第34話 母の過去とリンドル村へのかえりみち
やっと解放された……私は帝政時代の官憲を思い出してしまった。
「レニーナちゃんの新しいお服も揃ってよかったわ♪」
私の「可愛い少女学」の心の師である母は、ものすごく上機嫌で私を衣服店から連れ出し、後ろからは店員A、B、Cが、ざざっ、と整列して、敬礼して見送る。
「ありがとうございました!! ごちそうさまでした!! またのお越しを、おかあさま!! 当然レニーナちゃんも!!!!」
と、もう、こう、「またおかわり楽しみにしてるからね♪」というような事を黄色い声をあげながら言い、手を振ってくれる。
だが、もしも、自分で行動の選択ができるなら……。
「ごちそうさまって、わたしの、たべたのかえして!? ぜーーーーったい、もう二度とこんなごうもんをうけに、しゅっとうしないからーーーー!!!!」と叫びたい気持ちを抑えて母と歩く。
さっき見えた新聞社……まあ、新聞といっても、南エニエス新聞は私の家もとっているが、届くのは週に1回の新聞で、毎日発刊されるような新聞は今のところ目にしていない。
だがマスメディアが存在するのはかなりの朗報である。世界情勢も知れるし、また仮にこの国の王や貴族が暴政を敷いたり、王でなくても王の黙認で貴族や資本家が人々から搾取をするなら……。
リィズに言ったように「神から権力を授かったと主張する王とやらの『輩』」は粉砕するし、我らの神聖なる主神たる女神フェンリィズ様からもあの時フリーハンドで権利を賜っている。「好きにしたら?」、と。
しかし、このウェスタ市はそれなりの規模で、人口は7万人を数えると、父が馬車で退屈がてら教えてくれた。リンドル村の規模は300人程度らしい。
さすがに前世で知ってる近代的な大都市を知ってると、街の建物などや規模は小さいが、リンドル村に住んでいて、前世より背の小さくなった私には十分都会だった。
「そろそろロイと合流しましょうか、いらっしゃい、レニーナちゃん♪」
そう手を引かれたが……ああ、新聞社がそこにあるなら、タイプライターがあるかないか、印刷機がどうなっているか、見たかった、とがくっと残念に思った。
そして母の手に引かれて噴水のある中心部に戻ると荷馬車がついていて、父とトータさんが談笑していて、気がついたのかこっちに笑顔で手を振っていた。
4人で馬車に乗り、揺れが激しく眠れなかったが、母は父との出会いなどを教えてくれた。何でも、母は何ともともとは貴族の令嬢だったらしく、女神ユースティアの加護も強くて、嘱望されていたらしい。
だが結局は政略結婚の道具として結婚させようと公爵家が進めているのに気付き、親に反発して冒険者になると家を飛び出したそうだ。
母は冒険者登録をしてパーティーに入ったはいいけれど、それが実はすごく悪質なパーティーで、新人を誘っては金目の物を奪い、女性なら性的暴行をした挙げ句奴隷として売り飛ばしたり、などの常習犯だったそうだ。
母はそう男達にダンジョン内で襲われそうになったが、通りかかった父がそいつらをやっつけて母を救って2人でパーティーを創った、と聴いた。
「だからパパは私の王子さまなのよ♪」
と惚気るが、そういう出会いはすごいと思うし、それはこれだけ熱い新婚になるはずだ、と納得して村に馬車が着き、トータさんにお礼をいって帰宅した。




