第63話 父と母、そして、あたしと私
「レニーナちゃん、リィズ君が…!ど、どこ行ったんだ…!?」とヨスタナ師が言うが、「あの子は女神なのでだいじょうぶです」と嘘偽りなく言う。
「まさか本当に……?いや、しかし……?」とぶつぶつと呟きながら隣を歩くヨスタナ師。それは置いておいて、まずは君からだ。バトンタッチ。
「えっ!?ちょ、ちょっと、待って!?」とレニーナが慌てる。このややっこしい状態はいつまで続くのだろう。
「あ、あたしに、そんな事言われても…!?」
とレニーナが慌てるが、まずは君からだ、というのは、供養をするのが君からだ、ということだよ。それとも私が先でいいのかね?
「そ、それなら、あたしが!もちろん、あたしが先に、パパとママの供養を…!」というレニーナに対して、はっ、と我に返ったヨスタナ師が慌てて声をかけて頭を下げる。
「そ、そうだね!まずはロイさんシェラさん、村の皆さんの供養をしなければ。はい、これ、花束。レニーナちゃんが献花してあげてね?」
そう、少し微笑み色とりどりの花の花束を渡すヨスタナ師。少なくともファースでは、手向ける花としてはカラフルな色を手向けるらしい。
「それじゃ…!」と、「先生、お花ありがとうございます」と受け取って、献花台の前に立って、リィズが供えてくれたらしいたくさんの敷き詰められた綺麗なお花の上に花束を載せ、胸に片手を当てて頭を下げ目を瞑り、祈る。
「(パパ、ママ、ありがとう…!産んでくれてありがとう、育ててくれてありがとう…そして、護ってくれてありがとう…!村のみんなも、どうか安らかに…)」
そうあたしは祈りながら、「(どうか天国でふたりとも幸せになってね…!)」と深く祈り、目を開ける。今度は、貴女の番よ?
そう告げられた私は、改めて慰霊碑と供えられた花束を見て、そして再び頭を下げ目を瞑る。
「(私は変な子だったと思う…でも、それでも、愛してくれて、ありがとう…!ふがいなく、何も出来なかったわたしを許してください…どうか、2人とも、村の皆も、安らかに…)」
そう祈る。こればかりは宗教的問題ではない、亡くなった大切なひとを悼み、安らかに眠るのを願うのは、こればかりは、願ってしまう気持ちが湧いてしまう。
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そう私とあたしが祈ると、不思議と身体の芯が、心が、とても温かく心地良く、身体が何かに包まれるような感覚になり…そして、私達の意識は、身体を離れる感覚がし、感覚を失い目を瞑った時の瞼の内側の暗闇から真っ白な空間に、父と、母が、その姿を揺らぎ光り輝かせながら、微笑んで立っていた。
「「パパ、ママ…!!!」」そう、私達は驚き、また逢えた事に喜びの声をあげた。
【レニーナ、いや、今は二人とも、と言った方がいいのかな?また逢えて嬉しいよ】
【レニーナちゃん、また逢えて嬉しいわ、私達がついてあげられなくて、ごめんなさいね…?】
と父は微笑み、母も微笑みながらも申し訳なさそうに言った。
「パパとママは悪くないよ!二人とも、本当に護ってくれてありがとう…!」
「パパとママはわたしの誇りだよ!パパとママの元に産まれてこれてよかった…!」
私とあたし、どっちがどっちか分からない、どちらのも、合わせての、一つの声。そう…わたしは、ひとつ。私もあたしだったし、あたしも私だった。
【パパとママにはすべて、全部が大切な愛するレニーナだよ。レニーナの幸せを願ってる】
【ええ、愛するレニーナ…ずっと見守ってるわ、どうか幸せになってね…?】
そう言う父と母が見えるのが、視界が段々と暗くなっていく。
「「嫌だ!パパとママと離れるのは嫌!!!」」
「「もっと、ずっと、パパとママと居たい!!!!」」
そう、私もあたしも叫ぶが、視界が暗くなり、はっ、と目を開けると、献花台と慰霊碑の前だった。
思わず周りを見渡して「パパは!?ママは!?」と求め探すと、リィズの声が頭に響く。「ごめんなさい、2人とも、貴女への最期の挨拶を願っていて…」と申し訳なさそうに言った。
そうか…二人とも、最期まで、想ってくれていたんだ…そう、私…あたし…は、想って胸に感謝の気持ちが溢れていっぱいだった。リィズに小さく「ありがとう、叶えてくれて」と囁く。
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