が、刈り取っていたんだ」
「良い兵士だな。進んで、草刈りをするなんて」
「根っこまで引き抜いていたら、そう思っただろうね…」
ヘルは、花の説明文に、指を差す。
「・・・毒草⁉」
「誰だったんだ、その兵士は!」
当時の記憶を辿り、顔を思い浮かべる。
「・・・あれ?叔父さんの息子って、兵士だった?」
「いや、備品の補充などをしているが…いや!そんなに事は…」
先程の出来事を、思い出す。
「馬鹿な・・・」
「心当たりが、あるんだね…」
扉を勢いよく開き、外へ飛び出そうとする、ランベイル。
「待って!」
「止めるな!オネットでは無くとも、被害が出る前に、止めなくてはならん」
「多分…被害者は、出ないと思うよ」




