第26話 わからないところ
「なるほど……ふむふむ」
「って……レ、レニーナちゃん、どう? 意味分からないの聴いてもいいんだよ?」
そうヨスタナ師は言ってくれるが、今のところは、分からないというと……。
「ラドクリフのとこが、ちょっとむずかしくて、なやんで、わからなくて……」
と、私はさっきから分からなくてずっと長く悩んでいる事があり、そう言うと、ヨスタナ師はパーッと明るく笑顔で言った
「どれどれ、先生が教えてあげるよ。どこがわからないのかなー? ちょっとレニーナちゃんにはやっぱり早すぎるご本だよね!」
そういうので、確かにちょっと早すぎたかもしれないと思いヨスタナ師に尋ねた。
「ラドクリフの事は、ないようはわかったのですが、それに対するてんぼうについて、ずっとなやんでいます」
そうすると、ヨスタナ師はちょっと笑顔が固まったように「て……てんぼう、かい……?」と何だか様子がおかしい。私は続けてさっきから悩んでいる事を言った。
「ここまでひどいなら、まずは、工業国のようですし、ろうどうしゃが団結して、ろうどうくみあいを結成するだけでなく、地下とうそうをするためにドワーフのみなさんは組織化すべきです。食べていける、幸せに生きられるのに必要なお金までさくしゅする、ごうよくな、権力者に、ゼネラルストライキや、さまざまな様々な地下とうそうで、たたかって、王をだとうするべきです」
とずっと悩んでいた事を言い、困っているのを吐き出した。
ヨスタナ師は、最初「……うん、なるほど、それで?」と少し笑顔が固まった状態で聞いてくれた。
「とはいえ、公王と貴族どもは、ぜったいに応じず、ぶそうとうそうになると……ぎせいしゃがでますし、ゼネストをしても、王と貴族どもは、ぶりょくちんあつをするでしょうし。血がまったく流れないのはむずしいかもしれません……」と私はため息をついた。
「ですが、タイミングを待って、十分な準備をし、いよいよ、かくめい、というときに、一気にじっこうして、1~2日いないに、おわらせられれば、ながれる血はできるだけ減らすことはできます」
「ながれる血でいえば、人間への憎悪で、もし人間のぎゃくさつがおこなわれたら、どこの人間の国もラドクリフ・ドワーフの国を非難するでしょう」
「ですから、人間への憎悪でなく、暴政をしていた者りへの怒りのみ、向ける必要があります。これはぜったい大事なことです」
「………………うん。で……?」
「てんぼうとして、人間達を、しほんかと、下級貴族など人間を味方につけてか、それかドワーフのみか、がむずかしくて……。しほんかとか下級貴族が味方なら、かなり有利に進めることができます。それに、ドワーフのみでなく人間も含めてのかくめいなら、人間全体への憎悪をへらせます。その代わり、情報がもれやすくなるのに気をつけなければりません」
「また、ラドクリフの人間のなかのグルード信徒はおそらくはラドクリフのひげきにざいあくかんをもっているでしょうし、ルクス信徒も卑怯なおこないだったとざいあくかんがあるかもしれません。ルクスとグルードの共同のひなんせいめいと、ラドクリフのそれらの信徒への抵抗を呼びかけるよう、ルクスとグルードを動かすも必要です。そうすれば、人間のはんしゅりゅうはを味方につけることもできます」
「……うん。……反主流派……ね……。……それから……?」
「そして、かくめいせんじゅつとしては、王都をいっきょにせいあつする必要がありますが、そのために、とおく離れた、ちほうでのはんらんを数か所おこして、王都をぐんじてきくうはくじょうたいに置いているあいだに、王都でぶそうほうきをして一気に王とちゅうおうのきぞくの身柄、さまざまな、ぎょうせいぶんしょうの押収が、王やきぞくのふせいちくざいや、わいろのしょうこで、ひつようです」
「これは、もし、逆に王都の守備を王がかためるなら、地方のはんらんが成功したばあいは、地方からのかくめい、として、地方から、都市へ、そして大都市へ、とすすめていき、しぜんと王都がこりつして、そのあいだに王都の地下そしきが、こおうしてたちあがる、という、てんぼうもあります」
