第36話 そして天界へ
どうやらこの世界の天界とか天国とかは、雲の上ではないらしい。ただ、白い空間に、円卓があり、そこに様々な風貌や年齢や格好をしている男女がいて、こちらを見て驚いているようだった。
「り、リィズ様、その人間は…!?」
と、何百年髭を切っていないのだろうと思ってしまう、髭が本体で頭はおまけではないかと思う風貌をした老人がリィズに尋ねた。
「髭は気にするでない! 儂は、主神たる、我らの女神フェンリィズ様の補佐を務める、12神柱の議長のホーネットじゃ!」
と髭に怒られたが、なんとなく以前読んだ、ウェンディス聖典とか、神が載ってるカタログに書いていて、そのカタログからどれにするかを考えていた時、ホーネットとやらの名前があったのを思い出した。
「な、なんと無礼な……聖典をよりによって、か、神のカタログだとぉ!? なんという、私たち神々に信仰心どころか敬意すらない、無礼の塊のようなこの者に、リィズ様は我々に加護を与えよとおっしゃるのですか!」
と、今度は髪が青い……というより、着てるのも何もかも、肌以外青い青年が抗議する。よく分からないがコレも神らしい、誰だかしらないが。そうだ、あの本は一応「ウェンディス聖典」という名がついていた。
といっても、子供用の数十ページの絵本にそれぞれの姿の絵が大きく、そして説明というかなんというかが少し乗ってただけだから、カタログに見えてしまったのは仕方ない気もするのだが。
「俺は。風と空、天、月を司る、ルティアスだ! お前の家庭教師をしている男が信徒でいるだろう?!」と怒鳴ってくる。
「たしかにいるが……空が青いのは、きみのせいなのだろうか?」
と尋ねると、ルティアスは「バカな!」といい、続けた。
「そんなものは光の散乱だろう? 私が大気も司っているから、確かに私のおかげではある!」
とやたら誇らしそうに言うルティアス。
「まあ、それはおいておいて、ひい、ふう、みい……なるほど、12人いるし、これが神と主張するところの者たちなのだなあ」
かなり、というか、12人から非常に強い「圧」を感じる。どうやら何故か怒っているらしい。単に「神というふうにいわれている存在は12人いるのですね」と言っただけなのに、これは誤解を解かねばならないだろう、と私は言葉を続けた。
「これはしつれいした、たんに事実をのべただけなのだが。『信仰心』とか『敬意』とかいわれても、わたしは、本にかいてあったのしか知らない。きみたちがはたして『神』と呼ばれるにふさわしい、『人格』と『善性』をもつかどうか、わたしがどう思うかは、きみたちしだいではないだろうか?」
なんというか……怒りの「圧」ともに、なんと表現すればいいのか、「ぐぬぬ」という感じのモヤモヤした感じの悔しがってる感じのが感じ取れた。何故だろう
「あ、あら、結構やんちゃさんね……? ふふふっ、わたくしは貴方の母のシェラの信仰している、生命と誕生、死、を司ります、女神ユースティアと申しますわ。ファースにはわたくしの神殿もあって、貴女とは縁が深いわね」
と、白色の長い髪を後ろで束ねた、なるほど、見た目は一番女神らしい、民族衣装のような変わった服装の神聖な感じのする女性が私に微笑みかけながら言った。
「『見た目は一番女神らしい』って、わたくし、本当に女神なのですけど……」
頬を少し膨らませて怒りながらも上品さを感じる。まあ、母が世話になっているなら認めるしか有るまい。ルートシアニ=レニーナ合意で「善いかみさま」と言ってしまっているし。あと父の怪我を治したのも彼女をおかげなのだろう。
「なるほど、いつもママがおせわになっている。めがみのかごでパパはたすかった。礼をいう、ユースティア女史」
「女史って……確かにわたくしは、女神で女性ですけど、何だか納得がいきませんわ…。まぁ、シェラの子ですもの、加護は与えますけど……」
私は女神と認め最大限の感謝を表明したのだが、とても複雑そうな表情で「納得がいきません!」という感じの表情だったが、引き下がったようだった。
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