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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第二章】私の、悪夢
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第57話 愕然と、悪夢


「市庁舎に馬車はありますので、ご計画を立てたり護衛を雇ったり、ご準備がおありかと思いますから、被災地に…弔いに、最期の言葉をかけてから、と思いますが、旅立たれる時は、お声かけてください」



 と、帰り際にロンドさんは言った。そう……そう、だ…。父と母の………最期……遺体を、そして、父が護ろうとした私の故郷のリンドル村へ、行って確かめなければならなかった。


 そのような当たり前のことまで、そう言われるまで完全に失念していた自分の心の冷酷さがあまりに恐ろしく、愕然としてしまった。


 父と母の事を想うと言いながら、その最期を、その遺体に、私はどれほど言葉を尽くしてもたりないほどの「ありがとう」と、どれだけ言葉を尽くしても足りないほど愛していたかを、そして…その2人に、父と母に、別れを告げなければ、ならないことを…思い出した。


 私が立ち止まり下を向いて泣き出してしまうと、フェブリカ先生は…とても、優しい、そして洞察力のある先生だ。全てが悟られてしまったのだろう。


「明日、お父さんとお母さんに、会いに行こう?」


 私は言葉にならないでただただ頷いて、そうただただ頷いて、お願いをした。


-----------------------


 夜のとばりの中、木々がなぎ倒される音、獣としか呼びようないものすごい雄たけび。轟音のする大勢の獣たちが、近づいている、それらの音が大きくなってくる。


 私は夜空の中に浮かんでいた。ふわふわとしながら、その恐ろしい魔物の行軍の様に恐怖し、必死になって周りを見渡す。家の前に父と母が居た。


「パパ、ママ!獣が!魔物たちがやってくるの!スタンビートが起きてる!早く一緒に逃げよう?!」


 そう、私の声が届いたらしく、父と母は私の方を見上げて微笑んで言った。


「私達には神様が、ユースティア様がついているわ。だから大丈夫。護って下さるわ」


「そうさ、ルクス様が魔物たちをやっつけに来てくれる、必ずだ」


 そう2人は微笑んで微動だにしない。私は「どうして下に降りれないの!?とにかく、パパ、ママ!逃げよう!!そうじゃなきゃ2人とも、死んじゃう…!」


 だが、父と母は天を見上げて膝をつき祈り始めた。私は必死になって叫んだ。


「神様なんて来ないんだよ!来てくれないの!いないの!早く逃げよう?すぐ馬車に…」


 そう叫んでいると、轟音がもはや迫り、その瞬間、少し離れた林の中にいくつもの赤く光る獣の眼が浮かんだかと思うと、爆ぜるように木々は吹き飛び、村の柵もあえなく突破された。


「パパ!!ママ!!逃げて!!」


 月明かりの中、眼を赤く光らせ突撃する真っ黒い大勢の躯体。あっという間に私の家のとこまで辿り着き、まるでステージかなにかのように父と母を獣たちが囲んで輪のように止まる。父と母はそれでも微笑んでいた。


「パパ!!ママ!!」


 そう叫んだ瞬間、真っ黒な体躯が父と母のいた輪を競う用に喰らい付くように、閉じて、当たりには血の匂いが立ち込め、私は「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」と頭を抱えて叫んだ。


--------------------------


 チチチ、チチ


 私はそう大声で叫びながらガバッと顔を上げるとベッドの上、そう、宿だった。またこの夢で、スタンビート以来ずっと毎晩この夢を見る。シャツもベッドのシーツも布団のシーツも、すごく冷たい嫌な汗でべったりとしていた。


 なんとなく、また指が、動いた。


神など存在しない


 地球というところでの意味が違う。地球では神が存在するのかを考え悩み、信じる人は信じながら殺されたり、信じない人はお前は救われない存在だと信じる人に迫害されたから、信じられなかったのだろう。


 だがこの世界では、嫌というほど神がいる。神、神の眷属、天使、それを主張するところの、モノ。存在はしている、自称しているものなら。


 私はまた今書いた、指の汚れでインクで書いた訳でないのに字が浮かんでいる、その宿の漆喰の白い壁に、私は機械になったように、無意識に無感情に指を動かし書き続けた。


神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない



 待った、頭を動かそう、よく考えよう、確かに万能な「神」じゃないかもしれない。リィズが万能の「神」な訳ではない、でもあんなに優しい心の持ち主じゃないか、「神」でも「神」でなくても、リィズはリィズだ、リィズに謝って……あああああ!!!


  まただ!!うるさい!!!だいたい…あはは!!もう「アイツ」は、現れない。あれだけのことを、私は言ったし、したのだから。二度と現れない。もう手遅れ……だからもういい!!!!私は今度は故障した機械のように、震えて定まらない指で、歪んだ文字を描き続けた。



神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

パパママごめんなさい

リィズごめんなさい


-------------------


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