第68話 ヨスタナ師への感謝とリィズの秘密
今日はかなり疲れてしまった。それはヨスタナ師も同じようだ。ただ、明日のことも話し合わなければならないので、宿に女将さんに「ただいまかえりました、おかみさん、ごめいわくをいろいろおかけしました、ありがとうございます」と伝え頭を下げた。
一瞥され「伝えられたようだし、伝わったようだね」と一瞬微笑んだ後、「よかったね」とぼそりと無愛想にいうとても優しい声を背に、まずは私の借りている部屋に2人で入る。私はまずは、言いたかった。
「せんせい、今日も……ううん、あの時から、ずっと、ありがとうございました。せんせいがいなかったら、わたしは絶対に壊れて、そしてもっともっと酷い事を、リィズだけでなく、周りのみんなにしていたはずです。だから、本当にありがとうございます」
そう私が感謝を込めて深く頭を下げて礼を言うと、ヨスタナ師は少し驚いた顔をして、そして優しい表情で言った。
「レニーナ君、そんなことはないさ。僕ぁ手助けを少ししただけさ。レニーナ君が色々と葛藤し内面で闘い苦しんでいたのは観てた。だが、リィズ君にも謝れた。大切な事も思い出せた。それは君が考えて選び取ったものだ」
そうヨスタナ師は言って、腰をかがめ私の頭を撫でた。(あの…あたしも!あたしも、フェブリカ先生にお礼伝えたい!伝えなきゃ!バトンタッチして!)という声が聞こえる。だが私は、「分かってる、だから全部せんせいには言ってしまおう。紹介はするが、まずはわたしにまかせてほしい」と声に出すと、(えっ!?私達のこと!?)と焦る声が聞こえ、またヨスタナ師は私の独り言に心配そうな顔をしている。
「リィズ…そこにいるのではないかね?いろいろ傷つけたりひどいおもいをさせて、すまなかった。出てきてほしい」と私は備え付けの鏡台に語りかける。ヨスタナ師は私の口調にも、その言葉の内容にも、だいぶ心配と不安を感じたらしく、「れ、レニーナ、くん…?」ととても心配そうに、呟いた。
すると、「………私なんか、が……本当に、いいの…?」と、これは…遠慮ではなく、これは恐れ…まだ、自分のせいで、レニーナを傷つけるという恐れに恐怖しながら、ためらっているリィズの声がした。
「えっ!?リィズ君?」
と、ヨスタナ師はきょろきょろするが、私は「せんせいにも話したいから、リィズ、君に出てきて欲しいし、君に居て欲しい」と私は真剣な顔をして、祈るような気持ちで願いを込めた声で呼びかけた。
すると鏡台の鏡が眩く光り、ヨスタナ師が、「な、なんだ!?レニーナ君、爆発かもしれない、危ない!」と心配して叫ぶのを聞きながらも、光が収まり現れたリィズの姿を見て、私は何故か、思わず、リィズへ急いで駆け寄って、思いっきり抱きしめ、「ありがとう」と耳元で囁くように伝えた。
するとリィズは、まだ怯えながらの目をしながらも、「貴女…レオン、よね…?」と尋ね、「そうだ」と答えると………。
ぼふん、何だかそんな音が聞こえたのは幻聴か、何故かリィズは顔がものすごく真っ赤になって、「な、な、なぁっ!?え、え、ええーっ!?」と急に何だか抱きしめていたのから身を振りほどいて逃れ、頬に両手を当てて、何だか後ろを向いてブツブツと呟いている。
私は呆然として、抱きしめたのから逃げられたのにショックを受けつつ、まったく予想していなかった反応だったので、これは、レニーナに嫌われる恐怖…でもない、傷つける…という恐怖でもない、不可解な反応に、とても困惑してしまった。
そう、私は、ずっと慰霊碑の前にいたから、リィズが神でも風邪を引いたのかもしれないと想っていると、(………レオン、馬車までダッシュ。蹴られてきて?)とレニーナの声が聞こえ、私は意味不明でさらに混乱した。
と、それは置いておいて…目が点になり、文字通り固まっているヨスタナ師。まあ、ヨスタナ師に言えない事だというなら、他に今後誰かに、リィズの正体も私の中の私とあたしの話は、言える事はないだろう。だから話してしまおう。
「せんせい、リィズは、わたしも何度か言いましたが、本当に女神のフェンリィズです。室内で少女の格好をした彼女のことをかみさまといっても、にわかに信じられないでしょうが…」
と、私は横目でリィズを紹介しようと見ると、なんと、まだ真っ赤な頬に両手を当てて、何だかぶつぶつ言っている。まるで壊れたレコードのようだ。ならば直す方法は1つ。軍でも壊れた機械を直す時やった手だ。
「えいっ」と、私は再びリィズにげんこつをする。がつん。
「い、痛いわね!?って、あ、貴女……さっきは、あれは、えっとその、あの……。。。」と言いよどむ。
「うぅぅぅ!!うぅぅう!!あ、あ、貴女には、どうせ、そういうつもりはないでしょうし?!貴女は今女の子だけど……か、仮にも女神な私に、そういうのいきなり準備もなくは、いろいろダメだからーっ!!!」と叫んでまた顔を両手で覆う。
意味不明、何の事やらさっぱり分からない上に、せっかくヨスタナ師に紹介しているのに、心ここにあらず…。ふむ、また異世界モノとかの何かの話だろうか、と考えていると、(…だから、レオン、市庁舎までダッシュ。さっきの馬車のとこいって蹴られてきて?このオンナの敵!)とレニーナまでが意味不明な事を言ってくる。私も女児なのだが。
「あ、あのぉ、そのぉ、僕ぁいったい、何を見せられているのか、何をしてるのか、何をいってるのか、さっぱりちんぷんかんぷんなんだけど…このドレスの子が、え、フェンリィズ様って…マジかい?」と、口を差し挟めず目を回していたヨスタナ師が、言葉を差し挟む隙をついて、うまく本題を尋ねてくる。
「マジです。今見ての通りポンコツタイムですが、もう一回、こんどは斜め45度の角度でチョップを入れれば多分元通りに」と言おうとすると、「止めてよ!?デリカシーなんて貴女に期待しないけど、乙女に今度は突然チョップって、デリカシーの『デ』ぐらい持ってくれてもいいでしょう!?」とリィズが今度は頭を護るように手で覆って、こわごわとした涙目で見てくる。
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