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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第一章】リンドル村の幸せな生活
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第30話 はじめての魔物とのそうぐう

 すると、がたんごとんと進む馬車の前方に動物らしきものが3体、脇の森から飛び出てきた。緑色の毛で目が赤く染まっている、オオカミ……に、しては普通のオオカミの3倍はある体躯で、随分生々しい凶悪さを感じさせられる存在。


 急停止的に馬車がスピードが落ち、ガタン!と止まり、トータさんが、「護民官!!大変だ、道に『エニシア魔犬』が3匹もいやがる!」と叫んできた。父は、「おうよ!任せろ!みんなそのまま動くなよ?!」と、荷馬車を飛び出していく。


 そしてすごいスピードで一体の横を剣を振るってすり抜けると、エニシア魔犬と呼ばれた動物(?)の一匹は首をぼとりと落し横倒れした。


 残り2体が飛びかかる。危ない、と思っていると、父は剣を構えながら、先に飛び出してきたエニシア魔犬の胴を剣で切り裂く。さらに飛びかかってきたもう片方の魔犬の牙を交わし、距離を取り対峙する。


 そして飛び出し牙を向けてきたエニシア魔犬の攻撃を、身体をそらしてかわし振り向きざまに首を切り落とす。


 あっという間の出来事であった。まさか生身の、しかも動物……にしては、かなり異常に見えた存在が、瞬く間に父に倒された。父が偉大に最近見える事が多くて困る。というより実際に偉大なのだろう。その……あの母に弱いのが、無ければ。


「いい運動になった」と父が帰ってきて、母が「おかえりなさい、貴方。かっこよかったわよ♪」と惚気る言葉を言うのと同時に私は、衝動的に御者の席を飛び降り父の足に抱き着いた。


 父が無事でほっとした、本当によかった。そう……私は泣いてしまったのだ。


「なんだ? 父さんの事心配してくれたんだな、レニーナは。優しい子だな、大丈夫だ。怪我もないから、安心してくれ。さあ、母さんのいる御者席に戻ろう、な?」


 と笑顔で私を両手で抱えて母の太ももへと座らせる。トータさんが「護民官!この魔犬の素材、どうします?いつもの感じでいいですか?」と叫ぶ。


 それに対して父は「ああ! それで頼む!」とだけ叫んで、母にキスをし、馬車の中に戻る。


「いつもの感じ」とはなんだろう? と思っていると、トータさんが腰のナイフを抜いて、エニシア魔犬と呼ばれた存在を解体していっている。


 それらの作業がそれなりの時間、15分くらいかかって、「護民官、魔石も取れました。いつも通り素材と魔石、換金したら手数料引いたの渡しますんで」という。


 素材に「魔石」……確かに魔石でできたものは、我が家には色々とある。照明から湯沸かし器、コンロまで。こうやってまさか採っていたとは思わなかった。つまりは生命体の中にあの魔石というのがあるらしい。


「ママ、ませきってなあに? あれはどうぶつさんとは違うの?」と私は母に尋ねてみる。そうすると母は、「そうねえ」といいながら、ちょっと真剣な表情で私の顔を見て言った。


「動物さんは魔石を持っていなくて、普通に生息しているけど……『魔物』はそれとはまた違うの。『魔物』は、『魔素』によって変貌してしまった存在なの。えっと、『魔素』ってその……『天然に色々なところに満ちている力』の事ね」


 と母は言葉を切った。


「それを受けて育った動物さんが、身体の中に溜まってっちゃって、身体の中で魔石になって、その魔力ですごい力を持ったり、身体が元の動物さんと全然違う存在に変わって怖い感じになっちゃって、人を襲う……そういった存在ね。って……レニーナちゃんには、難しかったかなー?」


 かなり納得がいく説明であった。難しくなく、むしろとても腑に落ちた。


 ある種の有害物質である「魔素」が、自然にいる動物の身体の中に生物濃縮した結果、それが脳など体内に結晶化して、脳の分泌ホルモン量や理性を操り、身体の異常が起きて突然変異が起き、動物と異なり巨大化し狂暴化した存在なのだろう。


 てっきり害獣の事を「魔物」と言っているのかと思っていたが、父が戦いに外に呼ばれた時は、このような存在と戦っていたのだ。


 そう考えて感慨深げにしていると、トータさんが「それじゃ行きますか」と馬車を走らせ、またガタンゴトン! と私の脳がシェイクされるような拷問が始まった。



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