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転生したら農村でしたが、何だかんだで幸せです〜ハネムーン編〜

作者: OniOni
掲載日:2025/06/15

 結婚式の翌朝。まだ朝日が昇りきらぬうちに、俺たちは村を出発した。


「荷物、これだけでいいの?」


「二泊三日だし、そんなに要らないよ。お土産は……トマトが持ってこいって言ってたけど」


『王都の空気を感じたい!』


「野菜連れてくわけにいかないだろ」


『せめてタネだけでも!』


 出発前からうるさい。だが、ちょっとだけ寂しい。



 目指すのは王都。馬車で半日。

 王都には観光地も市場も温泉も、なんでもある。畑以外ほぼ知らない俺には、未知の世界だ。


 それでも、隣にミーナがいるだけで、心は落ち着いていた。


「リュートさんって、王都初めてなんですよね?」


「うん。こっちは完全に観光客」


「じゃあ、わたしが案内しますね。昔、一度だけ来たことあるんです」


「心強い。……まさかハネムーンで俺が人に頼ることになるとは」


「えへへ。たまには、いいじゃないですか」



 王都に着くと、活気と人の多さに圧倒された。


 露店が並び、香辛料の匂い、鐘の音、にぎやかな叫び声。

 その中に、何か“違和感”を感じた。


 そして、市場の片隅で聞こえた。


『た、たすけてくれーっ!』


「……今、野菜の声が聞こえた」


「またですか!? ハネムーン中ですよ!」


「いやでも、助けを求めてたぞ?」



 声の主を探し、市場の裏通りをのぞくと――


 そこには、しおれたキャベツが山積みで捨てられていた。


『ここは……売れ残ったら、捨てられる場所……』


「……これ、収穫タイミングが悪かったんだな。水切りしてない。保存方法も雑だ」


「リュートさん……それって、わかるんですね」


「声で、なんとなく。農夫の勘と……野菜の嘆き、ってやつ」


 俺は、比較的状態のいいキャベツを数個買い取って、街の食堂に持ち込んだ。


「これでロールキャベツを作ってくれませんか? 絶対においしいです」


「なんだと? あんた素人か? ……いや、このキャベツ、香りが……!?」


 料理人の目が変わった。



 その夜、俺たちはその店でロールキャベツを食べた。


「うん、柔らかい……甘い……!」


「捨てられかけたキャベツとは思えない」


「リュートさんの手にかかると、野菜も喜びますね」


『マジで、今日生きててよかったわ……』


 キャベツの声を聞きながら、俺はほっと息をついた。


「ハネムーン中に野菜助けるとは思わなかったけど……後悔はしてない」


「うふふ。やっぱりリュートさんですね」


 そのとき、ミーナが俺の手を、そっと握ってくれた。



 翌日。


 街のハーブ園で、ミーナが一輪の“月香草”を手に取る。


「これ、村に植えませんか?」


「夜に香る花……銀葉花と相性いいかも」


「ええ。あの指輪も、夜になると光りますし……」


 照れくさそうに笑う彼女に、俺も自然と笑顔になった。


 王都での旅は、野菜に始まり、野菜に終わったけれど――


 それでも、俺たちの「新しい生活のはじまり」には、ぴったりだった。


 農夫だろうが、旅先だろうが、どこにいても――


 俺は、彼女と一緒に生きていく。

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― 新着の感想 ―
これシリーズ外なんか 王都編は王城には入ったけど王都歩き回れなかったんか?
この話だけシリーズからハブられとる……
王都編があるのに「王都はじめて」はおかしくない?
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