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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第一章】リンドル村の幸せな生活
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第25話 異種族の3つのくに

 その西側には3つの国が隣接しており、「ラドクリフ王国」と「エルシア大樹林連合」、「トータス獣王国」がある。


 何でもエルシア大樹林連合は、他種族によって構成される合議制国家らしいのだが、ハイエルフ……ハイエルフ、そう、私の世界でおとぎ話に出てきた、あのエルフという存在がいるらしく、そのハイエルフを長としてエルフや、動く樹木(?)というべきなのか、ドリアード、フェアリー……つまり、妖精なわけだが、そう言った存在の多種族国家らしい。


 エルシア大樹林連合では長老会議で全てが決まるらしい。それは、司法にしろ立法にしろ行政にしろである。閉鎖的な国柄とミリタスの侵略的な開拓もあってか、全貌がよくわかっていないとかなり抽象的な表現になっている。


 また、エルフや妖精の誘拐と奴隷に売り飛ばされるような事が多発しているため、もともと人間には極めて警戒心と敵愾心が強い。


「土、植物、自然、農業を司りし、女神サティナフィア」を強く信仰していて、サティナフィア聖大神殿もあるが、人間が各国で地方神殿で信徒になることはできても、その後にサティナフィア聖大神殿に参拝するのは、まず入国の許可が下りるのが厳しい。


「12神柱の全員の信仰」を目指す者にとっては難関の一つとされている。


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 そして、現在ある「ラドクリフ公国」は、私たちの身の回りの製品についてラドクリフ製は多く、ラドクリフ製はブランドらしいのだが、国自体は良い噂を聞かないらしい。


 この国はドワーフ、そう、あの物語に出てくるドワーフである……そのドワーフが主体の国らしいが、支配層は人口の2割の人間らしい。


 元々はドワーフの国であった「ラドクリフ・ドワーフ王国」の製品は品質が非常に精巧で故障もしにくく、「ラドクリフ製」というと、大きなブランド力と信頼を得ていて、経済力は非常に高く、当然国民の生活レベルも知的レベルもとても高かった。


 しかし、先述の神聖ミリタス帝国国内の権力闘争での内乱に負けた王族やら貴族や兵士やら領民やらのごちゃまぜになった落ち武者的な軍勢が、「ラドクリフ・ドワーフ王国」に宣戦布告すらなく突然侵略した。これが「ラドクリフの悲劇」である。


 いきなりの、想定していなかった勢力と想定していなかった方向からの奇襲に加え、その当時ドワーフ特有の「黒肺病」が蔓延していて国内が混乱に陥っていた中だったため、あえなく「ラドクリフ・ドワーフ王国」は3週間で制圧された。


 その権力闘争に敗れた、ミリタス皇族の血をひくとやらのドリッテン公爵とやらと、その取り巻きの貴族達とその血族、その領民であって兵士として徴兵された平民達、平民の有力者達、領民だった平民で難民化していて逃げてきた人々などの、敗走してきた存在、推定で80万人の勢力が流入した。


 そして自らを、「ラドクリフ大公」と「ラドクリフ貴族」や「ラドクリフ臣民」と名乗り、公王を頂点とした貴族制の成立を宣言、その支配層に収まり、元のラドクリフ・ドワーフは「二級臣民」という訳だ。


 その当時からかなり人間の公王と貴族による苛烈な圧制が敷かれているらしい。現在においても、父の読む週1回届く新聞での報道を聞いた事があるが、かなりの暴君が好き放題して君臨しているらしい。


「ラドクリフ・ドワーフ王国」では、「鉱物、金、商い、工業、契約を司りし、女神イーステシア」が深く信仰され、大神殿を有していて、加護を受けていたが、女神シーステシアは「ラドクリフの悲劇」以後、「ラドクリフ公国」には聖大神殿に降臨しないと宣言しは加護を失った。


 元々は人間達は、アルタシアからの植民で成り立ち、その後「戦いの女神ルクス」から加護を受けていたミリタスから派生した、ミリタス貴族の侵略で出来た国なので、ルクス信仰やグルード信仰が元々強く、またドワーフ達はイーステシア信仰だったため、宗教的には複雑な状態のようだ。


