第45話 女神ユースティアとの対談
するとさきほどの中年の神官長が小走りにやってきて、興奮した感じ満面の笑顔で言った。
「素晴らしき幸運で光栄な事に、女神ユースティア様が、聖堂にご降臨されました。レニーナちゃんにご関心があるようです。さあ、こちらへどうぞ!」
と言われて、母は「まぁ!それはなんてありがたい…!」と感動した様子なので、さっそく、ベイクドチーズケーキが実際好きなのかを聴けるなあと思いつつ、私も「わぁ!とってもこうえいです!」と笑顔で言った。
そして「さあ、こちらへ!神処へ参りますので、ご夫婦はそこでお待ち下さい」と促されて私は 赤い絨毯の上を案内され歩く。
しばらく歩くと大きな扉で、両脇にユースティアを模ったらしい女神像が2体左右に立っている。
「ここが聖堂です。どうか絶対に失礼のないように。くれぐれとお願いしますよ?」
と神官長が極めて真剣に頼んできたので、私は元々失礼などしたことがなく、普段から私は、相手に対して、常に丁重で敬意ある態度で相手に対しては接しているので、当然頷いて「わかりました!」と答えた。
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神官長が扉を恭しく開けて後ろに下がり私が聖堂に入ると、レースで囲まれた、寝所より広いような空間があり、「神官長さん、お疲れ様です。レニーナちゃんとお話したいので外でお待ち頂けるかしら?」とそこからユースティア女史の声が聞こえ、扉が外から閉められた。
「ようこそ、聖堂へ。この前ぶりね?レニーナちゃん」
と、前に聞いたユースティア女史の優しそうな声がし、微笑みながらレースのカーテンから出てきて、その「私、女神です!」というような理想像を体現してるような姿を現わす。
「やあ、ユースティア女史、このまえぶりだね。ところでベイクドチーズケーキは好きなのかね?」
と、私は丁寧に敬意をもって挨拶したら、ため息とともに「変わってないわね…ある意味すごい人間なのかも」と呟く声が聞こえ、言葉が続いた。
「貴女はある意味すごいわね…。私が降臨したら、神官長を始め、人間のみなさんは敬意と信仰心を持って接してくれるのに。本当にある意味すごいわ…。あとベイクドチーズケーキは好きではあるわよ?」
そう言われてあの出店が言ってたのは本当だったのかと思いつつ、褒められてるのか、褒められてないのか、よくわからないので言った。
「それはほめてるのかね?まあいい、洗礼とやらを受けに来たが、私はどうすればいいのだろうか?」
それを聴いたユースティア女史はため息をついて言った。
「そうね、本来は私に、信仰を誓う相手の神の名を告げて、その信仰する神が現れ、祝福を与えるのだけど…貴女は信仰を誓える神が、いるのかしら…?」
とてもこう、不審げにそう尋ねてくるが、私は一応尋ねてみた。
「ふむ、しんこうはともかく、いちおうそれなりに長い付き合いなリィズに、しんこうというか、まあ、べんぎてきになってもらおうと思ったんだが…できるのかね?」
と私は敬意をもっていうと、またため息をついて言った。
「ええ…できる、といえばできるけど…。そのかわり、12神柱全員に信仰を誓った、と思われるわよ。5歳児ではあり得ないし、疑われるのではないかしら…?」
やはりそうなのか、仕方ない、ユースティア女史にしよう。
「貴女…『仕方ない』はないでしょう…?二番手的に言われるのは、わたくしだって、やっぱり傷つくし悲しいわ…」
と様子がおかしいので、私は宥めるように言った。
「いや、しつれいした。にばんてのつもりはなかったのだが。こう…やきゅうでいう、『代打』みたいなものだから、気にしないでほしい。グルード氏より100万倍マシだと本心から思ってる」
ユースティア女史は、きょとんとした顔で私に「やきゅう?」と不思議そうに尋ねるが、軽くため息をついて言った。
「ダイダ、というのが何か分からないけれど、二番手よりは、良い意味で言ってるのを願うわ…。グルードと比べられるのは、どうなのかしらね…?それじゃ、加護を…って、もう貴女は持ってるものね。それじゃ、信仰告白をしてくれる?」
以前なら「無神論者に何を馬鹿な」と言ってたであろうが、この世界は神が本当にいて人と密接なので、嫌というほど神の存在を感じるので言った。
「それでは、わたしはユースティア女史をべんぎてきにしんこうします、これでいいのだろうか」
というと、またもやため息をついて、「便宜的にって…すごい信仰告白で、頭が痛いわ…」とぼやくと続けて言った。
「それじゃあ…これに『はい』って言ってくれる?汝、神たる我に信仰を誓い、我が心に沿い生きる事を誓うか?」
と問われたので、私は心を込めて敬意をもって答える。
