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操り人形の王  作者: 真知コまち


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10/20

10話 忘れた方が良い事もある


  「ヘル様。今日から、教師がオスラ様に替わりますね」

   花瓶に水を注ぐ、ティーア。


「そうだね。行ってきま~す」


  「え!まだ、朝食を食べて…もう、無い」

   

 朝食を残さず食べきったヘルは、オスラの元へと向かった。


 僕が、ちちに進言したら、すぐに替えてくれた。

  信頼されているな~オスラ叔父さんって…

  剣を振る以外、何を教えられるんだろう?


 まぁ、護衛から離れる建前であって、本当の教師になるわけじゃない

 この時間を利用して、魔法の訓練をするのが目的。

 オスラ叔父さんに、教えてもらうことは・・・

 

  腕いっぱいに抱えた本で見えなくなった鍵穴を、手探りで捜す、オスラ。

 「ああ、早かったな。悪いが、扉を開けるの手伝ってくれないか」


「…子供だから、背が届かないな~」


  「では、私が」

   ヘルの護衛騎士が、本を受け取る。


「座学の勉強もいいけど、実技の勉強がしたいな~」


  鍵を持つ手を止め、しばらく考えこむ。

 「・・・なるほど。それが、私を教師にしたわけですか」


  扉を開き、騎士を招き入れる。

 「その机に、本を置いてくれ」


  「はい。失礼いたします」


 オスラは、騎士が本を置くところを確認して、扉を閉め鍵を掛けた。


「・・・何してるの?」


 「騎士の監視を退けるため、監禁した」

 

 違う…違う…そうじゃなくて…

 騎士を扉の前に立たせている間、自分達が、部屋から抜け出すつもりだったんだけど?


「明日からは、どうするつもりなの?」


 「え…き、今日だけでは無いのか!」


 膝立ちで、放心状態となる、ヘル。

  間違えた。部屋に入ってから、伝えていれば…

  ちちに報告されたら、僕が、監禁生活だ。  


 「申し訳ない。私が責任を持って、騎士の口を…」


「死にたいの?叔父さん…」


 時間を巻き戻すことは出来ない。今は、今日のことだけ考えよう。


 

 過去のことは忘れることにした二人は、訓練場へ来ていた。


 「何を教えれば良いのだ?」


「取り敢えず、初級魔法と魔法コントロールの方法を、教えてほしいかな」


 「初級魔法は、室内の訓練場では危ないので使えませんな」

  小窓から、雨が降る外を見る。  


 「コントロールの訓練を兼ねて、天気魔法を使うのはいかがでしょう」


「天気魔法?」

 天候を自由に操れる魔法もあるのか~

 雨を降らせ、土砂崩れを起こしたり、霧を作り出して、前を見えなくしたり。

 色々な使い道が有りそうな魔法だ!


「天気魔法、使ってみたい!」

 

 「では、こちらへ」

  室内訓練場の入り口に移動する。


 「まずは、私がやって見せますので…」

   オスラは、奇妙な数字を唱え始める。

  すると、オスラの頭上に、光の球体が現れた。

 「サンクラウン」

  その言葉と共に、球体が輝き始め、オスラの周囲だけ雨が止んだ。


「え、それだけ?」

 期待外れ。雨に降られなくなるだけか~

 あまり、使う機会は無いかもしれないけど…

 一応、やって措こう。


 「頭の中で唱えられるようになれば、無詠唱で使うことも出来ますよ」

 「初めての場合は、これを、お読みください」

  数式の書いた紙を渡された。


「また、数式か~」

 数字以外、詠唱なんて出来ないよ!

 魔法を小さい頃から使っている、この世界では、常識なんだろうけど…

 どうしよう…王子なのに、こんな簡単なことも出来ないなんて言えない。


 「何か解らない所でも?」


「い、いや。大丈夫」


 「では、始めます。私に続けて、詠唱を」

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