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操り人形の王  作者: 真知コまち


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12/20

12話 原因は分かっている


 昨日、訓練場で第二の太陽を生み出したヘルとオスラは、部屋でおとなしく、古い本を読んでいる。


 光り輝く球体の調査を、王から命じられていたオスラは、日夜の労働で、今にも寝落ちしそうだ。


 「あ~何処にも載ってないぞ?」


「駄目だ~疲れた…」


 異常な大きさになった球体の原因を探るため、王宮にある書物一つ一つを、朝から読み漁っていた二人の脳は、限界を迎えていた。


「やっぱり、スキルが原因なのかな~」


 「スキルか。ヘルのスキルは…いや、答えんで良い」


 この世界で、他人にスキルを教えることは、タブーとされている。

 スキルについて尋ねる行為は、着けている下着の色を尋ねる行為と、等しいぐらいだ。

 スキルが解らない人間にとって、この常識は、ありがたい事だ。


「ちょっとだけ、外の空気を浴びて来るよ」

 

 『外では遊ぶ年頃だろ』と言えない程、疲れていたオスラは、ヘルに手を振り、眠りに就いた。



 廊下を歩き、考え事をする、ヘル。


 原因は、【???(スキル)】で間違いない!


 問題は、どのような能力であるかだ。

 魔法を増幅させるスキル?

 でも、教会で使った風の魔法は、変化がなかった。

 スキルの発動には、何か条件が…


 謎が解けないヘルは、トールの居座る、兵舎を訪ねた。


 宴後のテーブルに、大の字で寝転ぶ、トール。


「トール兄様…()()ですか」


 兄様は、酒癖の悪さから、街の酒場を出禁になり、兵舎で酒を飲んでいる。

 稽古を受ける兵士達は、誰も兄様に逆らえない。


「トール兄様。起きてください」


 「ぐがぁ~~~」


 いびきを搔く兄様は、一時間以上、寝ないと起きない。


 起こすことを諦めたヘルは、外を歩き時間を潰す。 


 近くでは、昨日トールに付き合わされたであろう兵士が、走り込みをさせられていた。

「二日酔いで、ランニング…騎士には、成りたくないな~」


 その横には、花を剣で切り取っている兵士がいた。


 どうして、鋏を使わないのかな?

 まさか、兄様の誘いを断ったから…


妄想~

  「何?俺と酒が飲めないだと…」

   テーブルに乗り上がる、トール。

  「貴様は、草刈りでもしてろ!」


 心配になったヘルが、兵士に近づく。

「ねぇねぇ。あっちで、皆、訓練してるよ。行かないの?」


 「僕は、人より体力が無いから、別の訓練なんだ」

 

 胸を撫でおろし、一息つく、ヘル。

 なんだ~そうだったのか~

 良かった。兄様が原因じゃなくて!


しばらくの間、無言で見つめ合う、二人・・・


 え⁉

 なんで、見つめてくるの?

 言えないだけで、本当は、兄様に!

 

 「そ、そろそろ戻らないと。僕は、失礼するよ」

  手を振り、その場を去る、兵士。


「ばいばい。また会おうね~」


 手を振り返し、兵士と別れた後、座り込み、茎の断面を見つめる。


 今、逃げる様に、去って行った。

 これって、そういう事だよね?

 あの兄様が、そんな…


「あれ?この花…どこかで!」


 刈り残された花を見て、ヘルは、毒草であると気づいた。

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