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迎えに来て  作者: 小宵
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破滅への道2

ヴァンス・カスラー  40歳。

 大富豪。シルヴィアの新しい主人。

 



 ヴァンス・カスラー、40歳。

 これがこの男の名前。

 カジノを経営しているらしく、大富豪なのだ。

 ・・・私を、研究所から買った、新しい飼い主。


 しかし、研究所とは違い、養女として迎えられ、煌びやかな服、宝石や鞄など様々なものを、贈られ、甘やかす。

 私のことは、研究所の資料でも読んだのだろう。

 ちゃんと、朝や昼には部屋に陽の光が入らないように計らってくれるし、私のことをシルク、と呼んだ。


 まるで親ばかの父親のようだった。

 片時も私を傍から放そうとしなかった。

 

 私は、研究所にいた5年間ですっかり、感情と言うものが無くなり、人形のように無表情になった。

 声も、あれ以来、一言も発したことは無い。


 始めは、衰弱し、食事もままならず、流動食だった。

 が、

 今はあれからさらに5年がたち、私は15歳になった。

 普通に食事もできる。・・・相変わらず、しゃべらないが、カスラーは口がきけないと思い込んでいるし、そんなことはどうでもよさそうだった。


 今日も最近カスラーがお気に入りのゴシックロリータの格好をさせられ、カジノのバーへ赴く。


 私を大衆にさらし、見せびらかすために。


 「いや、相変わらずシルクは美しいな」

 「そうだろう?自慢の娘だ」

 「ああ、そうだろうな。・・・どうだ?俺の息子の嫁に・・・」

 「馬鹿いうな」

 「でももう16になるだろう?結婚できる年頃だ」

 「いいんだ。シルクは死ぬまで私と一緒だ、な?」


 そう言ってカスラーが私に同意を求めてきたが、私はただぼんやりと、カスラーにされるがままになっている。

 肩を抱かれ、引き寄せられる。


 「まったく・・・とんだ親ばかになったな?あれほど生身の人間に興味なかったくせに」

 「この子は別だ。こんなにも可愛らしい・・・私の宝物だよ」

 「違いない」


 周囲の者たちがどっと笑う。

 人に囲まれることは好きではない。

 嫌だな、となんとなく思っていたら、無意識に手に力が入ったらしい。カスラーが、ん?と顔を覗き込んできた。


 「大丈夫だよ。シルクは私のものだ。どこへもやったりしない」


 勘違いしているが気にしない。

 そのまま適当に頷いておけばこの男は満足するのだから。


 しかし、5年の歳月は私の無意識領域でこの男を感受する方向に向かっているらしい。

 無意識とはいえ、この男のシャツを握っていたのだから。



 毎日同じことの繰り返し。

 でも、研究所にいたときのことを考えると、非常に楽だった。


 



 こうして更に、3年の月日がたち、私は18になった・・・・。







++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





 いつものように、夜にカスラーが私を起こしにくる。

 ’おはよう、よく眠れたかい?’そう言って私を抱きしめ、頬にキスをし、昨日買った、新しいゴシックロリータのワンピースドレスを着せられ、食事に行って、買い物に行って、カジノに行く。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はずだった。




 いつもとは違い、今日はうるさい。

 そう思って目を覚ますと、そこには・・・・・白い、闇。


 カスラーは私を大事にしてくれた。

 カスラーに買われてからは1度も経験することの無かった、光の恐怖が急に襲ってきた。


 13年前に戻った気がした。

 記憶がフラッシュバックする。

 体はガタガタと震え、脂汗がでる。

 歯がかちかちと音を立てる。


 すると、何かが動く気配がした。


 「やぁ、目がさめたのかい?おや?こんなに震えて、可哀想に。大丈夫、悪いようにはしないよ」


 私に触れようとする気配に、びくり、と体がすくむ。


 (見えない、怖い、怖い、怖い・・・・)


 「ああ、見えないからこんなに怯えているのかい?ごめんね、場所を知られたくないから、明るくても我慢してくれ」


 私の頭を撫でる、大きな手。

 誰かも分からない者の、手。


 (気持ち悪い)


 恐怖に、支配された。


 (兄上)




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




 あれから何日たったのだろう?

