12話 原因は分かっている
昨日、訓練場で第二の太陽を生み出したヘルとオスラは、部屋でおとなしく、古い本を読んでいる。
光り輝く球体の調査を、王から命じられていたオスラは、日夜の労働で、今にも寝落ちしそうだ。
「あ~何処にも載ってないぞ?」
「駄目だ~疲れた…」
異常な大きさになった球体の原因を探るため、王宮にある書物一つ一つを、朝から読み漁っていた二人の脳は、限界を迎えていた。
「やっぱり、スキルが原因なのかな~」
「スキルか。ヘルのスキルは…いや、答えんで良い」
この世界で、他人にスキルを教えることは、タブーとされている。
スキルについて尋ねる行為は、着けている下着の色を尋ねる行為と、等しいぐらいだ。
スキルが解らない人間にとって、この常識は、ありがたい事だ。
「ちょっとだけ、外の空気を浴びて来るよ」
『外では遊ぶ年頃だろ』と言えない程、疲れていたオスラは、ヘルに手を振り、眠りに就いた。
廊下を歩き、考え事をする、ヘル。
原因は、【???】で間違いない!
問題は、どのような能力であるかだ。
魔法を増幅させるスキル?
でも、教会で使った風の魔法は、変化がなかった。
スキルの発動には、何か条件が…
謎が解けないヘルは、トールの居座る、兵舎を訪ねた。
宴後のテーブルに、大の字で寝転ぶ、トール。
「トール兄様…またですか」
兄様は、酒癖の悪さから、街の酒場を出禁になり、兵舎で酒を飲んでいる。
稽古を受ける兵士達は、誰も兄様に逆らえない。
「トール兄様。起きてください」
「ぐがぁ~~~」
いびきを搔く兄様は、一時間以上、寝ないと起きない。
起こすことを諦めたヘルは、外を歩き時間を潰す。
近くでは、昨日トールに付き合わされたであろう兵士が、走り込みをさせられていた。
「二日酔いで、ランニング…騎士には、成りたくないな~」
その横には、花を剣で切り取っている兵士がいた。
どうして、鋏を使わないのかな?
まさか、兄様の誘いを断ったから…
妄想~
「何?俺と酒が飲めないだと…」
テーブルに乗り上がる、トール。
「貴様は、草刈りでもしてろ!」
心配になったヘルが、兵士に近づく。
「ねぇねぇ。あっちで、皆、訓練してるよ。行かないの?」
「僕は、人より体力が無いから、別の訓練なんだ」
胸を撫でおろし、一息つく、ヘル。
なんだ~そうだったのか~
良かった。兄様が原因じゃなくて!
しばらくの間、無言で見つめ合う、二人・・・
え⁉
なんで、見つめてくるの?
言えないだけで、本当は、兄様に!
「そ、そろそろ戻らないと。僕は、失礼するよ」
手を振り、その場を去る、兵士。
「ばいばい。また会おうね~」
手を振り返し、兵士と別れた後、座り込み、茎の断面を見つめる。
今、逃げる様に、去って行った。
これって、そういう事だよね?
あの兄様が、そんな…
「あれ?この花…どこかで!」
刈り残された花を見て、ヘルは、毒草であると気づいた。




