第78話 科学と魔法とストレージ
「パーテーション……くぎるというと……かべでも作ればいいのだろうか」と、私がいまいちイメージが湧かずに言う。
「そういえばレオンの時代って、電子コンピューターすら無かったわよね。でもこの『場』なら思い出せるでしょう? ストレージのパーテーション、とか」
というので、この『場』の記憶から取り出し……「ああ、あの情報をくぎるとか、せつめいをうけたものか」と思い出す。白レニーナは……「あ、あたしのお肌、ぷにぷにー♪」と、自分の身体で遊ぶ事を選んだようだ。
「まあ、その要領なのだけど……そうね、貴女がこの『場』を離れたら、また思い出せなくなると思うし……ちょっと待ちなさいね?」とリィズが何かし始める。
少しすると、突然私の目の前に、ぴっ、と機械音らしいような人工的な音がしたかと思うと、目の前に……宙に浮いた、ピンク色をしたうさぎのぬいぐるみが浮いている。
「まあ、仕組みは魔法じゃ無くて貴女の、だーーい好きな、科学に近いわ!」
「……まあ、魔法との合わせ技なのだけど、まあ細かいことはいいわよね! 貴女が来た時代の120年後くらいの、まあ『自由に使っちゃってOK!』なのだけ使った、初期の技術な対話型概念生成AIを拝借して、ちょっと魔改造したの!」と、何故かドヤ顔をしてくる。
確かにAIというのは、あの時、あの『場』でリィズに聞いた。
まあ、その後の、中期に起きたシンギュラリティとやら以後に産まれる存在に比べると、極めてささやかなものだし、クローズドなものだからいいのだろうとリィズも恐らくは持ち出したのだろうが、それを電子コンピューターすら無いこの世界で、何に使うのだろう。
そう考えていると、「貴女なら分かりそうなものだと思ったけど、やっぱり仕組みの知識だけで知ってても、実際に用途で使った事がなければ分からないわよね!」とリィズに言われて、黙らざるを得ない。
「結局、それをどうするのかね?」と私が聞くと、「このままでは、AIはたいしたことはできないけど…そ・こ・で! 魔法とリンクさせるのよ!」と、「だからそれをどうやってするのだろう」と思う事を言う。
リィズは言葉を続け、「空間を範囲指定して設定したり時を止めたり物を正確にデザイン設計させてたり、そういう『情報』を、生命体や魔法生物が『管理』するのは、あまり得意分野じゃないのよ。ストレージは『情報』を持った『場』なの。情報の付与剥奪の管理ができるのが得意なAIには、向いているのよ」
「それを……魔法と、くっつけてごらんなさい? 好きに空間をアレンジして創造し、その肉体を保存する所は『刻』の止まった空間にし、別のところは好きに空間をアレンジして、別荘でも世界一つでも創る事だってできちゃうし、正確な設計とデザインをするAIと錬金術と組み合わせたら、貴女の自由度、広がりまくるわよ?」とリィズはウィンクする。
思い出した情報で意味は分かる。しかし……リィズは……「リィズ、むりしてるんじゃないか?」と私は端的に尋ねる。
すると、何を言ってるのかしらというような、怪訝そうに冷静そうな表情をして、「なにいってるのよ、無理なんてしてないし、どうしたの?」と微笑む。
この、記憶を保存している、あの時聞いた真理を思い出せる、この「場」において思い出せる全知恵を振り絞っても、リィズの悩んでいる、苦しんでいる事が分からないが……悩んでいる、苦しんでいる事は、分かった。そして私は彼女を抱きしめ、「むりしないでいい」とだけ囁いた。
すると、「む、無理してなんて、いないから!!」と突き飛ばされ、瞬時にリィズが絶望したような顔をして、「ご、ごめんなさ……」というので、もう一度抱きしめ「だから、むりしなくていい。いつでもまってる」とだけ言った。
「わたしー、よくわからないですけぉー、これって、そういうのですー?」と間延びした例の声がする。「さ、サティナ!? ち、違うの!!! ご、誤解だからー!!!」と、リィズがあたふたサティナにわちゃわちゃしているが、やはり彼女の心は完全に晴れてはいないと思った。
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