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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第二章】私の、悪夢
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第49話 悪夢と、神

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 夜のとばりの中、木々がなぎ倒される音、獣としか呼びようないものすごい雄たけび。轟音のする大勢の獣たちが、近づいている、それらの音が大きくなってくる。


 私は夜空の中に浮かんでいた。ふわふわとしながら、その恐ろしい魔物の行軍の様に恐怖し、必死になって周りを見渡す。家の前に父と母が居た。


「パパ、ママ!獣が!魔物たちがやってくるの!スタンビートが起きてる!早く一緒に逃げよう?!」


 そう、私の声が届いたらしく、父と母は私の方を見上げて微笑んで言った。


「私達には神様が、ユースティア様がついているわ。だから大丈夫。護って下さるわ」


「そうさ、ルクス様が魔物たちをやっつけに来てくれる、必ずだ」


 そう2人は微笑んで微動だにしない。私は「どうして下に降りれないの!?とにかく、パパ、ママ!逃げよう!!そうじゃなきゃ2人とも、死んじゃう…!」


 だが、父と母は天を見上げて膝をつき祈り始めた。私は必死になって叫んだ。


「神様なんて来ないんだよ!来てくれないの!いないの!早く逃げよう?すぐ馬車に…」


 そう叫んでいると、轟音がもはや迫り、その瞬間、少し離れた林の中にいくつもの赤く光る獣の眼が浮かんだかと思うと、爆ぜるように木々は吹き飛び、村の柵もあえなく突破された。


「パパ!!ママ!!逃げて!!」


 月明かりの中、眼を赤く光らせ突撃する真っ黒い大勢の躯体。あっという間に私の家のとこまで辿り着き、まるでステージかなにかのように父と母を獣たちが囲んで輪のように止まる。父と母はそれでも微笑んでいた。


「パパ!!ママ!!」


 そう叫んだ瞬間、真っ黒な体躯が父と母のいた輪を競う用に喰らい付くように、閉じて、当たりには血の匂いが立ち込め、私は「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」と頭を抱えて叫んだ。


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「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」、私はがばっ身を起こし、激しい呼吸と鼓動で目が覚める。あの日以来、この夢ばかりを見る。見なかった日はない。



 神など存在しない。


 そう、私の指が壁をなぞる。またそして、漆喰の白いキャンバスに指でなぞり、それを呟くように声に出して唱える。


「神など存在しない」


 私は再び壁をなぞる。神など存在しない、と。


神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない


 …………あの後の事は。。。フェブリカ先生が先行して父の副官と領主に状況が迫っている事と難民の受け入れの要請を書いた書類に手渡したそうで、私達が乗った馬車は、最高速度なので、今までで一番揺れたが、飛ばして一路ウェスタ市にたどり着いた。


 ウェスタ市の衛兵は軽くチェックしてすぐに門を通し、広場に止まった馬車に副官の補佐だという人が来て、避難民の状況を尋ね、それぞれ、神殿内の許されるところ……許される?!いったい誰が許すの!?許す許さないなんて偉そうに言える存在なの!?何もせず父と母とみんなを見殺しにした、神を自称する存在なんかが?!そんな奴らなんて…!


………落ち着いてきた。さっきはその後10分ほど怒鳴り散らして、1時間ほど絶望しふさぎ込んでしまっていたのを思い出した。珍しい事はなく、あれからずっとそういう事を私は繰り返してる。だからなるべく「彼女」の事は考えないようにしている。


神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない

神など存在しない


  ここは避難民に割り当てられ臨時に領主が借り上げた宿屋で、もうあの事件から1週間は経ってしまった。ここに泊まってから、毎晩、毎晩、私はこの悪夢を見ている。壁の漆喰の白さに「神など存在しない」とキャンバスに何度も何度も何度もなぞって書いたため、うっすらだけど色がついて、指で書いたのに書けてしまったかもしれない。



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