第54話 受付番号38番
宿屋を出て…宿屋の女将さんが、驚いた顔をして、「あんた、レニーナっていう子かい?」というので、「はい」と答えると、女将さんはため息をついた。
「難民なのは分かるけど…あまり荒み過ぎて周りに当たるんじゃないよ?隣の部屋から女の子の怒鳴り声が毎日聞こえる、って言われてたんだ。ちょっとはしっかりおし?」
と言われ私は赤面をしながらも、深深と頭を下げ「申し訳ありませんでした、ごめんなさい…」とつたえる。女将は、軽くため息をつきながら言った。
「お嬢ちゃん、あの護民官のロイさんの娘さんだろう?ロイさんは私達庶民の声をしっかりと聴いて、領主に交渉してくれたり、住民が要求していた新しく整備するものを整備させたりしていたんだ」
「そんな立派なかたがこういう事になるのはとても哀しいけど…嬢ちゃん、あんたを護りたくて、ロイさんは村に残ったんだ。ロイさんの名に恥じないようにしな?」
私はあまりに耳が痛い言葉に「はい、そう頑張ります…」と答えて、先生が「それじゃ女将さん、すみませんが外出してきます」といい、「あいよ」という声が後ろに聞こえて扉を開いて外へ出た。
8日ぶりくらいか、外に出るのは…。そう思いながら、やはり残酷なほど蒼い空、差し込む日差しを受けて、私は消えてなくなってしまう感覚を覚える。
「それじゃ行こう。副官さんに頼めばすぐだと思うからね」
そうフェブリカ先生は微笑み私の手を取り、「はぐれないでね?」と言われて私は再度ぎゅっと手を握り返す。
まだ朝であったが、市庁舎はそれなりに賑わっているようだった。
「村の、リンドル村にはいつ帰れるんだい!?夫の遺体がまだあるんだ!」
………私達、難民も並んでいるようだった。市庁舎の案内板があるところにある受付案内所で、フェブリカ先生は「すみません、護民官副官のルンドさんはいらっしゃいますか?」と尋ねる。
「失礼ですがアポイントをお持ちですか?」
と受付嬢がいうとフェブリカ先生は困ったように言った。
「すみません、アポイントはないんですが、リンドル村の難民の、護民官のロイさんの娘さんが、頼る事ができる家系を調べたいと思いまして」
と先生にしては強めにお願いすると、受付嬢は「ロイさんの…!!し、失礼しました!」と言って、「受付番号38」と書いた木の札を渡して、「このまま護民官室へどうぞ!護民官室のある3階に副官だったルンドさんがいらっしゃいます!」と頭を下げた。
私達は階段を登って3階を目指す。父の副官だというがどんな人なのだろう。
三階に着くと、フロアに衛視のような人達がいて、「ちょっと立ち止まって」と言われたので先生と2人、立ち止まる。
「護民官副官殿は今、とても忙しい。知ってるだろうが、リンドル村でスタンビートが発生してな。アポイントはあるのか?」と不審げに私達を見る
フェブリカ先生まったく気にしていないように笑顔で「受付番号38」を渡すと衛視2人は驚いたような顔をした。
「実は護民官だったロイさんの娘さんの身内を探すために、行政の記録を調べさせて頂きたくて…」と先生がいうと、衛視2人は最敬礼をして「もうしわけありませんでした!」と言う。
「護民官の娘さんだったのですか…どうぞお通り下さい!」
「娘さん…お名前は?」と聴かれ、「…レニーナです」と答えると、もう一人の衛視は涙を浮かべて私の手を取った。
「つらいだろうが、頑張ってな。君のお父さんのロイさんは、本当に偉大な、護民官の鏡のような人だった…!」と、手を放して、「元気だしてな?」といった。
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