「また、エルシアとトータスにねまわしをして、抵抗を支援してもらいつつ、国境に軍隊をしゅうけつさせるなど、公王軍をなるべく多くひきつけ、そして支援をうけ、王都でのぶそうほうきを成功させるという手もあります」
「…………うん……うん…………?」
「また、長引きそうなばあいによっては、世界各国からのけいざいせいさいもかなりゆうこうせいを持ちますが、なかなかてんぼうがむずかしいです」
と、悩みを吐き出して私はわからないところをどうすべきかと肩をすくめた。
「…………展望。展望、展望かあ、本当難しい言葉、すらすら分かるの、どこで学んでるのやら……僕ぁ、何もなぁぁぁぁぁぁんにも教えてないし……」
と、がくっと気分が落ちて行ってしまったかと思うと、ガバッと急に顔を上げて、ヨスタナ師は弱弱しく尋ねた。
「えっと……まず悪いけど、『ロード、クミ……アイ』ってなんだい……? って……あ、あはは、参ったね、僕の側が質問する立場になっちゃったよ! でもそれなんだろ?」と首をかしげている。
「他にも、『ゼイナ、ルスイトラキ』っていうのは、僕ぁ初めて聴いた言葉だよ……この本には書いてないし何の本で読んだのかな……?」
とヨスタナ師の声色が段々とブルーな感じになり、これはヤバイ、つい考え事をしてペラペラと喋ってしまって、またやらかしてしまった、とモードを変える。
「せんせぇ、つかれたー!」
と子供らしくソファーに横になりおねむする事にしようとした。
ただその後またドーンと落ち込んで、ヨスタナ師は机に突っ伏してしまった。
「え、つまりラドクリフの展望だって?! って、まーーーーっったく、僕ぁ、ぜぇぇぇぇんぜん、まっっっっったく、教えたりとか解説とかしてないのに、どこからそんなのが出てくるんだぁ……!?」
本人は小声のつもりなのだろうが、十分に聞こえる声でぼやき続ける。
「子供の冗談なら分かるけど、この子の場合はガチそうだから困る……。それ、上巻だけとはいえ大学部で使われてる世界史の歴史書なんだぞぉ……? それに、公王や貴族を倒せって……ヤバいことを結構言ってるような…!? ぼ、僕ぁ、いったい何者な子に、いったい何を相手に教えてるんだ……?!」
とまたもやヤバげな精神状態になる。
ここは戦術的にも戦略的にも役に立つと分かった兵器を用いるしかないと、再び子供のあどけなさという兵器を使おうかと思う。
加えて母……いやあえて、「可愛い少女学」の我が心の中の師である、「シェラ師」から習った「クラスの子、気になるなら、あざといくらいに可愛くするのよー♪」という「可愛さ講座」を受け修行をした成果を見せる時だ。
その技術を学んだ私に死角も失敗も無い。残念ながら人体に用いるのは初めてだが実験してみよう。
「ヨスタナせんせぇ、わたしね、ヨスタナせんせぇがそぉいう顔しちゃうの、心配……(ちらっと見上げて)せんせぇ、レニーナ、なにかしちゃったぁ……?」と涙目で少しはをぐずぐずと音立てて、これでトドメ。
「ヨスタナせんせぇといっぱいお話がしたかったの……でも迷惑だよね、ごめんね?」
よし、「被験者」は奇襲に驚きまだ対応が追い付いていない。すかさず「涙目!」を発し、斜め60度くらいの角度で、「上目遣い!」これで「被験者」は……。
「ああああ!! ごめん、ごめんね? 僕ぁ、なんてことを……! レニーナちゃん、レニーナちゃんが悪いわけじゃないからね! あぁ、当然さ! いっぱいお話しようじゃないか! 心配いらないよ!」
奈落への果てしない転落から嘘のように花火のように空へ打ちあがった感じに気分高揚の効果が確認された。気分の上下が激しく心配になるが、まあそうやっちゃったのは私なので、あとでママの作ったクッキーでも「被験者」の精神の修復費代わりにプレゼントしよう、と決めた。
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