第44話 ユースティア神殿へ
そんな事を考えてるとウェスタ市に着き、衛兵さんが「おはようございます、護民官!あ、お子さんの洗礼の日なんですね。お嬢ちゃん、頑張ってきてね?」と衛兵さんが私に向かって笑顔で手を振り、私も手を降って答える。
そうして荷馬車は一応チェックを受けた後、証明書を提示して市内へと走り出していく。大通りの両脇には建物で構えている店や露店などもある。荷馬車はまた噴水のある大広場に止まり、私達は下車をして、トータさんにお礼を言い、トータさんは荷馬車をまた走らせて行った。
「そういえば、ユースティアさまの神殿はどこにあるの?」と私が疑問に思っていた事を聴くと、父が言うにはこの中央広場からさらに真っすぐ行ったとこの丘の上らしい。神殿というと丘の上なのだなあと妙に納得してしまった。
中央広場から向こうに小さく見える神殿へと歩いて行く。その間に神殿に近いからだろうか、中央広場に近いからだろうか、出店的なものが結構あって色々目を惹いた。
(あ……あの髪飾り、可愛い……♪)
って、はっ!?わ、私が演技なく、髪飾りを可愛いと感じるとは、ちょっと前世の事を考えると衝撃的であった。しかし、考えてみれば…レニーナの身体は女児、脳は女子である。
記憶こそ私のものだが、身体は女性なのだ。ホルモンバランスによって人格はそう変容することがあるらしいし…と私は一人で顔を真っ赤にして自分の中で言い合いをしていた。
母と父と談笑しながら歩いて、そうこうしているうちに神殿が近づいてきた、「ユースティア様も好まれるベイクドチーズケーキ」……ふむ、会う機会があったら本当に好きか聴いてみて、嘘だったら、詐欺だと…って神と話して嘘だと聴きました、といったら、それこそ信じてもらえても信じてもらえなくても、立場的に色々ヤバくなるだろう。
神殿の前に立つとかなりの大きさだ。見た目は神殿というより、キリスト教のカトリック教会のような作りだ。神官の青年が立っていて、「これは護民官殿。今日はどうなされましたか?」と笑顔で訪ねてくる。
「今日5歳になった娘の洗礼をしにきました。神官長にお取次ぎできますか?」
と父が珍しく敬語で言い、神官は「わかりました、少々、長椅子に座りお待ちを」と奥へと入って行った。結構キリスト教会に似た作りの教会の長椅子に座り、教会全体、あ、いや、神殿全体を見渡してみる。ステンドグラス、そして説教を行うための演台、その背後の左右に立っているユースティアの像。
なかなかそれっぽい雰囲気があるな、と思っていると、奥から中年の神官がさきほどの青年を伴いやってきた。彼が神官長なのだろう。
「これは護民官殿、よく起こしになりました。こちらの娘さんの5歳の洗礼ですね、分かりました。少しお時間を頂けますか?神処の聖堂の準備をしてまいりますので」
そう言われてよろしくお願いいたしますと礼をして、再び長椅子に座る。
「かみどころの、せーどー、ってなんなのかな?」
そう私が呟くと、母は微笑みながら答えた。
「女神ユースティア様が、ご降臨される時に用いる、入ってはダメなところが神処、そしてご降臨されるのが聖堂よ。それともユースティア様の神像の前で、ご降臨を願う祈祷を行う場でもあるわね。失礼はあってはならないから、普段は立ち入り禁止になってるの」
なるほど、ラウンジみたいなものか、本当にこの世界は、神と人間の距離が近いらしい。
-------------------
※よろしければ作品のブックマークとご評価をして頂けましたらとても嬉しいです!励みにすごくなります!よろしくお願いします!




