第40話 女神フェンリィズと異世界小説りたーんず
「もう、お願い、色々勘弁して……。。。私だって色々立場があるし、イメージもあるし、それにちょっとくらいは、少しだけは、こう、『異世界モノ』の女神っぽくしたっていいでしょ!?」
ずっと天界から帰ってきてからこの調子である。私の部屋にあの後、リィズと手を繋いで転移し戻ったが、リィズはよほどその「異世界モノ」とやらが好きらしい。
ふと、私も読んでみたいと思ったが、この異世界で「異世界モノ」といったら、地球の普通の書籍も「異世界モノ」に入るのでは?
その地球の書籍でも「異世界モノ」となると、異世界の異世界モノ、というとなんとも不思議な感じに思ってしまった。
「もーーーー!!そういう変な事ばっっかり考えてるから、貴女、追放されるのよ!って………。。も、もしかして、貴女も、『異世界モノ』に興味ある!?そっかー!興味あるんだ?そっかそっかー!それならそう素直になりなさいよーーーー!!」
と、急に大喜びで「同志」を見つけたというようにフレンドリーに、肩をばんばん叩いてきて、もしかして私がツィンマーヴァルト村の国際会議などや様々な場で、各国や祖国の「同志」達と喜び語らっていた姿は、もしかして他人からみたら、こんな感じだったのだろうか、だとしたら嫌だなあ、と思ってしまった。
「貴女、また余計な事考えてるわね?でも、今日は許してあげるわ!でも、うーーん?興味あるなら『布教』したいけど、でもでもこれ、貴女の地球に居た時から、だいたい100年後の本が多いのと、貴方の祖国の言語のは本当数えるくらいしかないしーー、英語ならOKなんだっけ、なら特別に貸してあげてもいいわよーーー?」
私に「布教」といわれても、まさか自分の言うことを信じろと、いまさら何か「教え」とかを説かれたりするのだろうか。
考えようによっては「布教」は大変だ。まず駆け出しの頃は、「私は神です」と自称しても、誰も初対面で「ああ、貴方は神様なのですか、信仰します」とはならないだろう。
本当に「神」かどうか分からないだろうし、信じてくれないだろうから、初期は神自身あちこち回って実演販売的に奇跡でも起こして訴えかけて回って歩くのだろうか。
神といっても、意外とブルジョワ民主主義のドブ板選挙活動や行商人の実演販売のように、泥臭くも涙ぐましく地道に頑張っているのかもしれない。
そう私がまた慈しむ目で見ると、リィズはまた頬を膨らませて怒ってぽこぽここっちを叩いてきて言った。
「もーーー!!だから貴女、ちょっと神様に失礼すぎない!?そうじゃなくて………その、もう、いいわ……せっかく同志がまたできたと思ったのに…」
かなりしょんぼりしているリィズ。さすがに罪悪感でヤバい。慰めるように私は言った。
「な、なるほど、そういう本があるのだね!いやあ、読みたいなあ!リィズに色々教えてもらおうと思ったのに!」
私は気遣いができる女児である。
そう私が言うと、リィズの目がキラン!と光った気がした。嫌な予感がすると、肩をがしっ、とつかまれて、ちょっ、顔が近い近い近い!困る!一気に詰め寄られてものすごい怒濤の勢いでマシンガントークが始まった。
「こう私も詳しい訳じゃないんだけど1980年代に『○竜伝』や「エス○リオンの少年」とか名作がやっぱオススメで90年代には『魔法騎士レ○アース』とかあとそうね『ソー○アート・オ○ライン』とかもその種類に入るしネットでのがやっぱりもうすごくたくさんあってそれでねそれでねそれでね!!!」
…………時を止めていてくれたのが良かったのか悪かったのか。解放されるまでどれくらいの時間が経ったのか。世界の真理を聴いた時よりも、ガチで真剣で言葉も濃縮された圧倒的な「布教」であった。
私はそれが終わり、「貴方のウィキサーチで読めるようにしてあげる!あ!そろそろ私帰るわ!それじゃ、またね!」とリィズが去る事には疲労困憊だった。
…………私は気遣いができる女児である。
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