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迎えに来て  作者: 小宵
8/11

番外編 俺のお姫様

 「カイル!!!」

 「!!」


 バァンッー!!


 「ドミー!!!」

 「いいから、行け!!」

 「でも・・・」

 「お前いなくなったら、シルヴィアどうすんだよ!!」

 「!」


 集落が燃えている。

 辺りには人々の叫び声と銃声が鳴り響いている。


 人間狩りだ。




 「誰がシルヴィア守んだよ!!行けぇーーー!!!!」

 「すまん!!」


 俺はそう言って、地面を蹴った。

 皆助けを求めて悲鳴を上げている。

 ハンター達は、逃げ惑う皆を追い詰めて笑っている。



 俺は急いだ。

 シルヴィアのもとに。


 あんな別れ方をしたのだから、今頃きっと不安に思っているに違いない。

 早く、シルヴィアを抱きしめて、安心させてやりたい。



 シルヴィア。俺の小さな可愛いお姫様。

 もう直ぐ迎えに行く。

 もう少しだけ、待っていてくれ。











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





 産まれてきた俺の妹はまさに、天使と呼ぶに相応しい女の子だった。

 俺は産まれてきた歳の離れた妹にメロメロだった。


 でも、両親は違った。

 妹を見た瞬間、絶望した。

 そして、言うのだ。


 この子が可哀想でしょうがないと。


 

 可哀想と言って泣く両親を無視して俺は妹の名前を考えた。


 「よし!お前はシルヴィアだ!!お兄ちゃんだぞ~」


 抱いてそう言うと、シルヴィアはにっこりと笑って俺に手を伸ばし、きゃっきゃとしている。

 なんて、可愛いのか。

 

 「シルヴィ・・・俺の小さなお姫様」





 両親はシルヴィアを一族から隠していた。

 でも、その理由が俺にもだんだん分かってきた。


 シルヴィアが俺の子守唄をまねして歌おうと、うーうー言っっていたときだ。

 余りの可愛さに、俺は悶絶していたのだが、次の瞬間、固まった。


 シルヴィアの周りに、花が咲いていた。

 シルヴィアが歌えば歌うほど、それは増えていく。

 家の中だというのに、花々が、シルヴィアを守るように、シルヴィアに触りたくて仕方ないとでもいうように、シルヴィアの周りに、咲いた。



 俺はその余りの美しさに陶然とし、その余りの危うさに愕然とした。


 夜の一族は、その美しい外見からトレージャーハンターに追われていた。

 その隠された生態から、研究者に追われていた。


 世界中の好事家、人体収集者や研究者に狙われていたのだ。


 


 シルヴィアが2歳になったころ、一族にばれた。


 一族の皆は逃げ暮らす生活に疲れきっていた。

 そんな皆がシルヴィアの美しさ、神々しさに魅入られてしまったのも仕方の無いことだと思う。


 しかし、シルヴィアは’姫巫女’と祭られ、シルヴィアを隠していた両親は殺されてしまった。


 





 祈りの時間、シルヴィアは一族の民族衣装をきて高台の上に座る。

 その顔は無表情で、冷めた目をしていた。

 その顔が美しい顔をさらに美しく、神々しくしていることに気づいているのだろうか?

 その顔をやめさせたくて、俺はいつも1人だけ顔をあげて、にっこりと笑いかけた。


 俺が笑うと、シルヴィアが笑ってくれるから。

 俺は笑顔を絶やさない。


 俺の可愛いシルヴィア。

 きっと、きっと俺が守ってあげる。

 お前の体も、心も全部守ってあげる。


 だから、そんな顔をするな。

 シルヴィの笑顔が見たいよ。


 2人で、毎日笑顔で過ごそうな。








++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++






 「かっ・・・はっ!!」

 「よっし!!仕留めたぞ!!!」



 頭に強い衝撃を受け、意識が朦朧とする。

 人が集まってくる気配がする。








 俺は、死ぬのだろうか?

 シルヴィアを置いて?



 嫌だ。



 死にたくない。死にたくないよ。

 怖い、怖い。

 死ぬのは怖い。




 だって、シルヴィアに会えなくなる。


 あの笑顔に合えなくなる。そんなの嫌だ。


 あの子はまだ5歳なのに。

 俺が死んだらどうなる?

 俺にしか笑顔を見せないのに。

 俺がいなくなったら、どうなるんだ?


 シルヴィアは俺がいなくても、笑ってくれるだろうか?

 


 きっと、今も、帰りの遅い俺を心配して待っているはずだ。

 早く帰らないと、迎えにいかないと、シルヴィアが泣いてしまう。


 そんなの嫌だ。


 俺はシルヴィアにもらった髪留めを握り締めた。

 意識が今にも遠のきそうだ。




 「・・・・・死に、たく、な、い」


 

 死にたくない。


 「・・・い・・や、だ」



 怖い。




 シルヴィア、お前を1人にしてしまうことが。

 お前を孤独にしてしまうこたが。

 お前を置いていってしまうことが。


 お前と離れてしまうのが、こんなにも、怖い・・・。



 こぽり、と音がした、自分が血を吐いていることを知る。


 浮かんでくるのは、森で別れたときのシルヴィアの顔。


 不安で歪んだ、怯えた顔。


 きっと今もそんな顔をしているだろう。


 「っつ・・・シル、ヴィ・・・わ、らって・・・」


 あんな顔をさせたまま、死にたくない。


 「わ、ら、って・・・くれ・・・」


 お前には笑顔が似合う。


 俺の目から涙が溢れた。



 「あ、い、してる」


 愛してる。


 「・・・あ、い、して、いる、よ・・・」


 愛している。




 迎えに行かなくては。


 シルヴィが寂しがる。



 「ま、ってて・・・いま、い、く・・・か、ら・・・」




 


 体に力が入らない。



 涙が止まらない。



 シルヴィアを置いていってしまう恐怖に体が震える。















 最後に頭に浮かんだのは俺の1番好きなシルヴィの笑顔。






 それを最後に俺の意識は浮遊した。












 


 


 

  

 


 


 






 

カイル視点。

書いてて自分で涙でた・・・。WW

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