第61話 レオンとレニーナ
「……あぁ……あぁ………こんな……!? リィズ……こんなに……こんなのって……!」
あたしは走り寄って何も考えず何も惑わすのはもう目に入れず、リィズの前に足を折り、ぎゅっと強く、抱きしめた。
(彼女はこんなに華奢だったんだ……)
そう抱きしめながら感じる。もう一度もう離さないよう抱きしめる。
抱きしめた横目に、彼女の目に生気がじょじょに戻ってくる。すると、まるで爆発したような声と、全力で突き飛ばす拒絶で、「……ご、ごめんなさい!!!!」と爆発的に叫び、あたしを驚くほどの力で突き放した。
そして突き放されたあたしとその距離を見て、「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」と、その距離をまるで最後の砦としているような、そういった目で、彼女にそう言わせ強いさせてしまった。
あたし自身の、罪を……その罪を、あたしは今度こそ離さないと抱きしめ、そして「リィズ……ごめんなさい……ごめんなさい……!!!!」とただただ赦しを乞うだけを、無様にであろうと、もう迷わなかった。
あたしたちはお互いに謝り合いながらずっと、ずっと抱きしめ合っていた。
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どれくらいの時間が経ったのであろうか……。本当に、どれくらいの時間が……そう、自分の腕の中に居るという安堵感を感じ、お互いにそのまま抱き合っていた。そして、あたしは、ためらいがちながら言葉を紡いだ。
「「あのね……?!」」
あたし達二人はつい目を合わせてしまった。同じ言葉が重なって、恥ずかしくなってしまって、気を取り直してまた言う。
「「本当にごめんなさい!! って、また……!?」」
完全にまた声が重なってしまった。何だかこう、出鼻をくじかれてか、少し涙が収まってきて呟いた。
「リィズ……ごめんなさい……。リィズは全然悪くなかった……」というと、息を呑む声がして、両手で両肩をつかんで目と目を合わせられ、「違うわ!? 私が悪かったの!! 本当にごめんなさい!!」と必死に言う。
「そんなことない! リィズはやっぱり、助けようとしてくれてた。やっぱりあたしの中の私が言ったように……」
その言葉に、はっとしたような表情をリィズはすると……「そうなのね。今、レニーナなのね、レニーナの気持ち、分かってあげれればよかった」と言う。
急に……なんだか、あれ?少し変、あたしが何か変だ、妙な感じ。えっ?と、あたしは言葉を紡ぎにくく……………………。
「…………予想はしていたが、実際わたしがなるとはなあ……」と、私がいうと、「今度は、レオンね?」というので、「そうだが?」と答える。
「貴女の中で…レオンとレニーナ、どうなってる感じなの…?」とリィズが尋ねる。
「さあ、むずかしいな、せいしんいがくで、『にじゅういしき』などのことばはきいたことがあったが、専門外だし、たぶんそれとはちがう、とおもう」
と私は言葉を思い出しながら思うと、【こんなのあたしじゃない! おじさん、出ていって!】という思考を私が行い、愕然とした。私も、私だって、女児なのに……。
「お、おじ……おじ……」と私が呆然となっていると、リィズが何だか急に安心したように、「それは貴女は、というより、レオンは『元』おじさんでしょ?」とまだ弱々しいが、勝ち誇ったように元気のフリをしてくれるのはありがたい。ただ、言われてぐぬぬとしかできぬこの身を呪った。
すると、何やら、あたしな私がまた叫ぶ。【おじさんは黙ってて! って……あたしの小さなころの記憶、変なのしかないわ……?!】
そりゃぁ自分でやっといていうのもなんだが、子供の頃から色々散々やらかし【ちょっとなにやってんの?! おじさん!?】まあ、仕方ないではないかね、私から見れば君こそ、突然出てきてびっくりしたのだが。
「それは置いておいて、レオンが止めようとずっとしてくれていたのね…? その……ま、まあ、少しはこう、私への敬意も頂けていいんじゃない?」と、そっぽ向いて言う。
「敬意をとてもいだいている。あれだけひどく、きみをばとうするレニーナを、よくみすてないでくれていた。リィズ、ありがとう」と私は素直に礼を言った。
「それは……そうよ。全部私のせいだか「まあそれはおいておいて!」きゃっ!?」
「いれいひの前でこんなにさわぐのは良くないだろう。まずは供養させてもらえるとたすかるのだが」と言う。
すると、はっ、として恐れと絶望したような表情で「ご、ごめんなさいっ! つい調子に乗って私ったらべらべらとして……」と、またエンドレスな、しつこいのが始まるので、げんこつをする。がつん。
「い、痛いわね!?」と頭を抱えて涙目のリィズ。ピッケルよりかはマシだろう。神の脳天に今いれし、全て世は事もなし。
ちょうど霧が晴れたようだ。というより、誰かが霧をこの時間のために起こしてくれたのだろう。だいたい予想は付くが。
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