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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第三章】新たな門出
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第91話 フェンローゼ家当主

 先ほどの応接間に戻ると言い争いの声が聞こえる。「ですが、おじい様!」「何故屋敷に入れたのだ! 知らん他人の子供など儂は知らん!」「ですが、恐らくはシェラ叔母様の血筋で……」「血筋だと? 儂に娘などいなかった!」という声を聴き察する。


「王女殿下の前ですので、おじい様、これ以上は……!」というフォスティに、「ただいまもどりました」と言いながら、フォスティの目の前に立ちはだかっている初老のずいぶんと立派な格好をした、いかにも「ワシ、貴族じゃ!」と言わんばかりにマントまで被ってる男性が立っていて、こっちを見た。


 白髪なのか銀髪なのか分からないが、目つきが鋭く体格の良い長身の、険しい顔をしていて、今は激怒といった感じであった。


「何だこの子供は! まさか、その知らん娘の子とやらではないだろうな?!」といきなり物凄い怒りの眼で見られるが、一応はまずは礼儀だ。「はじめまして、わたしはレニーナ・フィングルです。5さいで、リンドル村出身です」とぺこりとする。


 すると、「ふん! そんな田舎聞いた事がない。どこの馬の骨とも分からぬ男と家出したふしだらな女など、我が血筋には必要ない、帰れ!」とのたまう。


「母をそうあつかうのは、父をそうあつかうのは、やめてください! とてもしつれいきわまりなりです!」といい、ブランが「そうよ! パパとママのことを悪く言うのはやめて!」という。


「あの女たらしの女を騙して生き血を啜る結婚詐欺師の汚れた血を引いている者などと話す気はない!」と、今度はまたものたまうので、私の頭の中で何かが切れた。そしてにこっと微笑んで言った。


「ひとびとのためにいのちを文字通りささげて亡くなった父をそこまでぐろうするならば、それなりのかくごがある、と?」と私は最上の笑顔を作って見上げ言った。


「ええ、父と母はさいごまでリンドル村にのこって死力をつくしてひとびとのためにたたかって死にました。それをぐろうするのならば、かくごがあるということですね?」と言う。


 そして、私はヨスタナ師に「かえりましょう、むだあしだったようです」というと、ヨスタナ師が冷や汗をかいて、「れ、レニーナちゃん、どうするつもりだい……?」と尋ねる。


「あたりまえですが、父と母をあれだけばかにされたのですから、まずはあらゆる訴訟を起こします」と私は笑顔で言う。


「しんぶんもあるようですから、あらゆる方法で大衆にうったえかけ、リンドル村の事件について、ひじょうじたいにそなえて道のせいびをうったえていた父をむしした、エニシア州の貴族とにんめいした国王、そして、次席宰相のこの老人のせきにんを、けいじこくそ、みんじこくそします」と私は。何故か不思議なことに段々と顔色が悪くなっていくヨスタナ師を見ながら宣言した。


「れ、レニーナ! 君は王国とフェンローゼ家を訴えるというのかい!?」とフォスティがいい、「これはおもしろい」という王女、「王国法も知らんのに、訴えるなど子供の遊びではないのだぞ?」と睨んでくる老人に対して私は言う。


「おうこくの法に、『よけんかのうだったのにもかかわらず、民をまもる義務をおこたった貴族や国のせきにん』と『にんめいせきにん』がさだめられている規定が、ぐたいてきには、とうちこうい法17条、ファースおうこくてんぱん82条に規定されています」とだけ言って私は去る。


 去ろうとしたが、「ま、待って欲しい! 少なくとも僕はこんな形でレニーナとお別れしたくないよ!」という。私もフォスティに関してはその想いだが、この老人に関して言えば赦す気はない。


「確認がとれてからでしょうが、フォスティとはかぞくです。ですがこの老人はいのちをかけた父と母をぐろうし、母をじぶんの娘とみとめず父を詐欺師呼ばわりするのですから、かぞくではありません」というと、老人はダンっ、と片足を思い切り踏みつけた。


「……もう休む。フォスティ、父親に相談した上であとは好きにしろ、お前の父に一任する。……第二王女殿下、大変失礼を致しました」と王女に頭を下げて、くるっと背を向けて歩き去る。


「お、おじい様! 待ってください!第二王女殿下、失礼します!」とフォスティがその後を追っていった。


 私はさて、これから忙しくなるぞ、と思っていると、リィズが微妙そうな表情をしている。「さっきの人間、貴女に似ていて素直じゃない所があるから、気を配ってあげなさいよ?」という。私だって何も身内にそんな事をしたくないが、合法的にはそれくらいしか、実のところ手がない。だがリィズがそういうからには、話し合う余地があの老人にあるのだろうか。


 そう考えていると、静観していたのにずっと存在感はあった第二王女殿下とやらが、考え込みながら言った。


「レニーナちゃん様とやら。そのほうが言った法律は本当に存在するのか?」と訝し気に見てくる。私は、「もちろんそんざいしていますが、どうしてですか?」と同じく不思議で、何か間違えていただろうかと思い、相手に鎌をかけたと思ったのかなと思った。


「いや……そうスラスラと普通は出ないものなので、な……。まさかとは思うが、レニーナちゃん様とやら、王国の法を全部覚えていたりしないだろうな?!」と今度は何故だか焦って聴く。


 私だってそこまで深くは知らないし、父の部屋にあった本を読んだだけだ。


「ぜんぜんおぼえてないです。父のへやにあった本を読んだだけです」というと、王女はほっとしながらも、「その本はどんな本だったのだ?」と尋ね、「ごみんかんの勉強の本だと聴きました」と答えると、ため息をつかれた。


「護民官についてそなたがどのような職と思っているか分からないが、幅広い知識を要求される難関の官職じゃ。その試験の本なら、それはそれくらいの内容は載っておるじゃろうが……」といい、誤解が解けたと私がほっとしていると、ヨスタナ師は「まさかそんな本まで読んでるとは、僕ぁ知らなかった、あれ? 僕ぁ家庭教師として意味あるのか……?」と自問自答し始めた。


 私はヨスタナ師にしがみついて「すごくあります」とだけ伝え、ブランも「あるにきまってます!」というと、微笑んで「そうだね、ありがとう」と答えてくれた。


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