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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第一章】リンドル村の幸せな生活
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第37話 女神ミレーナと男神グルード

「あら、可愛い娘。おねーさんがイイこと教えてあげるわよぉ?もともとは男だったんだっけ、だったらナニがイイか分かるわよねぇ?」


 ずいぶんと露出度の高い、赤毛のショートヘアで褐色肌の、まあ、いわゆる淫靡というやつなのであろう雰囲気を出した女性が、私の方に挑発的に言ってきた。


「5さい児に何を言ってるんだね、きみは。ああ、きみはアレか、神カタログに乗ってた、なかなか、たいはい的なしゅみをしているミレーナ女史か」


  するとまたもや挑発的にボディラインをいかにも男性が惹きつけられそうな感じによじらせ言った。


「信仰する神を選ぶのにコイントスで決めようとするなんて…貴女、なかなかイイわよぉ?私はこの子に加護あげちゃうわぁ」


  そう言うと、やたら厳めしい感じの壮年の古代ローマ人の服装のような白髪交じりのブラウンの髪を刈り上げた男性が怒鳴るように言った。


「バカもん!5歳児に挑発するお前も、よりにもよって、コイントスで儂かユースティアに決めようとした愚か者のこの罰当たり者も、お話にならん!私は加護など絶対やらんぞ!こんな者には!」


  ふむ、コイントスで…ユースティア女史は、あの銀髪の女性だったので、コレがグルード氏だろうか?


「いかにも儂が正義、法、衡平を司りし神、グルードである!貴様のその不敬な精神をたたき直してやる!覚悟するがいい!」


 ふむ。真面目バカ、あとプライドが高い。「何だとお!?」あと声がうるさいが、どの辺が正義だったり衡平なのだろうか。私は少し試してみる事にした。


「正義と法と、こうへい、か。ならば……もし、人民にじゅうぜいをかし、さまざまな悪政で苦しめる王と貴族達がいたとして、じゅうぜいや悪政は王国の法的には合法だが王を止め辞めさせることが法がない」


 といい、「何が言いたいのだ!」とうるさいグルード氏を無視して続けた。


「そこに、王をたおせ!富をじんみんに、配分せよ!という立ち上がった者がいたとする。王をたおすのは非合法で、富をぼっしゅうするのも非合法だ。だが、人民は、飢えている。きみはどっちの味方をするのだね?」


 そういうと、グルード氏は難しい顔をしてうなりながら、5分ほど後、絞り出すようにいった。


「非常に…非常に、苦しい決断だが、法と伝統を守るのが正義である!心苦しく思うが堕落したその時の王と貴族達の、次世代も堕落しているとは限るまい?悪法もまた法なりだ!しかし!富は元々は人民のものであったなら、それを返却させる、そうすれば飢えまい。原状回復が衡平である!」


  グルード氏は拳を握りしめ、涙を流しながら歯を食いしばりながらいった。ずいぶんとオーバーリアクションだなあと、私は少し呆れ果てて答えた。


「くるしいのは人民であり、きみではないよ。その次世代とやらがだらくしていたなら、また次のに期待しろ、と…。きみは一時的に富を神の権力をつかって返却はさせるが、王と貴族たちは『伝統』だからだと残そうとする。根本的なかいけつになっていない。場当たり的としかいえないし、餓死者の、数十年数百年おびただしい人数のぼうだいな死体を積み重ねていくのが『伝統』なのかね。第一、『法』についていえば、じゅうぜいは法に反していないのだから、返却させるのは『法』を王に破らせる事だ、と、わたしは思うがね」


 グルード氏は顔を真っ赤にしてものすごく憤怒というべき表情で、血圧が上がって倒れるのではないかという激しさで怒鳴った。


「ならば貴様はどうしろというのだ!それと神に血圧などない!神の揚げ足取りをとり、富を返却させず飢えろというのでなければ、どうせ伝統を守りもせず敬意も頂かず、法を破り王に叛乱を起こし王や貴族を弑逆し、努力して得た財産で豊かなる者たちを略奪して人民に配ればいいと思い上がっているのだろう!法を破れば何でも出来ると思い込んだ馬鹿者が!」


 神に血圧はないのか。つまり血が通ってないとすれば、どのような感じに存在しているのか…「おい!無関係な事を考えてないで答えろ!」、うるさいので答えることにした。


「『法』を守りたいなら順番がぎゃくなのだ。悪法もまた法なりといったが、人民の側には文で書かれたほうの法ではなく、産まれながらに持つ『法』として、ていこうけんがあるのを認めないのかね。例えばきみは、船がしずみ、木の板にしがみついた男がいて、もう他の男もそれにしがみつこうとしたが、このまま2人でしがみつくと両方死んでしまう、とその手をはらって、相手を殺してしまった男を有罪にするのかね?」


 グルード氏という「正義、法、衡平の神」とやらは、今度は「うむむむぅ!!」と、こうわざわざ何事にも派手なリアクションをしなければ気がすまない性格なのか、どちらにしても暑苦しい。


「そういうことだ。人民には、悪政とじゅうぜいで、飢えて死にそうでも、王を変える法がないのなら、圧政に対するきんきゅうひなん、として、ていこうけんが認められるべきだ。きんきゅうひなんが、法のだいげんそくとして、合法なのは、『法』の神と主張するところのきみなら、わかるだろう」


「そしてそれは、王をたおしたなら、次は人民が自ら政治をおこなえるシステムを作ることが条件だ。でなければていこうけんを行使する正統性がない。それが100年200年続けばそれこそ『こうへい』な『伝統』ではないかね?そうでなく新たな暴君に入れ替わった者がなるなら、その時は、きみが人民をだましたと、罰を与えればいい」


  と私はいい、まだうなっているが、うなっている音程が少し上がってっている気がしながら続けた。


「富を分配するのに法がひつようなら、そうした後から時間をさかのぼらない『法』でもやれることがあるから作ればいい。法にしたがい、ぼっしゅうするのは違法としても、元の貴族達がそれから毎年1年に得る収入と、1年ごとにいままで収奪してきてためこんでた富の額にひれいする財産税でもいいし、そうぞく税でもいいし、高級品にだけかかる税でもいい。法が過去にさかのぼるのをできなくても、合法的に、富の格差を減らすのにとれる手は色々ある」


  と、私は言い、言葉を続けた。


「すくなくとも次世代の王とやらをまつよりはマシになるだろうし、これらは、広義の意味の『法』とその後できた体制がつくる法で、『法』をいっさい破ることなく、『法』と『正義』と『こうへい』を守ると思うが、これらは、きみのいう理念に反してると、『正義』と『法』と『こうへい』の神として思うかね?」


 グルード氏はまだうなっていたが、「うむむむむむぅ!?」と音程がかなり高くなってきて、個人的には面白く思ってしまったが、「はあぁぁぁぁっ!」と大きく息を吐き出すと、疲れたようにいった。


「………汝のいうのに一理あり!それもまた答えの一つである!まあいい、加護はやむを得ぬ、リィズ様の命であるがゆえに、与えてやるが貴様が道を間違えれば即取り消す!」


  そう歯ぎしりが聞こえそうな感じの表情で怒鳴るように宣言する。そうすりと、リィズが手をパン!と叩いて言った。



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