 私は誘拐されたらしい。


 どこかの屋敷の一室に閉じ込められていた。

 誘拐犯はカスラーと行くカジノで見たことのある、脂ぎったおじさんだった。

 大きな宝石の付いた指輪をいくつもつけた悪趣味なおじさんだ。

 スマートなカスラーとは大分違う。


 ぼんやりしていると、1人の若い男が入ってきた。

 首をかしげてその男を見つめていると、男は一瞬私をみて唖然としたものの、ニヤリと笑い、近づいてくる。


 「親父が既成事実作って来いなんて言うからどんな子攫ってきたかと思えば・・・ラッキーだな。こんな可愛い子なんて」

 

 男がベッドにのしかかり、距離をつめてくるので、私は後ずさった。


 「なぁ、知ってる?あんたと俺、結婚するんだってよ。カスラーから正攻法で奪うために、あんたを孕まして俺の嫁にして、親父の愛人するんだぜ?」


 (・・・何)


 男は好色な笑みを浮かべにじり寄ってくる。私はベッドの端まできて体制を崩しかけるが、男に腕を引かれその胸に収まってしまう。


 「すげー綺麗な髪だな・・・親父の気持ちもわかるぜ」


 ベッドに押し倒され、首筋に顔を埋められる。

 男の荒い息が首にかかる。


 「すっげーいい匂い・・・興奮する」


 そのまま、べろりと首を舐められ、悪寒が走った。


 「怖がんなよ、天国に連れってってやるぜ?」


 そう言って、私の服に手を掛け、服を破いてしまった!

 私は前がはだけ、下着があらわになってしまったことに愕然とし、動けないでいると下着まで剥ぎ取られ、膨らんだ白い胸が外気に触れた。


 ごくり、と男の喉がなる。

 途端に男は私の胸を揉み、吸い付いてきた。


 「!!」

 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 「・・ぃ、ゃぁ!」


 13年ぶりに出した声は掠れていた。

 私はこれから行われようとしていることへの恐怖で、暴れまくった。

 手足をじたばたさせると、男のあごに拳がクリーンヒットした。


 「~~!っこんのアマ!!」

 「!」

 「暴れてんじゃねーよ!」


 手足を固定され身動きをとれなくさせられる。私が怯えていることに気づいた男は怒りを引っ込めて、ニヤリと笑う。


 「・・・お前、確か光が駄目とか言ってたっけ?」

 「!」

 「知ってた?今って昼なんだぜ?」


 男がベッドの頭部についているボタンを押すと部屋のカーテンが自動的に開いていく。

 そこから溢れる、光・・・・。


 「はっ!急におとなしくなって!!かぁわいいなぁ・・・震えちゃって・・・」


 視界がどんどん白い闇に染まっていく。

 震えが止まらない。


 (この、白い闇の中で今度は何をされるの・・・?)

 

 絶望が私を包んでいく。

 胸に湿った感触のものが蠢いている。



 (兄上、兄上、兄上兄上兄上兄上ーーーーー!!!)






 助けて。

 







 

 ばん!と大きな音がした。


 「シルク!!」


 聞こえた声は兄の声ではなかった。


 瞬間、ガッと鈍い音と、男の呻く声がした。

 は、は、と走った後のような息使いが近づいてくる。


 何かが、肩にかけられ、そのままその人に抱きしめられた。


 「遅くなって、すまない。もう、大丈夫だよ」




 ぎゅう、とその腕に力がこめられる。







 「ああ、私の宝物・・・。シルク、無事でよかった」







 カスラーが、迎えに来てくれた。





 私は初めて、カスラーの背に己の手を回した。


 

どんなでしょー?誘拐とかありきたりかな?

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