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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第一章】リンドル村の幸せな生活
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第38話 12神柱からの加護

「堅物のグルードとその真逆の不真面目なミレーナ、良識派のユースティアが認めたんだから、みんな、そろそろいいでしょう?」


 そうぐるっと12人を見渡すようにすると、しぶしぶ、というのが伝わってくるような感じに、残りの9人も頷き…いや、1人が手を上げた。


 こう、黒い喪服のように質素に感じる漆黒の布をまとい、黒い頭から被る、顔の部分は黒いレースで隠された女性…いったい誰なのだろう。


「私はスセジと申します、レニーナさん。慈愛、奴隷、忠誠、罪人、娼婦、赦しを司りし女神スセジ、といえば、分かりやすいでしょうか」


 思い出した、神カタログで、妙に黒づくめなので逆に目立って覚えていた女神だ。それにしても、慈愛や赦しや忠誠は分かるが、奴隷、罪人、娼婦を司どるとは珍しい気もする。


「ふふ、彼らは救われるべきですから。それはレニーナさんのお立場ならおわかりになるのでは?」


 確かにその通りだ。奴隷制度は論外だし、罪人も基本的にはいずれ赦されるべきだ。娼婦は最古の職業とはいうが、好きで娼婦をしている者はどれだけいるか。


「なるほど、確かにそのとおりだ。それらの人々を救おうとする貴女に敬意を表したい。スセジ女史」


 そういうと、スセジ女史は頷き、「お話をしたかったものですから。フェンリィズ様、中断してしまい申し訳ありません」と後ろへ下がった。


 とスセジ女史が言うと、リィズが、「驚いた…貴女、神に敬意を抱けたのね!?」と私をまじまじと見て言う。


 失敬な、私は単に神だからというのみでは敬意を頂かないだけで、敬意抱ける相手なら抱ける。


「なら、なんで私には敬意を抱けないのよ…?!………って……い、いえっ、言わなくていいわ!聴いたら傷つくと思うから!」


 と、恨めしい顔で見つつも慌てて取り消し、再び「他の子達はいいわね?」と12人を見渡して尋ねると、今度は手を上げるものがおらず、またスセジ以外はしぶしぶと、スセジは納得がいったように頷いた。


「まあ、それに、分かってるでしょ、私の加護があるって事は、あなたたちが認めたくなくても、12神柱の力をこの子は借りることができる、ってこと。まあ、反則、チートよね!」


  と、何だか楽しそうに…ああ、「異世界モノ」とやらの中でチートというのがお約束らしいので、楽しいんだろう。「主神」とやらがそんな人物で大丈夫なのだろうか。


「ちょっと……聞こえてるからね?あ、あと、その話はみんなには無しだから!?」


 なんだか慌てているが、まあ、思考がまったくプライバシーのかけらもなく読まれているのは困ったものだ。まだNKVDの監視のほうがマシなのではないだろうか。


「それじゃ、12神柱よ、彼の者に加護を!まあ、納得いかないのは分かるけど、悪い子じゃないのよ、本当は」


 と全員をぐるっと見渡していった後、優しい表情を浮かべた。半数がしぶしぶ半数は普通にといった感じで席を立って私を中心に円になる。


 そして各それぞれが「彼の者に加護を!」と唱えると、私の身体は全体が荘厳な12…いや、光は12色はないのだが、そうにしか見えない12色の光に包まれ、身体がまるで焼けるように熱く、また精神的には物凄く心洗われ神聖さに涙するような感動を覚え、実際に涙が流れてしまった。


 私の心の中には、父と母や村の皆を想う時に感じる、心から湧き出す温かさが溢れて心を満たし、そしてそれを支えてくれている存在なのだ、という12神柱とリィズへの素直な感謝の念が溢れ、それが混じり合い、身体の火照りだけでなく、心もまた、これまでに感じた以上の感謝の念が胸を満たして、私は涙が止まらず手を胸に当てて収めようとした。


 そう、している間に全身を覆い私を包んでいた様々な色の光がだんだんと弱まり、収束していった。


 そして段々と身体の火照りは収まってきて私も心が落ち着き、「ふぅ…」と至福に満ちたあの状態の余韻に浸り息を吐き出したが、私のそういった姿を観た12人は、「ほう、一応は神聖さを感じる感性があるようだ」「まあ、人の心はあるようですね。そのうち我らの力と偉大さを分かってもらいましょう」「ああいう事言ってたのに涙流して可愛いー♪」と様々な反応があり、恥ずかしくて顔が真っ赤になった。


 こほん!!!それはそうと、「加護」だの「力」だのと言われたが、具体的に何ができるのだろうか。私には信仰心など一切無いし、敬意といわれても…まあ、母が世話になっているユースティア女史と…まあさっき話した感じで敬意は抱ける相手だと思えた、アイラム女史と、頂ける相手には抱しているが…。


「貴女ね…本当、信仰心はもう貴女には諦めてるけど、せめてそれ以外の神と私にも、敬意くらいはあってもいいんじゃない?神への敬意ならなおいいけど、せめて神とか人とか問わず、一般的な意味での他者への敬意くらいは……。パーティー追放されたのって、貴女の性格、かなり大きい気がするわよ?」


 失礼な、私にだって敬意や礼儀くらいは持ち合わせている。だがまあ、結果的には追放されてしまった立場としては耳が痛い。



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