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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第三章】新たな門出
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第92話 フェンローゼ家の事情

 カツカツカツ、今度は何だろうと思っていると、扉が今度は勢いよく開かれて、「姉さんの子がいると聴いたが!」と言い、その恰幅の良い人当たりの良さそうな丸眼鏡をかけた銀髪の中年の男性がフォスティとともに歩いてきて、私の前に立ってにこっと微笑んだ。


「私はルピシエ州の州総監をしている、フォスティの父であるガリアスという。シェラ姉さん、つまり、君のお母さんの兄だ。私は叔父ということだね」といい、「王女殿下、先ほど振りでございます。ご機嫌麗しゅう」と頭を下げ、「恐れ多きことながら、こちらを失礼させて頂いてよろしいでしょうか?」という。


 王女は「もちろんよいぞ、そなたの家ではないか」と笑いながらいい、ソファを手で示す。ガリアスさんは一礼してソファに座り、フォスティも一礼して座る。


「さて、色々と話が途中になっているようだね。しかし、本当に姉さんに生き移しのようだ……! そうだね、まずは自己紹介が途中だったと聴いているが…?」とフォスティを見て、フォスティが王女に、「殿下、よろしいですか?」と尋ねて王女が頷くと、お互いの自己紹介が再開した。


「改めまして、僕はリンドル村のホート幼稚舎の教師とレニーナちゃんの家庭教師をしていたヨスタナ・フェブリカと申します。リンドル村の事件についてはご存じかと思いますが……」と話すと、王女、フォスティ、叔父であるガリアスさんも顔を曇らせた。


「酷い魔獣災害だったと聴いています。シェラの遺体をせめて……と思いましたが、遺体の損壊が酷く、また腐敗もあり、共同で火葬した、と……」とガリアナさんは落ち込んで言った。


「そのシェラさんと、ロイさんの娘さんが、レニーナちゃんで……ロイさんとシェラさんが避難する馬車で逃してくれて、助かりました」というと、「そうだったのですね……それは、レニーナちゃんも怒るのは当然だと思うよ」とガリアスさんはいう。ブランは、思い出したのか沈んだ目をしていた。


「ただ……父、つまり当主である……オスティス・ルゥ・フェンローゼにとっては、男の子供は私と、あと私の弟がいるが、女の子の子供はシェラ一人……しかも末っ娘だ。本当に大切な娘だったんだよ」と遠い目をして言う。


「そして、確かに他家との政略結婚のための面もあったのだが、婚約者を早く探すのは貴族では一般的だからね。人格的に評判の良い子から決まっていってしまって、父は焦ったんだろうな。家出した時は……それはそれは怒ったが、内心ものすごく心配していたんだよ」とガリアスさんはいい、「そうはなかなか、父は外に表情で出さないんだけどね」と苦笑する。


「それは確かにロイ氏に対しては、最初、当家は怒り心頭という感じだったさ。そうならず者に襲われた所を救われたという事情を穿って見て自作自演だったのではないかと、当初は、平民の不安定な職である冒険者だったロイ氏は、公爵家の財産や権力が目的じゃないかってね」とガリアスさんは顔を曇らせていう。


「だが、ロイ氏は冒険者を引退し、2年で護民官候補登用試験に合格した上に、護民官として実際に住民に選ばれた。当然ながら当家の力など借りずに、ね。当然当家の相続権など一切求めなかった」とガリアスさんは微笑み言う。


「だから、結婚を認めて、正式に、って話自体はあったんだ。だが、護民官となると、貴族の立場にはなれないからね。その辺の調整がどうしてもあって、実はロイ氏とは手紙のやり取りでその打ち合わせ的なのはしていたんだよ」という。


「だが、当家との繋がりを戻すというのは、父がやはり反対の気持ちが強く、なかなか遅れている中で……リンドル村の、その事件が起きた、というわけなんだ……」と悲しげに語った。そしてさらに言葉を続ける。


「だから父も認めていない訳じゃないんだ。ただ……『あの結婚を無理にでも引き離し、リンドル村にもしもシェラをそのまま居させなければ、無事だったのではないか……』そう、思ってしまう父親の気持ちも、分かって欲しい」と言葉をガリアスさんは切った。


