儀式、そして追放
「♪〜」
俺はズロ・ウィッシュ。ルビアス皇国の貴族の次男だ。
「おーいズローー!!」
「あ、ゲルワ」
俺のことをズロと呼ぶ筋肉隆々の大男はゲルワ・グリル。靴屋の息子で、俺の昔からの友達だ。
「俺を置いていくんじゃねえよ!俺がよく寝坊するの知ってんだろ!」
「ごめんごめん、忘れてた」
「ったく...ん?あそこにいるのはスロウじゃねえか。おーいスロウ〜!!!」
スロウと呼ばれた少女は小さく手を振ってこちらに近づいてきた。
スロウは俺の女友達だ。昔赤ちゃんの頃に教会の神父さんに拾われて、そこから教会の孤児院で育ったらしい。
「あら、2人ともちゃんと起きられたんだね」
スロウが冗談っぽく言うので、俺は
「いやいや、俺をこの脳筋バカと一緒にしないでよ」
「うるせぇ!」
パコーンとゲルワのげんこつが俺の頭頂部にささる。
「いってー!」
「ふん!」
「うふふふふ」
こんな感じで昔から3人仲良しだ。雑談をしながら歩いていると会場の王城についた。すると門番が話しかけてきた。
「君たち魔力の儀にやってきたのかい?」
俺が答えた
「はい、そうです」
門番は笑顔で
「そうかそうか俺もあの時はワクワクしたんだよなぁ...っと俺の昔話なんてどうでもいいか。あそこの列に並んで待つと良いよ」
そうして並んで儀式が始まるのを待っていると、周囲がざわつき出した、どうやら国王が会場にやってきたようだ。そして大臣らしき人物が口を開いた。
「えー、これより国王の希望により演説を行う。心して聞くように!!」
そうして王による演説が始まった。
「私はルビアス皇国15代国王ゼルギアス・ルビアスである。若き者よ!才能があるからといって、奢ることなかれ。その才能を生かすも腐らすも己の行動次第である。自分、家族、友人、そして祖国である我が国のため、存分に才覚を育ててくれ!!ルビアスよ永遠となれ!!!」
国王の演説が終わると同時に拍手喝采が起きた。すると先ほどの大臣が声をあげた。
「静粛に!!これより魔力の儀を行う!!列の前から5人ずつ交代で入ってもらう!!終わったら各自帰宅するもよし、見学も自由だ!」
続々と魔力を測られていく。あるものは仲間と喜び、あるものは無念の表情を浮かべながら会場を後にした。そして...
「よし、次のもの入れ!」
ついに俺たちの番になった。
「よっしゃ、俺の力見せてやるぜ」
ゲルワが拳同士を合わせて気合を入れている。別に喧嘩するわけではないんだけどなぁ...
「やっぱり緊張しちゃうなぁ」
スロウは緊張しているようだ。無理もない。この儀式を見に国中から人も集まっているのだ。
「よし、行こうか」
腹をくくっていこう。そう決めて前に歩いた。測定装置の前に経つと検査官が質問をしてきた。
「青年、身分と名を名乗れ」
「ウィッシュ家次男、ズロ・ウィッシュです」
そう名乗ると周りがざわついた。
「ウィッシュ...?」「あの勇者一行の一族か」
検査官もすこし驚いたようだが
「なるほどウィッシュ家の次男か、しかしこの検査では身分によって結果に違いはないからな。では測定をする。この水晶玉に手をかざせ」
俺は指示通りに手をかざした...が。
「...魔力0だ」
検査官がそう告げた。俺は信じられなかった。
「そんな、何かの間違いなんじゃ?」
おそるおそる検査官に聞くが。
「間違いない。0だ」
その瞬間会場がまたもやざわついた。
「ウィッシュ家の次男は魔力0?」「嘘でしょ!?」
「あの名門が?」
家の名前が大きいだけに周りからの冷たい目線が痛い。しかし横からの声で会場の空気は一変した
「魔力500!?」
スロウが魔力500という数値を出したようだ。魔力は300あると魔術師の素質があると言われている。500というのは大魔術師になる可能性も秘めているレベルだ。
「あ、え、そんな」
スロウはそんなに高い数字が出るとは思っていなかったようでパニックになっているようだ。会場もざわつく中、大臣が口を開いた。
「スロウ殿、後で国王よりお話がありますので、一人で残っていただけますかな?」
こうしてスロウを残して、ゲルワと2人で帰ることになった。王城を出たところでゲルワが喋りだした。
「俺は魔力100とかなのに、あいつすげーよな。多分ありゃなんか国にスカウトされるんじゃねえのか」
たしかに魔力500の人材となるとどこの国も喉から出るほど欲しいだろう。そうなる前に自国でスカウトしておくのは正攻法とも言える。
「そうだな、そうなると会える機会も減って寂しくなるよな」
「うーむ、そういえばズロはどうなんだよ。家のこととか」
正直考えたくなかったが、恐らく家の人間が見に来て、結果を即、父に報告されたのは間違いないだろう。
「あー、まあ何とかするよ。てか、結果なんてもうバレてるだろうしどうしようもないんだよな」
「それもそうか。貴族の家ってのも大変だなぁ。何かあったら俺に言ってくれよ」
内心不安でいっぱいだったので、こういう友人の言葉は助かる。
「ああ、その時は助けてもらうかも」
ゲルワと別れて家に帰ると、父であるラディウス・ウィッシュに呼び出された。そこには兄であるスタンディ・ウィッシュ、従者もみんな揃っていた。俺は一つ空いた父の真向かいの席に座った
「席についたな。早速だがズロ、お前はウィッシュ家より追放だ」
いきなりすぎて言葉が出てこない。数秒間の沈黙の後に俺は声を振り絞った
「そ、そんな!父さん追放だなんて!!!」
「お前は魔力の儀で魔力がないと判断された、そうだろう?」
「そ、それは...でも魔力がなくても!」
「我がウィッシュ家は魔王を討伐した勇者一行にも魔術師として加わった、代々魔術を重んじる一族だ。その中で魔力を持たぬ子供ができたとなれば、それはウィッシュ家の権威に関わる。よって追放だ」
「なんで...なんでそんな事言うんだよ!!!兄さんも何か言ってくれよ!!」
「...」
兄のスタンディに助けを求めたが、口を開いてくれかった。代わりに父が口を開けた。
「運が悪かったと思え、諦めろ」
「そんな...」
絶望に打ちひしがれていると、父が更に喋りだした。
「明日馬車を用意してやる。それに乗って他国にある我が家の別荘にでも...」
「そんなのいらないよ!!」
父の言葉を遮り、俺は勢いよく駆け出した。
「あっ、おい!!」
兄が引き止めようとしていたが関係ない。あそこにいたところで俺の追放は決まっているのだから。
「ちくしょう...なんで」
こんな家に生まれなければ、そう思いながら俺は夜の街を走り抜けたのであった。
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