第64話 父の遺品と想い
「レニーナ君、大丈夫かい…?」
と、父と母を探すあたしを見たから、フェブリカ先生は心配してあたしに声をかけてくれたが、「すみません、取り乱しました、大丈夫です」と微笑み返しながら献花台への道を開ける。
「それじゃ、僕も祈らせて頂くね」とフェブリカ先生は微笑み返しながら献花台に立ち、片手を胸に当て頭を下げ眼を閉じた。2,3分し、再び目を開けて一礼をし、クラムさん、そしてガイさんが、献花台と慰霊碑の前に立ち、悼み祈りを捧げてくれた。
最後にユースティアの神官であるヨシュアさんが献花台の前に立ち、祈りを捧げてくれた。
「さて…レニーナ君、おうちの方だけど…レニーナ君の家は、バリケードが築かれて村に残った人達が最後に立てこもった場所らしくて…立ち寄りたいとは思うけど、建物自体が崩れる可能性があるんだ。無理はしない方が良いと思うよ…?」とフェブリカ先生はためらいがちに言う。
私は…あたしは、悩んでしまった。何か形見の…父と母の持ち物を、持っておきたい。ただ…最後に立てこもった、場所。凄惨な状態かもしれないが…。でも私が代表して答えた。
「…立ち寄らせてください、やはり父と母の遺品をそのままにはしたくないですし、形見になるものを持っていたいんです」
そう答えると、ガイさんが「分かりました、ただ本当に気をつけて下さい。建物がかなり崩れかかっているので…」といい、5人で中央の広場にある、半壊した…破壊されたバリケードで囲まれている、私の家へと入っていく。
正面玄関は入れなかったため、台所の裏口から入り…嗚呼、ここは、私の家だったんだ…。「…ただいま」そう小さく呟く。
家の中は本当に内側からもバリケードがされて…やはり、黒く乾いた血だまりや、壁などにどす黒い血しぶきが飛んでいた。私はそれを見て、本当に申し訳なく、胸が締め付けられる。
とはいえ、なるべく早めに家から出なければならない。私の部屋に行くと、ドードーのぬいぐるみがあった。懐かしさに目眩がするようだ。二人の形見ではないが、持って行く事にする。
隣の父の書斎に入ると、様々な仕事の書類であろう書類が散乱していて、本棚はバリケードに使われたらしく、床に本や物が散乱し転がっていた。
その中で、とても年季の入った手帳が落ちていて、引き寄せられるようにそれを拾い上げる。手帳の中は仕事の他は日記のように…いや、重大な事が起きた時のメモといった感じでパラパラとめくると…あ…「2635年サティナフィアの3日、シェラと俺の大切な赤ちゃんが産まれる。名前は二人で決めていた。レニーナ、産まれてきてくれてありがとう」…そう、少なくとも私が産まれてからの事は書いているみたいだ。父の温かい想いを感じ、私は目頭が熱くなる。
そのほかに…父の、騒動でガラスがひび割れたらしい、止まった懐中時計があった。知っている限りのこの世界では、時計はあるものの広くは広まっていないで、懐中時計は高価なため、時計台や鐘の音で時刻を知る事が多いらしい。いつか父の時計に再び時間を刻んで欲しい、とポケットに入れた。
あとは…騎士爵を与える旨の書状と、護民官に選出された旨の書状、それぞれが額縁に入っていたのが落下して落ちているのがあった。父の誇りでもあるもの、どこか落ち着いた家ができたら、掲げて壁にかけたい。そう思って、私は2つとも大事に抱えた。
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