第51話 フェブリカ先生
そうして時間が経って、「ありがとうございました」と顔を赤くしながらフェブリカ先生から離れて宿のこの部屋にある椅子に座る。
「ところで………やはり、許せないのかい……?」と、フェブリカ先生は遠慮がちに名を出さずに言う。
「はい……どうしても、やっぱり、どうしても!!納得がいきません!!これだけ神と人が近い世界なのに…」
と私は先ほどのようには狂乱せず、ただただ悲しいと、ただただ喪失感を、とても覚えていた。それは、さっきのような心が叫ぶ邪魔は無かった。
「そうかぁ……僕ぁ、リィズ君がどういう身の上でどうレニーナ君と知り合ったのか分からないが、レニーナ君のとこまで来て、急いで危機が迫っている事を知らせたのは、感謝すべき事だと思うよ」
とフェブリカ先生はテーブルをはさんだ向かいの席に座り言った。
「もし見捨てる気で、助ける気がないなら、わざわざ教えに来るかい?もしあの情報がなかったら、夜に僕らは皆、寝たまま僕達は文字通り全員殺されてるよ」
と、先生は一言一言を丁寧に言い含めるように言いながら私の瞳を見つめてくる。
「救えなかった、と、救わなかった、の間はとても広く隔てられてる。リィズ君の場合は、彼女が救える力があったとして、君は、『救わなかった』ほうだと思うのかい?わざわざ魔物が迫ってる事を君に、他ならぬ君に教えにきたのに、だよ?」
私は言葉をじっと聞きながら、しかし、口の中がからからで、焦燥感なのか、それとも…………罪悪感、なのか……‥私は、一言も発する事ができず、俯いてしまった。ヨスタナ師の言葉を分かって欲しい。つらい、悲しい。同じだ。でもリィズのせいだと、悲しみを憎しみに私は変えてしまって母と父への想いを忘れてしまって…ああああ!!!!アイツの事なんていい!!うるさい!!!黙ってて!!
「そうだね…君は感情的に整理できていない。まだあの事があってから一週間だ。今はゆっくり休めばいいさ。だが、リィズ君にこれまでのように、本当かどうか分かっていない事を、怒りで決めつけてぶつけてはいけないよ?」
そうフェブリカ先生は答え、私は、思わず、カラカラの口で言葉に言いにくかったが聴いてみた。
「…………それは、そういうように、『アイツ』から頼まれたのですか?」
そういうとフェブリカ先生は「まさか」と一笑に付して、こういった。
「あれだけレニーナ君の事を心配し続けていて、あれだけ酷く言われあれだけ拒絶されても、それでもレニーナ君の事を見捨てない。そんな女の子だから、信じてあげて欲しい、かな?」
そう答え、「ははは、我ながらキザだったかな、僕ぁこれでもロマンティストでね?」と冗談めかしくふざけたように言って、つい私は「くすっ」と笑ってしまった。
「1週間ぶりに笑ってくれたね。レニーナ君、これからの人生、厳しいかもしれないけど、僕ぁ君を見捨てない。これでも教師の卵だからね。まずはご飯をちゃんと食べるんだ。そじゃないと、何をする事にしても、何もできないからね」
そういうと、「食堂から食事をもらってくるよ。レニーナ君、少し待っててね?」とフェブリカ先生が出ていく。
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