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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第三章】新たな門出
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第73話 万雷の拍手の中で。

「僕ぁ、学が無いからあまりわからないけど…僕ぁ、馬鹿なりには分かったよ。僕なりに理解してるのが合ってるなら、今こうしてる感じに、身体を2つに別けて、引き離してしまうなら、レニーナ君が引き裂かれる事になるんじゃないかい……? それはあまり良くないことだと思うんだけど……」とためらいがちに言い、言葉を続ける。


「って、僕ぁ、その、そういうの、初めて聞いたことで、知らないけど、もし身体を2つに別けて本当に『レニーナ』君は救われるのかな? と、なんとなく思ったんだけどね」と苦笑いしながら恥じつつ言うが、とても鋭く問題を指摘している。まさにその通りだ、やはりヨスタナ師はやはり賢者だと私は思う。


 確かに男性性も女性性も、お互いを認め合った抑圧しない調和した両性具有の状態を目指すべきなのに、このままでは2人分の異なる男性性と女性性を持つ私、2人分の異なる男性性と女性性を持つレニーナと、正直本来的には精神的に正常な状態でないだろう。もしも私とレニーナが、お互いにお互いの中に、自分とは逆の男性性や女性性を新たに作って解決するというなら、文字通り引き裂かれてしまう。


 ただ、こう、名前に関しては本当にややっこしい、と言うのを解決はしなければならない。なので私は言った。


「ただ、わたしたちは何かこう、名前くらいは、区別できるのがやっぱりひつようかもしれません。『あたしなレニーナ』というのも、なかなか分かりにくいですし……」と私は言い、ここは大人らしく私が纏めるべきだと思い、さっきは何故は不評だったが、改善点を検討し恐らくは問題の無い新たな名案を提案した。


「それなら、わたしが『レニーナ主流派』で、きみが『レニーナ反主流派』と区別すればわかりやすいのではないかね。これでかいけつだな」と言い、これで収まるだろうと思ってちらっと皆に目を向けてみる。


 だが、リィズも、『あたしなレニーナ』も、ヨスタナ師さえも、とてもなんというか、まるで呆れたような目で見てきて、3人ともため息までついてきて、トドメに、「本当、貴女ってネーミングに限らず様々とセンス最悪なのね……気の毒になってくるわ……」とリィズがぼそっと呟き、私は名案だと思っていたので、愕然とした。


「それこそやっぱり、貴女がレオンで、あたしがレニーナでいいじゃない? 前世の名前なんでしょ?」と、『あたしなレニーナ』が言ってくるが……私もレニーナなんだがなあ……やはり抵抗がある。


 あたしなレニーナも、レニーナなのは分かる。だが、私だってレニーナなのだ。これは他の皆も、リィズもヨスタナ師も、これまで長い間、私のことを受け入れ、そしてなんだかんだいって理解してくれ私のことを大事に想ってくれている、大切な仲間だ。こんな非人道的な案は誰も賛同しないはずだ、そう信じてる。


「そうね、レオンがレオン、レニーナがレニーナ、それが分かりやすいし、そうしましょう?」「レニーナ君がレニーナ君、レニーナちゃんがレオン君、それが分かりやすいですね、僕ぁまぁ、そういう事なら賛成ですよ」


 これまでの長い間、様々な時を重ねて築き上げてきた絆を信じていたのに、裏切り者が2名も出て、彼らは3対1という数の暴力を振りかざしてきた。多数派が少数派を押しつぶす専制主義ではないか。私は多数決の名を借りた暴力には屈しない……!


「貴女……諦めなさい? なんだかそれっぽく小難しい理屈をこねて反対しようと考えてるみたいだけど、貴女がレニーナの面があるにしても、そういうとこが、貴女はレオンっぽいのよ。だからレオンで決まりね!」と、リィズがふふんと勝ち誇った顔でまたもや無い胸を張ってくる。


「賛成!決まりー!」「僕もまぁ、分かりやすくていいと思いますし、いいんじゃないですかね?」そう裏切り者達は言って、問題が解決したと笑顔で拍手し、多数決で私は事情を知ってる内輪の中では「レオン」と呼ばれる事になった。万雷の拍手の中で。








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 ただ後日談というか、その15分後だが……。


 断じて私はしょげてなどなかったのだが、「そ、そんなにしょげちゃうと思ってなかったから……わ、分かったわよ! 何か違う方法考えるから! そんなに泣きそうな顔しないで!?」と3人にものすごく腫れ物に触られるように気遣われて、「内輪以外だと区別しにくいから、バレないフランス語で、『ルージュ』がレオンなレニーナで、『ブラン』があたしなレニーナね!」と、ちらっちらっと顔色を見られながらリィズは宣言した。


 確かに私は「赤い」が……地球での意味を分かって言ってたのか、謎である。だが私はあの時断じてしょげてなどなかったし泣きそうでもなかったのは、私の名誉として後述しておく。断じて。

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