 さらに宗教的には、そういった中で、ドワーフの中では、イーステシア信仰を捨て、12神柱のそれぞれの信徒からは「悪神」とも「はぐれ神」とも呼ばれる、もともとは15神柱の一員だった、「復讐、奪取、仇討ち、憎悪、未亡人、孤児を司る、女神エリザ」への信仰が爆発的に広がっているという。


 元々は農業については土地は貧しく、主要な産業は様々な工業製品で加工貿易での産業立国だったので、侵略前も食料自給率は高くなく輸入に頼っていた。だが、公王とやらは、工房や設備、鉱山など全て公国のものとして没収し、貴族や人間の商人に払い下げたり公王家の直轄としたりした。


 それらでの事実上の強制労働、加えてものすごく酷い内容の労働条件で酷使し、得られるのは生活してくにも厳しい賃金。


 工業製品を輸出して得られる収益は原料輸入の費用と、その安い賃金以外は、暴君と貴族と大商人によって全部搾取され、一般市民の間では、家族のためにと奴隷商人に自分の身を売ったり、かなり深刻な状況だという。


 そのような状態のため、エルシア大樹林連合とトータス獣王国とは極めて強く敵対しており、国境線での小競り合いが頻発している関係にある。ミリタス連邦もアルタシア神聖帝国も、「ラドクリフの悲劇」を非難している。


 というか、世界的に「ラドクリフの悲劇」を肯定している国は無いが、現在では貿易関係で世界にラドクリフ製品が広く輸出され、どこの国も高品質なラドクリフ製品には依存しているため、なかなか強く出られないらしい。


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 そして「トータス獣王国」は…獣王、まあ、「獣人」という、動物と人間を合わせたような外見をした存在がいるらしく、その獣人の王が治める国らしい。獣王は絶対的ではあるそうなのだが、そうは言っても、1人で全部こなすのは物理的に不可能だろう。実際はどのような制度になっているかは、鎖国状態に近いのであまり分かっていない。


 ただ、ここファース王国でも、実の所このリンドル村に行商に訪れるキャラバンの中で、数人の、見た目が猫の耳らしい女性と男性、あと熊のような見た目の男性がいて、大いに驚いた。


 人間以外の種族がいるのは、「英雄ゴーダの冒険記」に出ていたのだが、実際見るのは初めてだったからだ。当時私は4歳半ば、謎を解明すべく、その獣人のリードさんに「おみみ、さわらせて!」と頼み、なでなでさせてもらった。


 少し話は逸れたが、少なくない地域で人間至上主義というのか、異種族排斥の空気があるらしく、特に本来はエルフにしろドワーフにしろ、人間の奴隷の最も高い価格の最低10倍以上の価格がするらしい。その中でも特に獣人は身体能力が高いため、労働力や戦士として重宝され、不当な手段で奴隷にされる事もあるらしい。


 そのような風潮がある中で、逆に獣王国は、植民後に拡大の一途を辿ってきたミリタスとの戦いを通じて、ミリタスとラドクリフの人間達への怒りを持ち、特に建国以来ずっと祭り、そして加護を受けていた「戦いの女神ルクス」の大神殿がミリタスに占領されて加護を失った経緯がある。


 その後再び女神ルクスがトータスの大神殿に戻り加護を与えて奪還したとはいえ、ミリタスとラドクリフへの激しく敵愾心を持っている。もっといえば獣人至上主義があり、他国のというより、人間自体を嫌悪していて、人間には入国がとても難しい。


 なんでも、入国審査が……戦って勝つ事、らしい。身の保証もないらしいが、入国審査官にすごく強い獣人を配置しているなら、それに勝っちゃった相手を入国させるのは危ない気がする。


 逆に負けた相手を入国させた方が保安的には正しい国境管理な気がするが、どうなのだろう。まあ、そんな制度なら、誰だってわざと負けるから審査にならないのだろうが。


 なので、「戦いの女神ルクス」の大神殿があるグチリア市を訪れるのは、そのようにとても難しい。これもまた「12神柱全員の信仰」を目指す難関の1つである。


 そして、獣王というのは、世襲制ではなく、現獣王に勝てた場合は、新獣王に継がせる事ができる、という少し私にはよくわからない制度で……戦いの女神だからといって、そこまでやるのかと思ってしまう制度だそうだ。

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