「まあ、いちおう母が世話になってるし、それなりにかんしゃはしているので、こたえは、『はい』だ」
そう私がいうと、またもやため息をついて言った。
「貴女ね…それはもう、ため息くらいつくわよ、わたくしだって心を持っているのですから…。でもそうね、これで私が手を貴女の頭に乗せて、祝福を与える、のだけど、貴女祝福どころか加護を持っているから、必要ないわよね…」
とまたもや、ぼやく。この世界の神は実に人間的で、物理法則を吹き飛ばす摩訶不思議な力がなければ、ユースティア女史は上品なブルジョワの貴婦人とかにしか見えないくらいだ。
「ぶるじょわ…?どのようなものか分からないけど、褒め言葉として受け取っていいものなのかしら…。まあ、これで終わり、というか…な、なにこの内容!?………ステータス、見てみたらどうかしら?」
なるほど、私は天に手をかざして、「すてぇたす、おーぷん!」と唱えると、ステータスの投影画が表示された。
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【氏名】レニーナ・フィングル
【種族】人間
【性別】女
【年齢】5歳
【職業】学生(幼稚舎)
【信仰神】女神ユースティア(便宜的)
【レベル】Lv1
【HP】15/15
【MP】1000000000000000/1000000000000000
【スキル】
〇男神ホーネット
・「ウィキサーチLv1」
・「歴史邂逅Lv1」
○女神ユースティア
・「治癒術Lv1」
・「ポーション作成Lv1」
○男神ルティアス
・「ウィンドカッターLv1」
・「スカイアイLv1」
○女神サティナフィア
・「土牙地獄Lv1」
・「豊穣の祈りLv1」
○男神カルディウス
・「ウォーターカッターLv1」
・「水の記憶Lv1」
○女神イーステシア
・「物品鑑定Lv1」
・「契約Lv1」
○男神グルード
・「ジャッジメントLv1」
・「邪心鑑定Lv1」
○女神ルクス
・「ウェポンマスターLv1」
・「戦女神召喚Lv1」
○男神オルテール
・「イミテートLv1」
・「魅入られし調律Lv1」
○女神ミレーナ
・「チャームLv1」
・「幸運の女神Lv1」
○男神フェルザード
・「ファイアボールLv1」
・「天候操作Lv1」
○女神スセジ
・「ディスペルLv1」
・「奴隷契約Lv1」
【加護】
主神フェンリィズの加護、男神ホーネットの加護、女神ユースティアの加護、・男神ルティアスの加護、女神サティナフィアの加護、男神カルディウスの加護、女神イーステシアの加護、男神グルードの加護、女神ルクスの加護、男神オルテールの加護、女神ミレーナの加護、男神フェルザードの加護、女神スセジの加護
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ふむ、信仰神がユースティア女史になっている。なるほど、これでユースティア信徒、という事になるのか。そう私は少し複雑な気分でいると、ユースティア女史がまたもやため息をついた。
「その【信仰神】がわたくしなのに、『(便宜的)』って、わたくし、初めてみましたわ!?貴女は本当に、ある意味すごいわね…」
ふむ、褒めてるのかけなさているのか分からないが言った。
「おかげで、しんこうしんができた、礼を言おう、ユースティア女史。これでおわりなのかね?」
またもやため息、そんなにため息ばかりついていると、胃に穴が空くのではないか、と思っていると「わたくしに胃などありませんわ!?」とまたもやこの世界の神の謎が明らかになった。ベイクドチーズケーキは食べたらどこへ入るのだろう。
「ええ、終わりよ?正直、こんな異例過ぎる洗礼って、わたくしリィズ様に産んで頂いてから長く生きていますけど、初めてですわ…」
と、またもや褒めてるのかけなしているのか分からない事を言う。
「それでは、貴女の前途に祝福あれ。正しく生きなさいね?」
「ああ、正しいのていぎがもんだいだが、そうあろうと思う。それではユースティア女史、これからよろしくたのむ」
「ええ、色々と複雑な気分ですが、確かに貴女は基本的には悪い人間ではないと思いますし。ただ…その、もう…すさまじく言葉が悪い癖を、直した方がいいですわよ?」
と、最後にユースティア女史は言い、「それじゃ、私は寝所に戻るわね、ごきげんよう」とまるで頭痛がするように頭を抑えてレースを開いて中へ戻った。
私としては何だか同じく釈然としない気持ちもあるのだが、一応はこれでユースティア信徒、まあ、火あぶりされたりはしない立場になったのだろうと、聖堂のドアを開けた。
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