放射能は光るのか
まず、この文章の間違いを指摘したい。放射能とは、放射線自体のことではなく、放射線を発生する能力をもつ物質をいう。そのため放射能は光るのかは、間違った表現となる。
正しくは、放射線は光るのかになるだろう。
結論を言うと、放射線それ自体は、光らないし、目で見ることもできない。
放射線とは、粒子放射線と電磁放射線にわかれ、粒子放射線は質量をもった粒子の運動により生じるもので、アルファー線、ベータ線、陽子線、中性子線、重粒子線などを指す。電磁放射線は、波長が非常に短い電磁波でエックス線、ガンマ線をさす。人間の目にみえるのは、電磁波の中の可視光線のみであり、同じ電磁波でもエックス線、ガンマ線はみることができない。
ではなぜ、放射線が光るという誤解が生じたのか。そう誤解させる現象が二つ存在する。
一つはチェレンコフ光である。これは、放射線が空気や水などのなかを通ると、その物体にエネルギーをあたえる、そしてその物体がエネルギーの高い状態から、元の状態に戻るときに、青い光を発する現象である。
実際に、東海村のウラン臨界事故で高速中性子が発生したとき、その作業員は、青い光をみたという。この光を見たものは死ぬといわれており、この作業員も後に死亡した。放射線が直接光るわけではないが、放射線が発生したときに光が出るので誤解したと思われる。
二つ目には、蛍光現象のことであると思われる。昔の夜行時計の文字盤につかわれたラジウム夜光塗料からの誤解であろう。この文字盤が光るのを蛍光現象といい、ラジウムから出る放射線が蛍光物質に当たると光る現象を利用している。これはラジウムからでる放射線自体が光るのではなく、放射線が蛍光物質に当たると蛍光物質が光るのである。
またブラジルで起こったゴイアニア被爆事故がある、これは廃病院より盗まれた放射線治療装置セシウム37により起こった被爆事故である。そもそもこの放射線治療装置には、セシウムが漏れたとき分かりやすくするため、蛍光物質が混ぜられていた。そのため光るのである。これを盗んだ者が、きれいだからと配ったために、被害が拡大した。これも放射線が光るとの誤解を与えた可能性がある。
それで、放射線をあびた生物が光るという描写がある映画があるだろうか。これがあるのである。探した中で一番古いのが「the giant behemoth」である。
この映画は、核実験でよみがえった太古の恐竜が、ロンドンを襲うという、どっかで聞いたことがあるような話なのである。この映画の冒頭で、魚がたくさん死んでいるのが発見され、これば放射能汚染によるものだとして、科学者が調べるのである。解剖して写真を撮っているのだが、写真乾板が感光するのは良いとしてもだ、なんかカレイみたいな魚の内臓が暗がりでピカピカ光っているのである。これはどうしようもないなあ。
というか、一番影響があったのはゴジラではないかと思う。はっきり放射線で光るという説明はないのだが、背中のひれを光らせて、口から青い熱線を出すのでは誤解されても仕方がない。ではあの口から出ているものは何だろうか。
これが時代により描写が違う。
初期の白黒の時は、白い霧状のもので、それが当たったものが燃え上がるのだ。昭和時代は、青い炎状のもので放射能火炎と呼ばれていたが実はあんまり威力はなかった。ゴジラ1984以降は、明確にビーム状になり威力も増している。
これは時代により進化したと考えたい。最初はただの高温の放射性物質を霧状にして吐いていた。高温なので触れたものが燃えたのだ。それが次第に電子線になった。青いのはチェレンコフ光のためである。そして電子線なのでマイナスに帯電しているため、プラスに帯電している地面に近づくと反発して少し曲がるのだ。そして電子線なので浸透力は弱いため効果は少ない。現在は高速中性子のビームなのではないだろうか。