「そうだ……まずは自己紹介の続きを、リィズ君とブラン君はまだしていなかったよね?」とヨスタナ師が空気を変えるように尋ねる。意をくんだのか、リィズが立ち上がって礼をする。


「はじめまして、私はリィズ・ブロンシュテインと申します。こちらは私のいとこのブラン・ブロンシュテインです」とブランが名を名乗りブランを見ると、ブランが、「え?! ぶろんしゅちゃいん? あ、そうか! うんうん! あたし、ブラン! ぶろんしゅちゃいん!」とまた怪しい事をいう。リィズが誤魔化すように続けた。


「私の家は元々はチコレットジャム問屋を営んでいて、両親が早くに亡くなったので後を継いで、レニーナの村とも取引があり親しくさせて頂いていたのですが、村でレニーナと同じく事件に遭って、フェブリカ先生と一緒にレニーナをまずはご家族の元へ送り届けようと思い、また世界を見たいと思って問屋の事業を叔父に任せて旅へ出て、同行しました」と、確かに一見矛盾がないような事をいう。


「それは本当にレニーナがお世話になりました、リィズさん、ブランさん。しかし、ブロンシュテインとは珍しい苗字ですね」と尋ねられる。


 確かにこの地の名前は、結構地球の人名では一般的ではない名前が多いなと思っていると、リィズは「我が家は古くは遠い地にゆかりがある家だそうです」という。まあ、私の祖国は、そしてその祖国に移民してきた私の血筋は、遠い地だろう。


「そういえば、わたしの母が、さいごにこのてがみと、ゆびわをのこしてくれました」と、母の最期にしたためてくれた手紙と、あの紋章などが刻まれた指輪の入った封筒を取り出して、ガリアスさんとフォスティ、王女に見せる。


 すると、「これは間違いないな、姉さんの指輪だ」と言い涙ぐみ、「父さん、身分の確認はこれで取れたんじゃないですか?」とフォスティがガリアスさんにいうと、「そうだな、第二王女殿下も見て下さっている事だし、ちょうどいいだろう」とガリアスさんが答えると言った。


「疑ったつもりはもちろんなかったが、一応確認が必要で、ウェスタ市の護民官に照会をかけているが……この手紙と、指輪で十分確証を得たから大丈夫だよ。レニーナ、君は私の姉の子供である姪で、このフォスティの従妹だ。よく来たね」と微笑んでくれる。


「ただ……あのおじいさん、はいいんですか? 当主とおっしゃっていましたが」と尋ねると、「ああ、あとから許可を得ておくさ。だいたい、あとのことはフォスティと私に一任する、と言っていたのだから大丈夫だ」という。


「さて、それではフェブリカ先生、そしてリィズさん、ブランさんだが……まずは遅いのでゆっくり当家へ逗留されてください」という。逗留、というと、一時的なもので……アリエさん達の時のように、このまままた別れたくない。


「フェブリカせんせいを、わたしのかていきょうしにおねがいしたいのですが、フェブリカせんせい、どうでしょうか……?」と上目遣いで尋ねる。そうすると、「おお、フェブリカ先生さえよければ、お願いできませんか?」とガリアスさんがお願いしてくれる。


「僕ぁ本当にレニーナちゃんに教える事はもう無い気もしますが、僕でよければ……」といい、私は「せんせぇ、ありがとう!」と喜んだ。


 そして、「ガリアスおじさま、リィズとブランはとても大切なそんざいです。ぜったいに離れ離れになりたくありません。リィズは村の危機をしらせにきてくれた、いのちのおんじんです。どうかいっしょに住んでいいでしょうか?」と尋ねる。


 すると、「それは……そうだね、リィズさんとブランさんはいいのかい?」と遠慮がちに尋ねると、リィズが「よろしければそうさせて頂ければ、私達も嬉しく思います」と答え、ガリアスさんが頷いて、「レニーナの年の近い友達がいるのはありがたい。よろしく頼みます」と微笑んだ。


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